1.たたかう人々。
(´・ω・`)一応、”かすみさん。”の続編です。(”コリーナさん”から一年後位の話。)
(´・ω・`)本日、海軍記念日の為、臨時投稿。
先の大戦が終わり、日本国と大日本帝国は徐々に交流を深める事となった。
友好国として軍事的な交流が始まると、大日本帝国は日本国にありとあらゆる技術移転を望んだ。
特に航空機技術、戦闘機の購入を打診するが。
協議の結果、物別れになる。
理由は大日本帝国陸軍航空隊、及び海軍航空隊の航空機戦略の違いだ。
邀撃機と長距離爆撃機を求める陸軍に、襲撃機、特に戦闘爆撃機を求める海軍との調整が付かなかったのだ。
日本国側が、多種多様な機種を設計するのを嫌がったのも理由の一つだ。
長い会合が続き、結果交渉が決裂した。
この技術移転交渉には日本側も新たな資源の確保の期待が掛かって居ただけに、各省庁及び財界の落胆が伺えた。
日本国側が理解したのは。”大日本帝国の航空機運用にはマルチロール機と言う考え方が無い…。”
大日本帝国の多種多様な機体の分類訳には陸軍の大きな物でも、要撃機、夜間迎撃機、偵察機、爆撃機、襲撃機、輸送機、連絡機。
さらに海軍はもっと細かく、艦載戦闘機と陸上戦闘機、陸上爆撃機と艦載爆撃機に雷撃機さらに艦載誘導機(艦隊雷爆攻撃に当たって友軍機を誘導する役目)まで存在したのだ。
先の中部太平洋海戦(大日本帝国の呼び名)の結果、海軍内では空母不要論とP-1対潜哨戒機(海軍内では大型雷撃機とか空中巡洋艦と呼んでいる)の導入を叫ぶ者まで現れ混乱が広がった。
交渉に参加した国防空軍幹部の話では。
”全天気候型航空機が無いのには驚いた。コレでは話が進まない”
”先に戦果を見せてしまったのが不味かった。相手はどれだけ金を払っても国防軍の現用機を欲しがっている。運用できる目算は無いのに…。”
又、交渉に参加したある国防軍武官のオフレコだ。
『交渉再開するのは双方、全員が納得していた。再開する為の話し合いは直ぐに始まった。ただ、イーグルドライバー上りの基地指令まで経験した○○さんが会議冒頭で、いきなり
”大日本帝国の航空技術は我々の1950年代程度、先ずは運用者の教育から始めないと行けない。”
なんて言っちゃたから。もう、空気悪くて…。みんな解ってるから。向こうの搭乗員上りの将官達が歯を食いしばって顔真っ赤にして怒ってんの。コレじゃあ何も決まらないよ。』
交渉再開後も日本国側の発言は禍根を遺した。
特に陸海両陣営の搭乗員上り達の反感を買った。
売り言葉や買い言葉で”実際やってみないと解らない。”という結論に至り。
日本空軍から、航空教育集団、第1航団が派遣された。
大日本帝国の陸軍浜松飛行連隊基地へ。
名目は”戦競・2031”だ。
長く狭い機体の中で移動が終わりが近いと窓の外の風景で解る。
広いカーゴルームの中、床にはパレットに固定された補給部品で一杯だ、その為に窮屈に思える。
青く堅いシートから逃げ出し丸い窓に幾つかの頭が集まる。
海を見るのは見飽きたが陸が見えるのなら興味は沸く。
皆、色違いのAIRMANの帽子を被っている。
騒音の中、ヘッドセットをした整備兵達だ。
窓の外は皆が知って居るハズだが見たことも無い風景に目を奪われている。
「うわ、何も無いな。」
「本当ですね…一面の畑と雑木林…民家も無い。バイパス道路も無いな。」
「あー70年前はこんな感じだったんだろうな。基地の境が解らない…。民家が無いのか…。」
「なんで、ウチの航空団が派遣されたんですかね?」
「さあなあ。有る程度T-4が揃っていて戦教出のパイが多いからな…。」
若い隊員のボヤキに年配の整備員が答える、帽子はRAJIOだ。
「他はレッドホークに更新済みですからね。」
T-7Aはボーイング社の開発した高等練習機でT-4の後継機種だ。残念ながら高等練習機は国内開発では無く輸入に成ったのだ。
珍しく、ノックダウンで無く完成品の輸入だ。
噂ではF-3開発の段階で米国との貿易黒字解消による政治的な解決により決まったと言う噂だ。
「素直にT-7Aを持ってきた方が良かったんじゃないですか?」
「うーん、どうもこの日本の戦闘機は音速を超えていないそうだ。F-86並みの性能だと考えられてる。86Dじゃ無くて。86Fの方。」
「だからT-4なんですか?」
叫ぶ若い整備員、エンジンの騒音で声が通らないのだ。
「いきなりF-15じゃ相手が可哀想だ。尤も相手はF-3持って来いと言ったそうだが…。」
「ミサイル無しだと逆に辛いですね。音速越えで鳩を撃つような物です。」
確かに、F-3ならば零式艦上戦闘機が出てきても旋回で負けないだろう。
「一応、コレは売り込みだからな。向こうのパイにも乗ってもらう事に成っている。こっちのT-4のパイは全部教官だからな。」
「T-7A売った方が良いと思いますよ?性能的に、一応は音速越えだし。対空、対地もこなせる。」
「そりゃそうだが、ほら…。T-7Aは輸入だったからな…。ソレにアビオニクスがデジタルのGUIだ。F-35準拠だし。アナログ機械メーターの方がな…。」
「イチから設計しなおす位なら、T-4の閉じたラインを開いた方が楽なのか?未だ金型や治具が在るのかねぇ。」
「川崎さんはやる気みたいですよ?T-33をもう一回、作るより楽だし、まさかミツビシがF-86Fをもう一回作るとも思えないし。」
「ミツビシは旅客機売り込みに頑張っているからな。尤も相手が欲しいのは爆撃機だそうだ。」
「何処を爆撃する気なんですかね?」
「さあねぇ、今回は迎撃戦闘機が欲しい見たいだし。長距離爆撃機でもこっちのドイツやアメリカに負けてるんじゃない?」
前方、壁のLED表示板に文字が流れる、シートベルト着用の合図だ、耳を澄ませば騒音の中で電子音のアナウンスが鳴っている。
「よし!着陸だぞ。」
「「「了」」」
青いシートに座りシートベルトを締め確認する。
エンジン音が変わり始め、背中に振動が伝わる、身体に横から下からGが掛かる。
重力を感じない不思議な時間だ。
浜松空港上空を旋廻する編隊飛行、着陸を試みるのは2機のC-2輸送機と5機のT-4練習機。
錬度を示す見事な密集編隊だ。
次々と滑走路に吸い込まれる。
女性の誘導員に従い駐機場へと向かう。
シートベルト着用の合図が消えると又、窓に集まる。
「うっ、すげえ。連山かな?」
並ぶ4発プロペラ機に目を奪われる。
銀色に深緑のまだら塗装、日の丸が新鮮だ。
「いや、ココは陸軍の飛行場だからキ91かも…。」
「プラモと違うな…。」
デジカメに収める隊員、動画も取っている様子だ。
「おい、こっちは五月蝿いから気をつけろよ。」
「はい、もちろん。機体からスマホやデジカメは降ろしませんよ。」
どうせ、電波は圏外だ。
機体が止まりエンジン音が低くなる。
「よし、仕事だぞ?」
「「了」」
大きなハッチが開く、我先に降りて駐機場の機体に車輪に黄色い車止めを付ける。
駐機場に並ぶ青い灰色の日本空軍、対する向こうは深緑の陸軍航空隊だ。
向こうの若草色の兵隊達が集まってきている。
皆、女性だ、化粧はしていない様子だが、皆、細身の小柄で制服が大きな印象を受ける。
「すいません!アースポイント何処ですか!?」
青色のデジタルカモフラ作業服で機体に接続された、アース線を持ち地面を探す整備員。
地面は転圧されただけの土だ。
何故か怖がって呼びかけに応じない女性達。
「アースポイント無いぞ?」
ヘッドセットの無線でやり取りを行う青い迷彩服の整備兵。
「え?ソレより機体は雨ざらし?露天なの?」
「えー、一寸待って、聞いてみる。」
パイロットと無線で交信する国防兵。
「はい、解りました。入る格納庫が無いって、ココに駐機。」
「固定柵どうするのよ?」
「いや…。どうしよう。聞いてみる。」
「アースを…。設置杭打つ許可貰わないと…。」
「え?ソコから?アーステスター用意してる?持ってきた。あ。あるの?」
少々混乱するが管制塔からの交信で相手側との話が付く。
「むこうの工兵隊の少尉さんが来るから相談しろって。」
叫びあう整備員。
「はい…。了解しました。」
滑走路の向こうでボンネットトラックが向かってくるのが解る。
未だ遠い。
「先ず荷物降ろす?」
「いや、受け入れが…。決まってないから。」
「でも荷物降ろさないと、テスター出てこないよ?」
エンジンを停止させたT-4のキャノピーが開き始める。
梯子を用意する整備兵に機体点検を始める者もいる。
トラックは到着していないが、黒塗りのクラシックカーが来た。
エンブレムは”スミダ”だ。
観音開きのドアが開き、年配のふくよかな女性が降りてくる、階級は大佐だ。
整備兵は動いているが、パイロットが整列して輸送機1番機から今回の訪問団の団長が降りてくる。
敬礼して握手をする二つの軍。
二、三の言葉を交わしている様子だ。
C-2輸送機からトーイングトラクターが下ろされ梱包が解かれる。
最近、日本国防陸軍でも採用され始めた川崎の市販品の四輪バギーも…。
ナンバーも武装も付いてないが今回の我々の足になる予定だ。
「飛行プランは…。」
「今日は飛ばないって。」
「明日の計画を…。」
各機体が点検の後に赤いリボンと蓋が閉められる。
トーイングトラクターが走り、発電機やコンプレッサーを積んだ牽引車が動き回る。
「今日中に整備終わらせるから。終わったら防水シートして。」
「雨が降ったら泥だらけですよ?コレ。」
「うーん。」
「帰ったら大掃除ですね。」
「おれ、もうC-2の尾翼の上には乗らないからな。」
工兵隊の女性達を積載したボンネットトラックが到着して更に忙しくなる。
ドタバタが日没まで続き、夜に成った。
一応、今晩の夕食は明日の対戦相手との親睦会と言う事になっている。
日本なら駅前の居酒屋に繰り出す所だが、この日本の駅前は何もない。
唯、知っている駅名では無かった。
遠洲鉄道、”ひこうれんたひまえ”駅だそうだ。
驚いた事に、今、我々の航空機が駐機している場所が濱松球場のある場所だ。
ソレより駅に近い航空機格納内に椅子とテーブルが用意されていた。
緑色の日の丸二発ジェット戦闘機の前…。
並ぶのは海の幸だ…。煮魚、焼き魚が多い。
白徳利に蛇の目のぐい飲み。
最近見ない、瓶ビール。
横断幕には”訓戦!戦競2761”だ、
なお。コチラからの差し入れでウィスキーと缶ビールを持って来ている。
他にはペットボトルの水が大量に積んである。
コチラで生水を飲むなとの指令が出ているからだ。
あと…。素足で水溜りに入るなとも。
長机を挟んで向かい合う新旧日本のパイロット。
お互いの指揮官達は穏やかだ。
「では、基地司令のわたくしから乾杯の音頭を取らさせてもらいます。ようこそ、日本空軍の将兵諸君。歓迎いたします。」
士官用の解禁シャツを着た年配の女性が音頭をとる。
それに答える男。
「かたじけない。明日はお互いの持てる全てを持って切磋琢磨できる事を祈ります。」
「はい、かんぱーい。」
「「「乾杯!!」」」
空になり緊張が途切れ雑談が始まる。
「まあ。かたじけない、なんて男の人が言うなんて…。まるで映画の様ですね。」
飲み干した茶碗に徳利を注ぐ陸軍大佐。
「申し訳ございません。つい故郷の言葉が。」
空になった茶碗を差し出し照れる団長。
「日本でも最近、言う人、聞かないな。」
「いや、団長、大垣出身だから…。」
「がんもうめえ。」
「ええーアレ方言なの?」
「いや…大垣とか、美濃の方は武士言葉が残ってるのよ…。軍隊言葉もね。」
「え?俺、長野出身だけど爺さん達使ってたよ?」
「春菊のおひたしうめえ。」
「えー僕、てっきり、中佐は時代劇が好きなのかと思ってました。」
「いや、別に好きではないぞ?」
「だって、中佐、帰る時、何時も”お先に、ご無礼する”って。」
ひょうきんにチョップを降る飛行徽章を付けた若い兵士。
「「「ハハハハハハ」」」
陽気な国防軍に対して、眉毛にシワを立てた黒髪オカッパの飛行兵達。
「中佐殿にお尋ねします!あの戦闘機はどの様な兵装が搭載されているのでしょか?」
いきなり立ち上がった陸軍航空士官、中尉の階級章を付けている。
若い、二十代後半に見える。
一瞬で格納庫内が静かになる。
「あれは、カワサキ、T-4練習機だ。兵装、及び航空特性に付いては三日目の座学で行う予定だ。」
「練習機なのですね!戦闘機では無く!!」
棘のある言葉だ。
「ああ、そうだ、貴官等の双発ジェット…。」
奥の戦闘機を見る、見た目Me262そっくりだ。
「キ206火龍であります。」
「その火龍と同程度の航空機を用意した。」
「いわしの丸干しうめえ。」
「ソレでは大日本帝国にとっての脅威に対抗する事が出来ません。非情なるドイツ帝国の高高度爆撃機を迎撃する事は適いません!」
日本側の航空兵がため息を付く…。
「やはり、アレは邀撃機なのか…。」
「あのインテークの形状、下手するとMe262やMIG-15みたいに急旋回するとエンジンが止まるぞ?」
「搭載燃料が少ないのではないのか?推力増強装置を使うと10分無いとか。」
「はまなっとう、からい。」
「あのエンジンの長さだと推力増強装置自体が付いていないかも知れません、有ったとしても合わせて推力2トン程度…。」
呟きに大日本帝国側の航空兵の顔色が悪くなり、答えを得た。
嘘が付けないタイプらしい。
やはり、人工衛星やF-35の赤外線センサーにより得た、大日本帝国の航空機ジェットエンジンの性能解析に間違いは無い。
センサーのデーターでも熱量と排出量による推力想定は計算で出るのだ。
「もぐもぐもぐ。」
「おい!中島!なんか言う事無いのか!」
「ごはん下さい。」
「ああ、ごめんなさい。流石男の人は良く食べるわ。従兵!」
「はい!ただいま!!」
ふきんの掛かった木のお櫃からごはんを茶碗に盛る女性の兵士。
「ありがとうございます。」
大盛り飯を受け取り、物相飯に呆れた目が集まる。
みるみる茶碗の米が減ってゆく…。
「そいうえばコイツ酒を呑まないんだったな。」
中島は。今回のチームで一番若いパイロットだ。
「ああ、そうだな…。」
「5日後にはT-7Aが合流します。そちらの海軍さんの機体も来る予定と聞いております。」
「はい、本戦が始まるまでは交流戦ですので。洋上の空域ならドレだけ使っても問題有りません。」
「飛行高度は?」
「特には…。決まってませんが?」
墜落しなければ問題無いのか?
今の日本では考えられない話だ。
「そうですか…。明日、天候が良ければ模擬戦の予定です。」
「はい、よろしくお願いします。」
”負けません!”
力強い陸軍航空兵達の呟きだ…。
大丈夫かな。
(´・ω・`)ボーイングTXが、T-7レッドホークと言う名前に決定したけど。
(´・ω;`)もし、日本で採用されたら。もう既に自衛隊でT-7は有るので。別の名前が付くと思います。