ぼくと彼女の影法師
消しゴムを落としただけで楽しそうに笑っている。
彼女はそういう人だった。
生命が輝きを放っていて、彼女がいるだけで、教室はいつも明るくなる。
「田中くん、ちょっと影が薄くない?」
ぼくとは真逆の存在とはいえ、要領の悪いところは似ていたらしい。
ぼくらは補習授業の居残り組となっていた。
「そういう藤崎さんの影は、存在が濃くない?」
窓から夕陽にあてられて、影法師があらわれている。
ぼくの影は薄いだけだが、彼女のそれは濃く、しかも勝手に踊っている。うちの両親が深酒をしたときに踊り、息子たちに手拍子を強要する、ドリ○のひげダンスを踊っている。
「……シャルウィダンス?」
「……あれを!?」
ぼくの影が、彼女の影に肩を叩かれていた。