第二話 麗しきユリーシャ女王による腕試しの試練(その1)
セントラム王国は峻険なヴィラード山の裾野に位置し、西に神秘の森、東に恵みの湖に接する小さいながらも豊かな王国である。
創世の三女神の信仰が非常に強く、歴代の女王や姫君たちは女神神殿の最高司祭や神聖巫女を務めていることから、女神王国とも呼ばれている。
また、精霊大陸フェノールランドでも珍しい魔法職工ギルドが存在している。
女神王国では、この魔法職工ギルドに国内で採掘される霊晶石やミスリルなどの魔法資源を供給し、魔法のアイテムの生産体制を構築しているのだ。
この魔法のアイテムはセントラム王国の特産品となっており、周辺各国との交易によって、女神王国の蔵はとても潤っているのだった。
王都は美しい街並みのセントラムシティである。
小高い丘の上に建つセントラム王城を取り囲む城下町となっている。
パドル魔法学院の魔法学院生の少年リオンは、ルヴィニア学院長の依頼により、久しぶりにセントラム王国の地を踏みしめることになった。
頑丈そうな石造りの城壁がセントラムシティ全体をぐるりと取り囲んでいる。
リオンはセントラム王城の城門の前で門番のチェックを受けて街に入った。
火竜の吐息のように熱い夏の日差しの下で、人々の生活の息遣いがモワモワッと溢れ返っている。
実は、セントラムシティは精霊大陸の西の端と東の端を結ぶ中央交易路の途上に位置しているため、交易の街として大いに繁栄しているのだ。
「わあ、たくさん人がいるなあ……とにかく、早く女王陛下のところに行かなきゃ」
普段ヴィラード山の静かな自然に混じって暮らしているリオンにとっては、まるでお祭り騒ぎのような人混みに感じてしまう。
リオンは街の光景を物珍しげに見渡すと、テクテクと小さな足取りで、小高い丘に立つセントラム王城に向かったのだった。