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第一話 魔法学院生の少年、セントラム王国の宮廷魔法師臨時代理へ(その4)

 魔法学院生の少年は研究室を整理し、セントラム王国に赴く準備をはじめた。

 しばらくの間留守にするため、精霊魔法の研究に使う精霊草や幻獣の骨などの魔法原料や試験管のような実験機材をすべて棚に仕舞って施錠した。


 そして、愛用の魔法道具の類と法衣の予備品や身の回りの生活の品をまとめて、革製のバックパックに詰め込むと、小さな背中にグッと背負った。

 リオンは支度を済ませると、研究室のドアを施錠して〈琥珀の塔〉を出た。

 

 ヴィラード山の頂にあるパドル魔法学院から山麓に位置するセントラム王国の王都セントラムシティまでは、山道を下って半日ほどの距離だった。


「さて、歩いて行くと時間がかかるし、ここは〈疾風の足〉を使っていこうかな」


 リオンは〈風〉タイプの魔法を得意としていることからチュニック風の法衣や精霊糸製の靴に、風の精霊魔法を付与している。

 そのため、少し精霊力を込めるだけでとても俊敏に動くことができるのだ。


 魔法学院生の少年は山の頂から山道のルートに沿って駆け足で下りはじめた。

 見た目は単なる駆け足である。しかし、猛スピードの速さで風を切っている。これが〈疾風の足〉という精霊魔法の効果なのである。


 背負っている革製のバックパックの中には、魔法道具や生活用品のほか、特別にルヴィニア学院長から貰った〈封印の鎖〉の魔法書が入っていた。


 セントラム王国は平和な国と評判だから〈火焔の玉〉や〈氷結の槍〉のような強力な攻撃タイプの精霊魔法を使う機会は、少ないだろう。

 また、リオンは人を傷付けるのは嫌いで攻撃タイプの精霊魔法は苦手なのだ。


 〈空間転移〉はとても便利な魔法だけれど、魔法の発動に失敗すると、はるか山の頂上や見知らぬ土地の辺鄙な場所などに転移してしまう危険がある。

 

 〈巨人召喚〉は岩の巨人に重い荷物を運ぶ手伝いをお願いできたりして便利な精霊魔法である。

 でも、岩の巨人が突然出現したら、街の人々は大騒ぎになってしまうだろう。


 〈封印の鎖〉は精霊力を凝縮したエネルギーの鎖を造り出し、目標をグルグル巻きにして、動作を封じる精霊魔法である。


 凶暴で危険なモンスターの動きを封じて対処したり、泥棒や乱暴者のように、ちょっと困った相手を拘束して、無傷で捕縛したりすることができる。

 とても便利な支援タイプの精霊魔法のため、今回選択したのだった。


「セントラム王国の宮廷魔法師をホントに務めるのかあ……臨時の代理だけど、やっぱり嬉しいな。セントラム王国の人たちに迷惑をかけないよう、しっかり頑張らなきゃ」


 国家の重要な柱となる宮廷魔法師の役職は魔法師たちの憧れの職業である。

 よほど修行を積んで腕を上げないと、魔法学院から推薦状を貰うことはできない。


 魔法師たちの間だけでなく、広く人々から尊敬されるとても偉い存在なのだ。

 リオンは胸いっぱいに期待と使命感を満たしながら、ヴィラード山の緩やかな山道をビューンッ!ビューンッ!と高速で下って行ったのだった。

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