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序章 世界創世の詩(うた)

はじめまして、夢明太郎と申します。

書きためた小説を推敲しつつ、コツコツと投稿したいと思いますので、よろしくお願いします。

 遥かな太古、広大無辺の〈虚空(こくう)〉に、ひとつの偉大な存在が誕生しました。瑞々しい生命の息吹に満ち、数多の精霊の力を宿したその存在を、偉大なる精霊巨神フェノールと呼びます。


 偉大なる精霊巨神フェノールは〈虚空〉の虚無の海原で、無限に等しい永遠の時間を生き抜き〈虚空〉を貫く最期の咆哮とともに、息絶えました。


 そして、広大な巨神の骸から、数多の精霊溢れるひとつの世界が誕生しました。


 数多の精霊は広がって、土の精霊は豊穣かつ広大な大地となり、水の精霊は恵み溢れる優しい海となり、火の精霊は世界を温める熱き炎となり、風の精霊は季節を巡らせる悠久の風となりました。


 さらに、偉大なる精霊巨神フェノールの白く輝く唯ひとつの瞳から、慈愛の女神ラフィーアが、熱くたぎる巨神の涙から、智恵の女神スワティカが、そして〈虚空〉を貫く最期の咆哮から、戦女神ウルフェムダが誕生しました。


 この三人の女神を、創世の三女神と呼びます。

 新たに生まれた世界の名前は、精霊大陸フェノールランド。その新しい世界において、慈愛の女神ラフィーアは、大地に豊かな緑を実らせ、世界に溢れる数多の精霊から、たくさんの個性豊かな種族たちを創造しました。


 あらゆる幻獣の王たる巨竜ドラゴン、豪快で頼もしき岩の巨人ギガントス、美しく静かな森の護り手エルフ、酒好きで頑固な鍛冶職人ドワーフ。

 そして、創世の三女神の容姿を象って創造された古代人エヴァール。


 さらに、その他にもたくさんの幻獣、魔獣や多彩な動植物が誕生し、精霊大陸フェノールランドは、豊かな生命の謳歌する恵みの大地となりました。


 はじめの頃、精霊大陸の種族たちは、互いに打ち解け合い、豊かな精霊の恵みを分かち合って、平穏で幸せな時間を過ごしていました。

 

 優しい精霊たちの息吹が世界を吹き渡る中、エルフたちの奏でる樹の竪琴の美しい旋律が風にそよぎ、ドワーフたちの叩く陽気な打楽器の音が大地を震わせ、ギガントスたちの朗々たる歌声に合わせてすべての種族たちが賑やかに踊っていました。


 そして、知恵の女神スワティカから世界に宿る精霊の力を様々な形に変換し、自由自在に操る魔法の力を付与された古代人エヴァールは、空中を悠々と行き交う浮遊都市群、一瞬で遠距離を移動する空間転移門ネットワーク、さらに、気候すら制御する天候管制システムなどを構築し、世界各地に非常に高度な魔法文明を築いていました。


 こうして、精霊大陸フェノールランドは美しい創世の三女神の加護の下、精霊の息吹と命の恵み豊かな美しい世界となっていきました。

 

 しかし、この素晴らしい理想郷は、突如〈虚空〉から侵攻してきた冥王ナトゥーリアによって終焉することとなりました。

 

 冥王ナトゥーリアは闇の眷属たる魔神族を統率して、精霊大陸に侵攻し、この世界に宿る精霊の力と命の恵みを喰らい尽くそうとしたのです。


 戦女神ウルフェムダは精霊大陸の種族たちを統率して、冥王ナトゥーリアの魔神族の軍勢と激しい戦いを繰り広げました。


 この激しい戦いは数百年の長きに及び、たくさんの種族たちが命を落として滅びた末、戦女神ウルフェムダと冥王ナトゥーリアは相打ちとなって、互いに命を失いました。


 さらに、慈愛の女神ラフィーアと智恵の女神スワティカは己の命を犠牲にして、冥王ナトゥーリアの霊魂と魔神族すべてを、はるか遠くに浮かぶ酷寒の月の冥宮に封印しました。


 〈封印戦争〉と呼ばれるこの長く悲惨な戦いによって、たくさんの種族たちが滅び、恵みの大地は荒れ果て、精霊大陸フェノールランドに宿る精霊の力は大きく衰退してしまいました。


 また、古代人エヴァールは辛うじて生き残ったものの、激戦により疲弊した結果、天候すら操る強大な魔法の力を喪失し、幾ばくかの時を経て偉大な魔法文明は崩壊してしまいました。


 生き残った精霊大陸の種族たちは霊魂だけの存在となり、天上の住処である太陽宮殿に昇天した創世の三女神に感謝するとともに、精霊大陸の各地に立派な神殿を建てて祀りました。


 創世の三女神は女神神殿を訪れる者たちに守るべき〈精霊の誓約〉を示し、誓約を遵守する者に、引き続き、女神の加護を与えることを約束しました。

 

 そして、精霊大陸の種族たちはこの〈精霊の誓約〉に従って、女神の加護の下、荒れ果てた大地を蘇らせていきました。


 こうして、精霊大陸フェノールランドは創世の三女神の存在しない精霊の種族たち自身による、新たな時代を迎えることになったのでした。


<創世の三女神を祀るセントラム王国の女神神殿の石碑、世界創世のうたより>


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