表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

短編#4

短編難しいです

僕は生花の名家、橘家の嫡男だ。

僕はずっと生花というか、花に囲まれた生活をしている。物心つく前から、花を弄っていたそうだ。

そんな花に塗れた生活をしていた僕は、5歳の頃、開かずの蔵というものが敷地にある事を知った。

僕は気になって仕方がなかった。だって、今まで花以外の事を教えて貰っていなかったから。

僕の好奇心が止まらなくて、僕が蔵を見つめていると後ろから声がした。

「入る事は出来ませんよ。おぼっちゃま」

じぃだ。

「どうして?」

「御当主様しか鍵を持っていらっしゃらないからです」

僕はじぃを見つめてみたけど、嘘かどうかは分からなかった。だってじぃ、表情(感情?)が顔に出ないもん……。

僕は諦めて生花の練習に戻った。


そんなわけないじゃん。絶対面白そうじゃん。僕は夜を待った。皆が寝静まるまで眠気と一進一退の攻防を続け、無事勝つことが出来た。

僕はそろりと寝室を抜け出し、外へ出る。

夜風が顔を撫で、眠気もいい感じに醒めた。

「どっかに入れるところないかなぁ?」

開かずの蔵の周りをグルグルしていると、窓を見つけた。

「でも、高いなぁ」

だが、折角ここまで頑張った(眠気との戦い)んだから、諦めたくない。よし、登ろう。

「よいしょ。よいしょ……」

案外いける。窓から中を覗いてみたけど、何も見えなかった……。やっぱり入るしかないよね!

僕が窓から入ろうとしていると

「誰?」

「え? うわっ!?」

突然の声にびっくりして落っこちてしまった。

「お尻痛い……。じゃなくて! 誰かいるの?」

僕は見渡してみる。けど暗くて見えないや。

「ねー、返事してよー」

「貴方は誰なの?」

「あ、えっとね、この家の子供だよ」

僕は何となく声のする方へ行ってみた。

すると、座布団の上に正座している女の子がいた。

「女の子? どうしてこんなところにいるの?」

「私だっていたくているんじゃないの。閉じ込められてるんだから」

閉じ込められてる?

「まさか、お父さんの隠し子……」

「違う。私は」

「待って。答えは言わないで。当ててみたい」

僕はむむむと考える。

確かこの家には座敷童子がいるってじぃが言ってたな。じゃあ決まりじゃん!

「座敷童子でしょ! 着物だし!」

「え?」

ふふー。当てられて驚いてるな?

「名前何? 名前!」

「え、え、えっと、薊……」

「薊? 薊。うん! いい名前じゃん!」

「え、あ、えと……」

開かずの蔵は薊を閉じ込める所だったんだなぁ。

「え、父さん酷くない? いくら何でも閉じ込めるなんてさ」

僕は薊を見つめる。

出してあげたいな。でも、父さんはダメっていうかもだし……。

「な、何?」

そうだ! 僕が鍵を貰えばいいんだ。ごとうしゅさまだったっけ。それになって!

「待っててよ」

「……?」

「僕がここから出してあげるから、それまで待ってて」

「いや、私は……」

その時、外からじぃの声が聞こえた。

「おぼっちゃま! おぼっちゃま!」

もう、気づくの早いなぁ。

「僕友達いないんだ。だから一緒に遊ぼうよ、外でさ」

薊はなんだかよく分かってないような顔をしている。ん〜。そうだ。

僕は手を差し出した。

「?」

「握手しよ」

薊はゆっくり僕の手を握ってくれた。

僕はぐいっと引っ張る。

「え? 立てた……」

「ね? こんな風に、今度は外に出してあげるから! また今度ね! あ、僕は花純! カスミっていうんだ! よろしくね!」

僕は窓から蔵を出た。

あ……。じぃ……。

「おぼっちゃま! どうしてこんな所にいるのです?」

「たは……。あははは……」

そのあと僕は父さんに無茶苦茶叱られ、それ以降、蔵に近づく事すら許してくれなかった。


私は手を見つめていた。一部とはいえ、呪縛を解いてくれた、あの子の握った私の手を。

「ここから私を出してあげる……か」

私は静かに座布団に座った。

急に立ったせいで足が痺れちゃってる。

でも、不快じゃない。うん、これからは動けるって、それだけでも、私は救われた。

来なくたって、いいの。

前も、その前も、ずっと前も、そうだったから。

あの子には悪いけど、その言葉は聞き飽きてる……。


あれからどれくらい経ったか。

私は興味もなかったけれど、短くない時が経ったのは分かる。

多分、花純はそろそろ成人する頃だろうか?

ダメだね……。いつも同じなのに、結局期待してしまってる。

また、落胆するのはわかっているのに……。

「ん……」

眩しい……?

原因はすぐに分かった。蔵の扉が開いたのだ。

「遅くなってごめん。やっと当主になれた」

「貴方は、あの時の……?」

私はふらふらと近づいた。近づいてしまった。

だって、こんな事始めてで、なんだかよく分からない感じになって……。

「やっと、ここから出してあげられる」

「いや、ダメなの……。私は……」

だけど、あの子は私の口を遮った。

「知ってるよ。疫病神でしょ? 僕は生花の家の人間だよ? 薊の花言葉くらい知ってる。貧困って意味があるってことくらい」

「だったら、私がここにいる理由だって分かってるはずでしょ?」

「あぁ。でもさ、疫病神だって、元は悪いモノじゃなかった筈だよ。だって、神さまなんだからね」

それでも私が言い募ろうとすると、今度は目の前に花束が突きつけられる。

「これ、君へのプレゼントだ」

「カスミソウ……?」

「うん。花言葉は幸福。そして僕の名前の由来でもある」

「どうしてこれを……?」

「さぁ、外に行こうよ。一緒に遊ぼうよ」

花純の顔に子供の頃の表情が重なる。

花純は私の手を引っ張った。

「君には僕が幸せを保証するから、だから、今度は福の神になってよ」

私は花純を見上げた。その顔に嘘はない。どこまでも清らかな心根だった。

「ここはもう、薊を縛る場所じゃない。縛るものは何もないよ」

あぁ、あぁ、私は……。

「外は、綺麗ね……。ありがとう」

花純をぐいと引っ張った。あの時とは逆に、私が。

そして、そっと唇を重ねた。

「!?」

花純が驚いている。

「なってあげるわ、貴方の為の、福の神に」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ