短編#3
お久しぶりです
強大だった。
絶大だった。
そしてそれは絶望であった。
「……ぐ、ぎ……」
全魔力を使っても、ソレに傷をつけることすら出来ない。
恐ろしい、勝てないと、心の底から屈服してしまった仲間達は荒野に骸を晒している。
「く……そ……が、ぁ……!」
だが俺は、諦めなかった。ただでは死んでやらないという、勇者としての、いや、俺としての意地だ。
目の前のソレが「絶望に打ち震えるがいい!」と高笑いしている。
あぁ、本当に絶望だ。勝てるビジョンが浮かばない。どう足掻いても死ぬ未来しか見えない。
だが、ソレは「絶望」と口にした。
俺は不敵に笑う。
「認めたな……。俺たちに希望があったと……。絶たれるに足る希望があったと……!」
こんなのはただの詭弁だと、そんな事は分かってる。俺の勇者としての力、「言霊」は魔力切れで使えないのも分かっている。
だが、それでも、言葉には力がある。自らを奮い立たせる何かが秘められている。
「今の言葉後悔するといい……! 言霊の勇者として宣言してやる……。お前は必ず人類の手で滅ぼされる……!」
俺は立ち上がり、剣を「絶望」へと向けた。
未来への希望を託し、俺h……。
荒野に残ったのは遥かなる絶望だ。人類が超えなければならない、最大の試練。
「絶望」はただ嗤う。自らに挑んだ愚者共の蛮勇を。行動の無意味さを。
「絶望」は世界への侵攻を開始した。