009
指先が一瞬光り、収束した光が彼の胸を穿く。
静かにその場に倒れ込んだ彼を横目に、息荒げに放った指を見つめる。
「俺は悪くない……まさかアイツが生き残っていたなんて」
片膝をつきそうになったが、気力を振り絞って立ち留まる。
「でもお前が悪いんだぞ。そんな昔の話を持ち出さなかったら、今回は何事もなく帰還しようと思ってたのに……」
倒れた彼に近づいて、彼が手放した書物を拾い上げる。
「じゃあ、この本は頂いていくからな」
書物に少しついた砂を払い落としページを開く。
「ここは遊戯会の島。戦争中の街から攻撃を俺が通信機を調整している間に離れた隙きに攻撃を受けた。そういうシナリオになるかな。若干穴が多くて怪しまれるかもしれないから、次からはしばらく静かに調査するしかないな」
翻訳しながら内容を再確認する。
後半は日常風景ではなく新しい魔術の開発の葛藤と思い出話ばかりだった。
「……魔法か。文明背景の記述は恐らく正しいから、その部分は証拠が積み上がれば第二ランク認定はされるが、問題は魔法の方だな」
最後のページを翻訳しようとするが、一部翻訳しきれない文字があるのか、正確に確認できる状態ではなかった。
それについては現在の技術では理解できないものと判断し、男は書物を閉じた。
「あいつの言う通り、ここに書かれている内容は生活に根付いたものが多くて、他の冒険活劇的な書物よりも説得力がある気がするな」
カバンの中に書物を片付け通信機に近づく。
「他の本があるか調査したかったが、ここに長くいると定時連絡でバレる気がするな。仕方ない、ここは一回帰還するか」
帰還依頼の通信を行う前に偽装工作をするために、一旦この場からは離れないといけないな。
そう考えながら荷物の内容を再確認する。食料は十分に足りているが、調理器具がパートナーの荷物の中だ。略奪するとそこから足がつくかもしれないから未調理のまま凌ぐしかない。
「でも、これが第二ランクと認定されたら、魔法の学校など魔法に関わる施設の再調査がされる。最終的に魔法の存在が発見されれば、魔法だからという理由だけで第三ランク認定されていた過去の遺産も再調査が入るし、魔法の存在を証明する物としての本と俺の名前が確実に残るかもな」
小さな笑みを見せながら、通信機の前で動作を停止するために座り込んだ。
『それはどうですかね?』