005
遊戯会の島。
そのような名前で呼ばれているこの島は、古くから戦争が行われ続いていた。
古く。それはいつ開始されたのか、記録が残っていないほど古い時代の話。その頃はまだ「遊戯会の島」という名前で呼ばれてもいなかった。
そもそも、当時そこが島だったのか。そこから疑問が残る所だが。
この島には2つの街があった。
共に今もその街の形は残っているが、住民が存在していない。そのような物を「街」と呼んで良いものか……。
そして、その街同士で戦争が発生した。始めた理由は今になってはわからない。
始めは単なる軽い闘いだったのだろう。途中から住民を戦力とする原始的なものから機械を使った、ロボット兵同士の戦いに進化するのに時間はかからなかった。
その後ロボット兵は自己進化を続けて、進化し続けた結果、住民が誰もいない状態でも「戦争を行う」という行為だけが残った。
そして終わる事なく戦争だけが続いていく街が2つだけ残った。
勿論。この戦争を行う街は現存する第一ランクの文明だ。彼らの外部調査員が目をつけない訳がない。
過去に複数の国の精鋭達が集まり大規模調査を行った事がある。
半数もの死者を出したこの調査は、結果としては『犠牲の割りに持ち帰った文明遺産は少量』というあまり喜ばしくない結果となった。
ただ、その持ち帰った成果として戦争が続く理由が判明した。
『抑止力として交渉を有利に進めるために隣街により軍事力がある事を示す』
双方の街の軍事中枢部のプログラムの初期命令は、それだけだった。
どのような交渉を行っていたのかという部分は不明のままだが、双方ともに軍事力の行使理由が同じだったため、相手の軍事力を上回るように技術進化を繰り返しながら、最終目的が交渉をする事なので相手の街を壊す事がない。
攻撃力の進化も進めながら、スパイなどの侵入者からの防御を進めるために誰も住んでいない街を要塞化する。
そんな街が自己進化を繰り返した結果、音速を越えて飛び交い相殺される遠距離銃撃戦に、相殺しきれない攻撃や敵の侵入に耐える要塞の街が出来上がった。
これだけの犠牲を出したこの街に対する追加調査は、最終的に中止された。
今は機械が最初の命令に沿って処理をしているだけなので、島以外に被害がない状態だが、この街の技術を各国が手に入れてしまうと、今後各国の間で戦争が起きた場合、恐らく全文明が再び滅ぶ可能性が出てくるほどの驚異になると全員が判断したためだった。
また、この戦争は相手より軍事力がある事を示す必要があるため、常に技術進歩が繰り返されている。
この街を観察するだけで技術進化の学習ができ、技術の独占は戦争が終わらない限り行われる事がないという安全策にもなる。
そういった思惑を含めて、この島にある街の戦争については、どの国も手出しをする事はしない。
結果、終わらない遊戯のような戦争を観せ続けるだけの島となったのだった。