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004

「ん? これは……」

 砂の中に少しだけ飛び出た赤黒い物が目についた彼はそれをつまみ上げた。

『どうした? なにか見つけたか?』

 少し先を歩いていた男が振り返り、彼に声を掛ける。

 彼が持ち上げたそれは1冊の古い書物だった。

「書物だと思います。でも先に歩いてるのだから、見つけてくださいよ」

『そんなちょっとだけしか見えていない物なんて普通見落とすだろ』

 表紙を確認したが、そこに書かれている文字は彼の知らないものだった。

 彼の被っているヘルメットの右頬にあるスイッチを触れる。目の前のシールドが一瞬点滅し『翻訳モード』と表示された。

 書物を眺めると自動的にそこに記載された文字が過去に収集した文字と比較され翻訳された文字へと置き換わる。

「これは……『この本を手に取った方へ』と書いてますね」

 書物の表紙に残った軽く砂埃を払い落とし、ページをめくる。

 内容をスキャンしつつ、同時翻訳した文字に置き換わった映像を黙読する。

『なんだそりゃ。見た目は本なのに手紙なのかよ』

「ここに住んでいた家主が不在時に訪れた方のために残していた日記のようなものみたいですね」

 次々とページをスキャンしながら中身を確認する。

「それに面白い情報もありますよ」

『なんだよ。俺にも見せろよ』

 彼は近づいてくる男に向けて右手を前後に振る動作をた。すると、スキャンした画像データが短距離通信にて転送される。

『サンキュー……なるほど、これは魔術師の日記か。でも、どうせ第三ランク文明遺品とかだろ?』

 文明遺品と言ってもどんな物でも収集すればいいというものではない。

 その重要度から「第一ランク」から「第三ランク」の3つに分かれている。

 「第三ランク」はその信憑性から一番価値が低いとされる。

 例えば使用方法についてわからない遺物、筆記者の主観でのみで書かれた日記、単一の歴史書や物語やフィクション作品などである。

 歴史書は意外かと思われるが、歴史を綴ったものは基本的に自国やその時の支配者視点で記される事が多く、客観性に欠けるものが多い。質の悪い物になると自国の品質を高めようと他国を必要以上に貶めたりしたりもしている。

「いや、そうでもないですよ。ちょっと待ってください」

 丁寧にページを捲り内容を確認する。時折スキャンした画像を見返しながら。

 第三ランクの価値が低いとされる理由の多くは、嘘偽りが多分に含まれるためである。そういったものがなく、客観的な内容だったり、他の書物などと比較する事でより現実性があるものについては1つ高いランクが与えられる。

 それが「第二ランク」となる。

 「第一ランク」と異なり、それ単独で事実を決定づける未加工写真や辞書ではなく主観的な視点や加工が加わっているが、その他色々な材料を基にそれが事実と認められるものに与えられる。

「例えば、この著者は街から離れた森の中で住んでいると記載してます」

 指摘する部分を範囲選択してデータを送信する。

「出発前に持ち込んだデータに、確か航空写真があったはず……」

 腕の操作パネルを触りながらデータの検索を行う。

『それなら俺も持ってたはず……あったぞ』

 男から転送された航空写真を確認する。これは未加工写真で、写真の補足事項に第一ランクと証明された内容が記されていた。

「現存する街がこれだから……現在地がこの周辺かな」

 彼が写真に丸をつけた部分には、地面を覆うほどの木々が生い茂っていた。

『写真には誰かが住んでいた様子はないけどな。でも、それが今はこの有様か』

 男が周りに視線を向ける。砂地が広がるばかりで植物がある様子もなかった。

「戦争の影響と考えるのが自然なんですが、……すごいですね」

『遊戯会の街の戦争か。俺達の調査中にこちらに矛先が向かなければいいが』

 共に写真の街がある方角に視線を向ける。

 そこにはただ空が見えるだけ。時折小さな音がしたと思うとそよ風のようなものが観測され、砂紋をわずかに乱れた。

 そこには文明の繁栄と衰退を繰り返したほどの時間が過ぎてもなお、終わる事なく続く戦争を行う街の姿があった。


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