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003

<<今回の調査のメンバーの点呼を行う>>

 抑揚の少ない音声がスピーカーから流れる。

「お、もしかして初めましてか?」

「前の任務の時に事故に遭いまして、しばらく休みを貰っていまして、今回は5年ぶりの調査参加です」

 互いに呼ばれた名前を確認しつつ挨拶を交した。

「しかし、事故からの復帰後の調査が俺とはあんたもツイてないな」

「? 何がです?」

 名前の呼ばれ自身のIDカードを端末に掲げ画面に入力を始めた。

「その様子だと俺の事は知らないのか。悪い意味で有名だと思ったが……」

 続いて名前を呼ばれ、彼の横に立ち同じ操作を行う。

「ずっと外部調査員をしてないと、内部の情報は耳に入って来ないですしね。あ、私は組み立て式テントと簡易調理器具を用意しますね」

 選択リストから今回の調査で配給申請する物品を選択する。

「じゃあ食料一式は俺が選択するか。でも、調査先ではぐれても大丈夫なように、そっちでも数日分は持っておけよ」

 そうですね。と返事をしながらも項目を選ぶ手は止めない。

「それで、悪い噂ってなんです?」

「ああ。前回の調査の時、山岳地方だったんだが、調査を終えて帰還しようとした際にドラゴンに襲われてな、なんとか逃げ切ったんだが相方が殉職したんだ」

 そう言いながら、今回の調査員の相手の様子を伺う。

 しかし彼からはその事に関する顔色は感じ取れなかった。

「でも、それは外部調査での事故でしょう? 運が悪かっただけでは?」

「俺もそう思うけど、どうやら昔から運が悪いらしくてな。よくそういった危ない目に合うんだよ。本部との通信機器は俺が持つから、空いた分で燃料をたのむ」

 調査員は持参できる荷物の量は決まっているため、お互いに重複した装備を選択しないように注意している。

 情報共有をしなかったため、無駄な物を持って調査に出て帰らぬ者も多い。

「わかりました。地図とかのデータのダウンロードは後ほど選択します」

「あとはコレだな」

 男はリストの中から「折りたたみ式L字ピッケル」を選択する。

「あれ、場所が山岳地帯なんて決まってましたっけ?」

 視線を上に向ける。画面に映し出された[調査地]の表記は空欄だった。

 外部調査は場所によってはドラゴンのような獰猛な生物が生息していたり、紛争地域だったりと危険な場所に向かう事も多い。事前に調査地を報告していると場所によってはボイコットが多発するため、今では配給品の準備の最中に発表される。

 メンバーの能力によってある程度は事前に選定されているため、このような発表になってからも特に大きな混乱はなかった。

「このピッケルは、俺の御守なんだよ。前回もドラゴンから逃げている最中に喰われる直前にヤツの目に刺せた事が生き残れた理由だと思ってる」

「なるほど、ゲン担ぎですか」

「神様なんて本ぐらいでしか見た事ないが、心の拠り所は必要だと思うぜ」

「それでは私はこのマフラーの持ち出し許可を出しましょう」

 首に巻いている赤いマフラーの先を触りながら答えた。

「それも何かのゲン担ぎか?」

「いえ。ただ母が作ってくれた思い出の品物なんです」

「不器用な俺達の種族が作ったマフラーか……頑張って作ったんだな」

 彼らの種族は、基本的な衣食住全てにおいて遺物から見つかった自動生成機器で作られた物に依存しているため、自ら編んだものというものは珍しい。

「もしかすると、そういってただけの自動生成品かもしれませんが」

 きれいに揃った編み目をなぞりながら苦笑いをする。

「そこは信じてやれよ」

「ですね」

 一通りの配給品が選択できた時にもう一度アナウンスが流れる。

<<それでは調査地を報告します。再度配給品を選択した後に出発となります>>

 入り口が施錠される音が室内に響く。それはここからは調査が終わるまでは戻る事はないと、強く宣言しているようだった。


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