第3話
どのみち映像が用意出来なければ先には進まない。
そう考えているうちにまたカップが空になっていることに気がついた。
今日何杯目だろう。カフェインにもどうやら中毒性だか依存性だかがあるらしいがまんまとハマってしまうのがどうにも納得いかない。しかし、眠気やら怠さを解決するのにはやはりコーヒーが最適だった。
再びコーヒーを淹れモニターの前に戻ってきた。
マスター「映像は手に入りました」
本当なのか?
とも、思った。
いや、実際には疑いの方が強いため
嘘だろう?
が正しいが、どのみち見てみるほか確かめる術はない。
井戸「ほんまなん?絶対うそやろ」
味噌「どうやって映像みるの?」
マスター「実際にそのコンビニに問い合わせ、確認したところ警備会社に映像が残っているかもしれないが民間の方には見せられないと言われた為、その警備会社を買収し、映像を手に入れました」
買収?
買収ってあの買収?会社を買い取ったってこと?
京都「買い取ったってこと?」
気づけば思ったことをそのまま書き込んでいた。
その映像のためだけにひとつの会社を買い取る。しかもこんな短時間で。
だがこんな匿名掲示板、書き込むだけなら誰でも出来る。
マスター「買取りました」
書き込むだけなら誰でも出来る。なら、、、
味噌「どうする?映像おくってもらう?メールとかで」
京都「匿名掲示板でメールアドレスを晒すのは危険。住所なら尚更。だから考えたんだけど大まかな位置だけ書き込んでそこにUSBメモリで映像を置いてもらうってのはどうかな?例えばどこそこの駅のコインロッカーとか。出来れば15分とかで取りに行ける場所にして」
井戸「そんなんできるわけないやん」
京都「会社をこんな短時間で買収できるならそれくらい出来ると思います。ある意味これが試験になるかもしれません。それだけの財力があるのか。またそれだけの財力を使わせている覚悟と責任があるのか」
味噌「まぁ、たしかにそれだけのお金があるのかは気になるし、相手からしても私たちにほれくらいの覚悟があるのかって気になると思うしね」
マスター「そうですね。可能です」
井戸「じゃあ、これができたらお互いに信じるってことなん?」
京都「そうですね。どうですか|ω・)」
マスター「分かりました。どちらに置かせてもらえれば良いですか?」
そう聞かれ、味噌から順番に自分の現在地から近いが特定出来ないであろう場所を書き込んでいく。味噌の指定は近くの漫画喫茶の部屋。井戸は近くの駅のコインロッカー。京都は公園のベンチを指定した。
場所はバラバラで日本地図でも近いとは言えない。教科書の地図でも総移動距離はシャープペンシルの長さ程ある。
マスター「わかりました。15分後に向かってください」
思っていたよりも時間はかからないようだ。
まだ半信半疑ではあるが答えは公園に行ってみれば明らかになる。
わかりました、とキーボードを叩いて、ひといきつき部屋を出る準備をする。
上着を着て靴下を履き、鍵とスマートフォンをポケットに入れ時計を確認した。マスターのレスから12分が経っている。少し早いが部屋を出て公園に向かう。
公園は住宅街の中にあり、特別大きい公園ではない。ブランコに滑り台、小さな砂場とベンチ。ベンチを照らすように街灯がひとつ立っている。公園の近くまでいくとベンチに何かが置いてあるのがひと目でわかった。大きめの封筒。書類等を入れておくような封筒が置いてある。
本当かよ、と少し心踊らせながら手に取るとやはりというかそうなのかというか軽い。上下させてみるとカサカサっと音がする。重さからするとUSBメモリそのものだ。高揚する心を抑えながら開けると青色のUSBメモリが入っている。
思わずマジかよ、、、と呟いてしまった。
中身を確認するまでは分からない。分からないが、短時間で指定した場所にUSBメモリを置けるのは事実らしい。
驚愕と高揚と少しの恐怖が同時に襲ってきた。謎の感情カクテルは少し喉が乾いた。