ロストバタラフライ
『ねぇ、どうなるかな?』
沈み行く夕日を視界の片隅に捉えながら、ポツリと口から溢れ出た言葉。
顔に当たる夕焼けは、沈んだ表情を掻き消す茜色で染まっていた。
髪をはためかせ、白い息を夕焼け空に吐き出しながら
走りなれた土手を駆けていく。
冷たい空気が体に触れる度に体温を奪ってく。
内から溢れ出る情熱をも事も無げに吸い取るかのように。
友人の腰にしがみ付いて、徐々に移り変わっていく世界を目と肌で感じてた。
胸の内で渦巻くしこりを漠然と感じながら。
唐突に聴こえてきた友の声。
不意を突く、風に乗せられ流れていく言葉。
気付いた時にはもう暗い世界に紛れ込んでいた。
何もなかったかのように静まる二人の世界。
耳に入ってくるは土を蹴る車輪の音と、口から漏れ出る吐息の音。
ジワジワと迫る夜の時間。
徐々に明るさを失っていく遠くに見える恒星。
後ろを振り返れば、濃い闇が押し迫ってくる。
目一杯漕いでいても、か細い足では逃げ切れ無い。
早い。早い。早い。今来た道を振り返るとあっという間。
遅い。遅い。遅い。今進む道は何処まで伸びててどの位かかりそう?
『ねぇ、何考えてた?』
夜風に掻き消されない様に、声を張って出した言葉。
なのに、夜空の中に霧散したみたい。
後ろからは、また何の返事もないから。
『...…色々』
相手の背中に頭を押し付け、絞り出した囁く様な小さな声。
だからか、前に届かず後ろの世界に溶け込んだみたい。
前からは何の反応も見られない。
夜の闇に溶込む二人の姿。
頼りないライトと共に馴染む様に小さく消えていく。