防衛 2
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カルテリオ城城下町から北西方向にある野原では、魔物の大群が大移動をしていた。
ヨルキはこのすべてを見過ごし、最後尾からやってくる大型の魔物一体に集中する。
それは一言で表すなら山だった。
かろうじて人型に見えなくもないが、大量の岩を接着剤で乱雑に接合したかのようなゴツゴツとした外観は、魔物というよりも押し寄せる巨大岩と表現したほうが正しいように思える。
その名は見た通り、【ゴーレム】。通常、洞窟などに住み着いているゴーレムの体長は大きくても2メートルと少し。討伐難易度もBの下位に当たる。
だが、このゴーレムは全長10メートルを軽く超えている。同じ体長でも、四本脚で地に立つ魔物より圧倒的な存在感だ。
「ゴーレムの中でもキングの称号を持つ、【キング・ゴーレム】かな……」
呟きつつ、強化魔法を発動。全身をエメラルドグリーンの魔力が包み込む。
雄哉が施した『薄影』により、魔物の大群にはいまだに気が付かれていない。故に標的はゴーレム一体のみだ。距離が十分に近づいたところでヨルキは『影空間』から新調したばかりの槍を取り出す。
『ヴェントクク・ランス』。ガーガリアの爪を加工して作られた穂先の刃は、強化魔法無しで岩をも切り裂くほどに鋭利となっている。
ゴーレムは試し斬りに丁度いい、とヨルキは余裕の笑みを浮かべた。
だが、決して油断はしない。だからこそ初撃から全力を出す。
「『無刃』」
ヒュン、と槍を振る。とても軽やかな動作で行われた攻撃は、しかし絶大な効果を生み出した。
ズパンッッッ!!!! と。快音が野原を駆けた直後、ゴーレムの右足があっけなく切断されたのだ。断面は日本の金属加工技術をもってしても不可能なのではないかというぐらいに美しい。
片足を失ったゴーレムは一瞬にして体勢を崩し、右方向に倒れた。大重量が地面に衝突したため、地響きが周囲を走る。魔物の大群の一部が何事かと後ろを振り向くと、そこには倒れ伏したリーダーの姿。
魔物たちは何が起きたのかさっぱり理解できていなかった。どこにも敵がおらず、突然リーダーが地に伏せる原因など存在するはずがなかったからだ。
「雄哉さんの『薄影』って、めちゃくちゃ便利ですね……」
そこからは一方的な展開となった。
無刃は無属性魔法であるがゆえに、無属性魔法LV7と魔力効率LV5を持つヨルキならば多少乱発しても大した魔力消費量にはなりえない。安全圏から遠慮なく次々と不可視の刃を生み出し、ゴーレムは次第に細切れと化していく。
ゴーレムは本来、再生能力を持っている。全身は見た目通り無機物の岩の集合体であり、それを統率する核が破壊されない限りは無限に再生し、攻撃を続行してくるのだ。
しかし、ヨルキはそれを許さなかった。
演舞のように槍を次々と振り回せば、それに応じて無刃がゴーレムの体を斬り刻む。それこそ、再生速度を上回るペースでだ。
ゴーレムは何度も起き上がろうと手を地につけて体重を支えようとしたが、その度に斬撃が襲い掛かる。そして倒れたところにも追い打ちをかけるようにいくつも無刃が襲い掛かる。
数分間、圧倒的な力でゴーレムを完全に押さえつけたヨルキだったが、ついに無刃がゴーレムの心臓たる核をとらえた。
パギンッ……と。ガラスの砕けるような音が耳に届き、二度とゴーレムが動くことはなかった。
「さて……北に行きますか!」
結果は圧勝。無傷で戦いを終えたヨルキは統率を失うも再び城下町へ向けて走り出した魔物たちを置いて、何人もの冒険者たちが足止めをしているはずの北へと向かった。
短すぎですけど、とりあえずここで切ろうという判断です。




