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やる気なし勇者の異世界道  作者: 国衣任谷
一章
4/57

冒険者

「ここが冒険者ギルドじゃ」

「へぇ……ここが」


 城下町にたどり着き、キラノに案内してもらう形でギルドにやってきた雄哉は、その建物を眺めた。

 町自体は非常に広く、多種多様な建物が立ち並んでいるのだが、冒険者ギルドはそれらよりも二回りほど大きい。人の出入りは少ないが、その代わりに個性的な人が多いように見えた。

 ラグビー選手ですら小さく見えるほど屈強な体をした、全身鎧を身に纏い背中に大きな斧を持つ男。

 軽装ではあるが両腰に二本の剣を差し、背中にも二本の剣をクロスさせて背負っている風格のある男。

 全身ローブに身を包み、ほとんど顔も見えないような謎の人物。

「冒険者だ」と名乗られれば一発で信じられるような格好をした者ばかりである。


「爺さん――キラノの家はどこだ? 送ってやるよ」

「いや、腰はもうだいぶ良くなった。家はすぐ近くだし大丈夫じゃよ。それから、これをやろう」


 背中から地面に下ろすと、キラノは何やら折りたたみの財布のようなものを取出し、そこに手を突っ込んだ。、そして出てきたのは、一枚の紙切れ。中央に描かれている王冠をかぶった人物画にはどこかで見覚えがある――というか、国王カルテリオだった。

 おそらく、この世界におけるお金だ。彼の納める国だから貨幣のデザインも自然とこうなるのだろう。

 カルテリオの左あたりには見たこともない文字が書かれていたが、意味はなぜか理解できた。


「5000……リアン?」

「これから冒険者にるのだろう? 少ないがこれは就職祝いじゃ」

「いや、でも、さっき会ったばかりの赤の他人じゃねーか」

「今日のお礼も兼ねておる。それに金も持っておらんのだろ? 黙って受け取れ。それじゃあの」


 そう言うとキラノは紙幣を押し付けて踵を返し、町の風景に溶け込んでしまった。

 雄哉は心の中で感謝し、冒険者ギルドに向き直る。


「取りあえず……行くか」


 ギルドの扉を開き、中に入る。

 受付らしき場所に近づくと、係員らしきショートカットの良く似合う女性が驚いたように顔をあげた。普段から影が薄い雄哉にとっては見慣れた反応である。


「っ!? し、失礼しました。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「冒険者になりたいと思ったんだけど、どうすればなれるんだ?」

「ギルドへの登録ということですね、かしこまりました。ご本人確認のための証明証などはございますか?」

「ああ、えっと……これ使える?」


 証明証と言われてポケットをまさぐり、銀のプレートを掴み取って渡す。

 すると女性は笑顔を作り、


「はい、ご利用になれますよ。プレート型ですとすぐに登録は完了いたしますので、少々お待ちください」


 プレート型? と雄哉は頭の中に疑問符を浮かべたが、おそらく身分証明はプレート以外にも色々あるのだろうと思い考えるのをやめた。

 女性は長方形の分厚い水晶のようなものにプレートを乗せる。そのまま数秒放置し、水晶が発光したと思ったらプレートを取る。それだけであっさりと登録は終了してしまった。


「登録が完了いたしました。説明を受けますか?」

「えっ、登録はもう終わったのか?」

「驚かれましたでしょうか? 最近、冒険者は完全に人手不足な状態なんです。依頼の難易度が上昇したおかげで命を落とす者が増え、そのせいなのか新人も入ってきません。ですから、冒険者になろうという者は大歓迎なんですよ。ですから手続きも簡単にしているんです」

「す、すんません。でも俺、戦うのは無理で……」

「いえいえ、大丈夫ですよ。単純に冒険者の数が減ったせいで、雑用のような依頼も溜まっております。それらを少しでも消化していただけるならこちらとしては嬉しい限りです」

「あ、そうなの」


 どうにもあっさりと冒険者になってしまい、雄哉は拍子抜けしてしまった。日本では不景気だ就職難だと言われているものだから、こうあっさりと仕事に就くことができるとどうにもスッキリしないものがあった。

 しかし、これで金を稼ぐことができるようになったのは事実だ。どうやら無理矢理戦わせるとか、そういうこともないらしい。これならば問題なくやって行けるだろう。


「それじゃ、冒険者の説明を頼む」

「かしこまりました。

 まず、冒険者の仕事は至ってシンプルです。依頼を受け、それを達成し、報酬をもらう。報酬に関しては基本的にお金が多いですが、商売人の依頼だと食べ物や道具であったり、鍛冶屋の依頼だと武器が貰えたりもしますね。

 依頼の受注は簡単です。掲示板に張られている紙を受け付けにいる者に渡してください。例えば今ですと私ですね。

 ここで注意しなければならないのが依頼の難易度です。依頼の難易度にはS~Dがあり、当然難易度はSに近づくにつれて難しくなっていきます。そのため、難易度C以上の依頼はそれに見合った冒険者ランクが必要となってきます。ユーヤ様は先ほど登録されたばかりですので、冒険者ランクもD。つまり難易度Dの依頼しか受注することはできません。

 冒険者ランクはギルドが管理しております。上のランクになってもよいだろうとこちらが判断した場合にのみ、ランクが上がります。

 ざっくり説明しますとこのような形となりますが、どこかご不明な部分はございますでしょうか?」

「いや、特には。ありがとう」

「それでは登録ありがとうございました。なにかわからないことがございましたら、なんでもお聞きください。また、Dランクの依頼はそちらの掲示板となります。ぜひ一度ご覧になってくださいね」


 女性が手で示した場所には大きな掲示板があり、大量の紙が画鋲か何かで留められていた。雄哉は言われた通り、一度どのような依頼があるかを確かめることにした。


「えーっと、何々? 『怪我をしているので代わりに買い物に行って欲しい』、『出かける予定があるので三日ほど子供の世話をして欲しい』、『壊れた家の修理を手伝ってほしい』……色々あるな」


 特に難しそうな依頼ではなかった。どれも人の手を借りたいというだけの内容で、報酬は1000~3000リアンといったところ。


「そんじゃまぁ、やってみるか!」


 雄哉は右手で握り拳を作り、左の手のひらににバチッと叩きつける。

 冒険者としての日々が、始まろうとしていた。

説明回。そしてこの世界で就職は簡単(給料は良くない)

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