真夜中の訪問者
時刻は午前2時。
世間ではそれを真夜中という。
夜中……つまり人は寝る時間だから
お静かにって注意される時間帯。
もう一度、時計を確認しよう。
うん、間違いなく午前二時だ。
「アハッハハ」
「そんなホラ話信じるかい~」
とか騒ぐなんてもっての外なのに
階下ではまだ話し足りない連中がいるらしく
笑い声が混じって聞こえる。
毎回うちの飲み会のたび思うんだけど……。
親戚が仲が良いのは良いと思う。
だけど限度もあると思う。
どこかの女子中高生の修学旅行じゃあるまいし、
一か月に一回は何かにつけてよく集まってるんだから
何をそんなにキャッキャ話すことがあるんだろうかと。
どうせ明日……今日の朝には記憶なんか殆ど吹っ飛んでいるんだから
改めて今日話せば良いのにと思うんだけど
酒飲みの感覚は違うらしい。
以前、ご近所さんに騒音で通報されて以降、
家ごとまるっと防音設備を強固にし窓を閉めれば
殆ど聞こえないって……そこまでして飲んで騒ぎたいものなのか?
それに近所には良いとして
家人にももっと気を配って!お願い。
秋助は一度寝たら雷が落ちようと隣に救急車がこようと
起きない得な性格だからいいけど……俺は流石に無理だ。
いい加減眠れとないから
下に文句を言いに行こうかと思い始めた時だった。
コンコン。
予期せぬドアのノックに思わずビビッてしまった。
何度も言うけど今、夜中の二時だから!
「だ、誰?」
「お母さん」
なんだお母さんかと胸を撫で下ろした。
ドアを開けてどうしたのと尋ねると、
「アンタの学校の先生、酔いつぶれて寝てるのよ。
親戚の伯父さん達は雑魚寝で風邪引いても別に良いんだけど
流石に先生はそういう訳にいかないでしょう。
全く知らない人と一緒よりは
まだアンタの部屋での方が良いかと思って
ちょっと運んでちょうだい」
「…………え?」
「え?じゃないわよ、早く早く」
居間に行くと見覚えある親戚のおじさん達が酔いつぶれて
倒れてるのは毎回のことなので慣れているとして、
その一角に違和感ありまくりの監督の姿を見つけて
深い溜息が漏れたのは言うまでも無い。
「監督、監督、もう何やってんですか?
風邪引きますよ、俺の部屋二階なんでちょっとは自力で
歩いてくれないと俺、抱えきれませんからね。
もう、聞こえてるんですか?」
「…………」
言葉なのかよく分からないけどなんか
分かった的な言葉を発してるように思う。
それでも覚束ない足取りで階段から落ちそうになったりと
ヒヤヒヤしながらどうにかこうにか
自室へと連れて行くことに成功。
俺が下に行っている間にお母さんが敷いてくれた布団に
監督をゴロリと転がし任務完了。
「ふ~~~~~。
全く手のかかる人ですね」
さっきヒィヒィ言いながら運んだことによる疲労と大量の汗の為、
お風呂に入ることにした。
部屋を出る前に監督を目視、風呂から上がり再び部屋に戻ると
転がした時の同じ姿勢の監督を確認した後、
一体何しに来たんだかと独り言ちて自分のベッドへ。
とんでもない卒業の日だったなと盛大な溜息と共に
リモコンで部屋の電気を消した。
やっと眠れそうだと思ったその時、体に誰かの体重を感じた。
「……酔い潰れてたんじゃなかったんですか?




