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目撃者

「先生~試験範囲広くない?

もっと短くならないの?」



「いつも眠そうだけど

夜、何時に寝てんのよ~」



廊下を歩いていると二年の教室の

近くを通りかかった時その姿を発見した。



数人の女子に囲まれて

弄られている変人こと我が監督だ。



「短くならないし、何時に寝ても

眠いんだよ」




何だ、普通に女子とも喋ってるじゃん、

しかもまんざらでも無さ気に見えるけど?



男が好きとか、さては冗談だったか。


だよね、一介の生徒に

あんな事言うわけないし

本気かと思って焦って損した。



どうも~大変ですね~と

心の中で挨拶し、会釈もそこそこに

通り過ぎようとして襟首を掴まれた。



「ぐえっ」



「オイ、無視して行くな」















「ああいう場合助けろよ。

薄情だなぁ、お前」



「ゴホゴホっ、死ぬかと思いましたよ!

強く引っ張りすぎです、先生っ。


……女の子達に囲まれて結構嬉しそうに

見えたから邪魔しちゃ悪いかと思って」




「―――わぁあ!?」



いきなりグィと顔を引き寄せられた。


すぐ目の前に先生の顔。



(……え?え??)






「お前さ……」




そういったまま顔が更に近く

目を覗き込まれ

息がかかる程の距離で声が……



「あ……あの、なに……先生?」




“お前、タイプなんだよ”



再び余計な言葉を思い出して

顔が紅潮し激しく心臓がドキドキしだした。



アレ??冗談……でしょ??




ちょっと、イキナリ――??


学校で誰が見てるか分からないのに

大胆すぎるでしょう!?



「ま、先……生?」








「目、悪いんだっけ?」








「は??……い、1.5ですけど?」



「うーん、じゃ単なる節穴か」



聞き捨てならない言葉を吐きつつ

スッと顔を離すと頭をポリポリ。



だから女に興味ねーんだってとの

呟きを添えて。



「言わなかったか?俺」



「聞いたような、聞かなかったような」



確認する?フツー。




「……お前がタイプって言ったことは?」



「全く記憶がありません」



そこは強く否定しておかないと。




「じゃ、覚えといて。試験に出るから」



(は????)



何処の試験にでしょうか?


回答できるの俺しかいないと思いますが。

いや、出たとして空欄回答ですよ。




“キンコーン”



「あ、もう予鈴か。

授業面倒くせぇ~あ~も~サボりたい」



教師が絶対に口にしてはいけない言葉を

ましてや生徒の前では絶対禁句を

割と大きな独り言でボヤきながら

先生はスタスタ何処かに行ってしまった。




「………………」





何だ?あの人。



何っていうんだ??あの人は!!!!!




まだ心拍数が跳ね上がったまま

その姿を見送っていた俺は見えなくなった

途端、我に返って静かに自分の口に

手をあてた。





馬鹿だ、俺……




――キスされるかと思ったとか。

























「なぁ、知ってた?岩倉」


「えー?なになに?」



「日野の奴、三年の先輩から手紙

貰ってたらしいぞ」



「え?」




ついに来てしまったか?



「……果たし状が?」



どうしよう、と慌てる俺に

呆れた様な友人の一言。



「岩倉、何言ってんの?相手女子だよ」













「ねぇトシ、聞いたよ?

手紙貰ったんだって?」



グランドに向かうトシを

待ち伏せして平然を装いながら真相を探る。


「……チッ、

どっから聞きつけてきやがった」



不機嫌そうに言われることは分かってる。

それが照れ隠しなんかじゃないって事も。



「三年の先輩って本当?」



でも引かないよ。


俺にとって、とてもうやむやに

出来るモノじゃないから。



「誰?何て書いてあったの?」



「知らねーよ」



「知らないって読んだんだろ?」



「読んでねーって!」



それは段々キレた声に変わっていく。


これが昔ならきっと

殴られていたかもしれない。



例えそうだとして――

それでも俺は来たと思う。




……トシ、



お前はいてもたってもいられない

衝動に駆られた事ないの?




「何で?」




「はぁ!?別に良いだろ、

どっちにしろお前には関係ねー話だ。

ヘラヘラ笑ってからかいに来んな、どけ」



しつこく食い下がる俺に

トシは遂にドスの利いた声で

払い除け行ってしまった。






「俺が――笑ってるだって?」






お前にはそう見えてるんだ?



笑えるわけないじゃないか。


俺にとってお前に関わること全部

大事過ぎておかしくなりそうなのに。





「冬至……っ」













「おーい、マネージャーさん」





その声に壁にもたれ掛かっていた

体が跳ね上がった。



「!!」



「備品の管理記録提出しなきゃ

いけないみたいなんで、メンドーだけど

持ってきてくんないかな」




「……は、ハイ」



嫌な汗が流れる。


いつから居たんだ?




「予算がどうのこうのって

何で五月蝿いんだろうなぁ」




「で、ですね」




今の全部見られてた?




「何かあったか?」



「いえ……何も」




白々しい。





絶対見ていたくせに。


よりによってこの人に

見られるとかツイてない。





「なぁ……俺にしとけば?」




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