表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/56

振動


“今日、部活は休みですか?”



一時間前に送ったメールの返信は未だ無い。



昼休みになっても昼メシを

食べる気にもならず、机に突っ伏したまま

手に持ったスマホだけに気持ちが集中する。



ブブブ。



(やっとか)



“部活は任せるよ”



は?それだけ??




“今、何処にいるんですか?”



“うーん、どこでしょう”



“キレていいですか?”



“ダ~~~~メ”




イライラする。


このままだと又

きっとはぐらかされて闇の中。




軽いノリ、真剣さが微塵も感じられない

いつもの監督の手段。



振り回されてきた、散々。



好きだけど、それとこれとは別だろ?


何で肝心なことには触れさせて貰えない?



監督が俺の事本当に同じくらい好きなら

何かあるなら言って欲しい。



そう思うのっておかしくないだろ!



だから……、



“もし本当のことを

言ってくれないんなら、別れます”



勢いで打ってしまったメールに

返事が途絶えてしまった。




しまったと思っても、もう遅い。



「何やってんだか……俺は」




それでもスマホを握り締めたまま

手放すことは出来なくって。



怒りと反省と後悔とで

いい加減頭がおかしくなりそうに

なりだした5限目、いきなり

制服の震えが伝わってきた。



心臓が突き破って出てくるんじゃないかと

思うくらいの鼓動が指に伝染して

中々上手く取り出せない。


それでもやっとの思いで取り出したそれを

今度は見るのが怖くて暫く目を瞑ったまま

確認することが出来なかった。




‘そうだな、そうしようか’



そう書かれていたらどうしよう。




あの人だったらありそうで怖い。



嫌だ、絶対嫌だ。



別れたくなんかない!



意を決して机の下でゆっくりと

薄目を開けると……



“今から五分後に電話する。

授業抜けれるか?”



「え?」



突然、バイブが再び作動した。




「せ、先生っっ!!お腹痛いんですけど

家に帰ってもいいですか?」



「岩倉、腹痛いのか?

保健委員、保健室に連れて行ってや……」



「先生、マジで痛いので、

家に帰って良いでしょうか!!??」



「お、おう?」



俺の勢いに押された英語担当の

諏訪下先生はチョークを黒板に付けた

まんまの姿勢で固まっている。




「ありがとうございます!!!!!」



教室を飛び出し、三階の踊場で

震えるスマホを取り出した。




『よ~~~ぉ、何て言い訳して

教室出てきたんだ?』



からかう口調で聞こえる耳元からの声に

俺は安堵していた。



『この時間、授業中で分かってるでしょう?

全く教師が生徒に授業抜けさせるとか

考えられませんね』



だから噛みそうになりながらも

悪態をつくことができた。



『迷惑だった?』



『……だったら出てませんよ』



『ありがとう。

出てきたついでにそのままサボれる?

俺のいる場所の近くの駅まで来て欲しい。


場所はメールするから着いたら連絡して迎えに行くから』



『ハイ、そのつもりです』




メールや何やらで場所を確認後

その方面行きのバスを認し乗り込んだ。



車窓を見ながら俺は温かい気持ちで満たされていた。


それは、さっき電話を切り際にでの事。



『俺、お前と別れるつもりはないよ。

例え冗談でも二度とあんなこと

言ってくれるな、約束出来る?』



と言われたからだ。





「はぁあ……」




ヤバイ、どうしよう。



俺、嬉し過ぎて絶対いまニヤニヤしてる。



混み合っていない車中で

顔を上げることが出来ないまま

監督の待つ駅へとバスは走り続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ