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真実は別の所に


ヤバイ、また話がそれてる。



その件は後回しで良いというか

いっそあやふやなままでいたいというか、


……ハッキリ聞くのが恐ろしい。





で、どう切り出そう。



突然の実家への誘いと、

超存在感を醸し出すお父さんの所為で

あやふやになりかけていたけど、

俺が今日監督に会いに来た目的はこれじゃない。



昨日のメール、意味不明なレスの理由。



昨日の結婚式のこと。


様子がおかしかったことも。




その為に俺は今ここにいるんだ。




「…………あ、その」




なのに、


いざ再び二人きりになったものの

なかなかその話を言い出せない自分に

イライラしてくる。




「どした?何かあった?」



「いえ、特には」



嘘つけ。



聞きたくって仕方ないくせに。




「ふーん……」





俺には聞く権利あるんだ、聞けって。




「あーっと!」



急に出された監督の声に

ビクッと心臓が跳ね上がった。



「な、何ですか、突然」



「そーいえばさ、

昨日結婚式に行ってきたんだ」



(え……?)



いきなりその話題をそっちから

ふってこられるとは思わなくて

内心バクバクしてきた。




「参ったよ、ホント。

なんだって披露宴とかああも長いかねぇ。


知り合ってから今までのエピソードとか、

待ってました~とか思って聞く奴とか

いねーだろって事を永遠と語られてもなぁ。


親への手紙も何故わざわざ他人の前で

公表しなきゃならないのか正直意味が分からん。

アレさ、前日までに渡しときゃ良いのにって

いっつも思うんだよね、なぁ?」





「さ、さぁ俺は行ったことないから

よく分かりません……」



それは本当の意味で監督が退屈で疲れたよ的な

発言なのか、それとも例の友人だったから

そう思ったのか、慮るのに一杯で

内容自体が頭に入ってこない。





「……夕べ遅かったんですか?」



「うん、三次会まで連れて行かれそうに

なったのを必死で抜けてきたけどな」



「疲れてたところにメールすみません。

無視してもらって良かったのに」



思ってもいない言葉がつい口を出てしまう。



「や、あんだけメールでお叱りを

頂いたらそりゃ返しておかないと後が怖いからな」



監督の軽い冗談じみた言い方さえ

深読みしそうになってる自分がいる。



「……すみませんでした」




「だから謝るなって。

ホントは俺も酔っていたから

内容はあんま覚えてないんだ」



「…………。」




そんなに酔う程辛かったって事?



俺が俯いたまま黙り込んでしまうと

監督は何やらゴソゴソと取り出してきて

目の前にドンとデジカメを置いた。



「見る?昨日の結婚式の分が入ってる。


俺のレアな正装姿も

どっかにあるから探してみてよ。

じゃ俺、コーヒー入れ直してくる、

ソレゆっくり見て感想聞かせて」



「いや、俺は――!」



良いですって断ろうと思ったのに

監督は返事もきかずふすまを閉めて

出て行ってしまった。



「…………。」



恐る恐るデジカメを手に取ってみるけど

それに目をやる勇気がない。



見たくない。



その人が俺に少しでも似ていたらどうしよう。



……代わりだって認めたくない。




「…………。」




ダメだ!バカ自分の目で確かめろよ。

似ていたからどうだっていうんだ、俺は俺だろ。



しばらくの葛藤の末、

覚悟を決めてボタンへと手を伸ばした。











「どうだった?全っ然似てないだろ」




いきなり声が聞こえて驚き振り向きかけたところを

後ろから覆い被さってデジカメを持ってる手に

監督の手が上から重ねられた。



「ずっと気にしてた?」



監督の体温が温かい。



だからかもしれないけど背中に感じる熱の所為で

ドキドキが止まらなくって、さっきから

心臓が破裂しそうに痛い。



「……してません」



するに決まってるでしょう。



「ゴメン、余計なこと言ったな」




「だから、してないって……」




「安心していい、俺の中には

お前以外0.1ミクロンだって存在してないよ」



俺の手に被せられた手ごと抱きしめられた。




クサイ台詞吐かないで下さい。


免疫無いから反応に困るんです。




「好きだよ、岩倉」



「……か」



監督の吐息が首筋にかかる。





本当、この時点で黙って

余計な事を言わず終わっていれば……





恥ずかしさで誤魔化さず

素直に嬉しさを噛み締めていれば

良かったんだと何度後悔したか。




でも俺は―――



過剰すぎる照れのあまり

話を逸らそうとその話題に触れてしまった。



……黙っていれば知らないままでいられた。



監督の真意が別にあるとか気付かずに済んだのに。


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