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誰か……まともな人はいないのか(震え声)

「付き合ってもらって悪かったな、

月に何度かは顔を見せないと

家に押しかけてきたり、夜中に電話口で

泣かれたりと色々面倒で」



「はぁ……」



そんなメンタルでよくプロ棋士やれてるな。



「でも碁を打ってる時だけは

人が変わるんだ、俺にも容赦ないよ」



そんな俺の考えを見透かしたように

監督は付け加え、アハハと笑った。




「そうなんですか。

なんか色々大変そうですね」




「まぁ、今回は別の理由もあったし」



不意に顔が近づいて額にキスをされた。



「なっ!?」



「お前を紹介しておきたかったから、恋人だって」



カァァァと顔が一気に熱くなった。



「ダメ、だった?」




「…………ッ」




ソレ……わざわざ聞く?



第三者、しかも相手の身内に

堂々と言ってくれたとか

メチャクチャ嬉しいに決まってるでしょう。


でも、きっと言えばすぐ調子に乗るから

迂闊に返事できないだけで……。





「……でもなさそうだな」




「!?」



正面切って片肘ついたまま満面の笑みを

いつもと雰囲気がまるで違う妙に爽やかな

感じでやられたら何か気恥ずかしくなって

思わず俯いてしまった。




計算か?計算なのか?



いや……そんな器用なこと

出来る人だっけ?この人。




「岩倉ってホント可愛いなぁ」





(く……悔しいっ)




この人、多分わかってて聞いてる。




悲しいかな言い返せるだけの経験が

こっちにはないのを良いことに

俺がどんな反応するか楽しんでる余裕が

垣間見えて余計に腹立たしい。



ムカつく、マジでムカつく……。




「手!重いんでどけて下さい」



「やーい、照れてるぅ」



「こ、子供ですか!?アンタは!」




抱き寄せられて、そういう素直じゃないとこが

またイイんだよなぁと笑いながら言われても

全然嬉しくなんてないですよ。







「あ、の~~~~


お茶、冷めるけど。

どうしたらいい?」





「え?うわぁ、ちょ!」



襖の開いた隙間から監督のお父さんが

チラチラ様子見をしているのが見えて、

俺が咄嗟に監督から離れようとしたのに

逆に強く抱きしめられた。



「父さん、悪いんですがご覧のとおり

取り込み中なのでそこに置いててくれませんか?

後で居間に顔を出します」



「了解!待ってるから~邪魔したね!」



と、ピシャリと襖が閉じられ

ドタドタと廊下を走る音が聞こえた。





焦った……実に心臓に悪い。



いつから居たんだろうか?


確認するのすっごく怖いんだけど。




「い……良いんですか?」



「何が?」



何がってこの状況全部ですよ。



「息子が男とこんな――」



「別にヤッってたわけじゃなし、

イイんじゃない?」



「や……」





全然よくないっっ!!



そういう問題じゃないでしょう?



少し羞恥心とか、いやそれ以前に常識一般を

覚えたらどうなんだろうかと

いってわかる人なら俺だって言うよ!



一般モラルを何処から教えなきゃいけないのか

途方にくれますよ、ええ。




「それより今日、夕食食っていくだろ?」



「いえ、結構です」



「なんで」



「も~なんででもですよぉ、ハハハ」



と、ニッコリ笑った顔の筋肉が

痙攣しそうだ。




言わなきゃ分かりませんかね?



これ以上ここにいたら貴方がた親子の常識に

巻き込まれて自分の感覚までが

狂いそうになるからでしょうが。






「そうか、残念だなぁ。

兄さん、ご飯作るの楽しみにしてたのに」



「お兄さんが?ご飯を?」



「そそ、料理が趣味でさ、

うちは毎食兄さんが作ってるんだ」



「へぇ、それは凄いですね。

所で監督に似てるんですか?」




「ん?お前会ったんじゃないの?」




「え?何時」



?????????

今日の流れのどの辺りで登場してましたっけ?



「どうやってこの部屋に辿りついた?」



「女の人に案内されました。

お弟子さんですか?」



「いや、うちは女流棋士の人はいないから」



「お手伝いさん……」



「いないよ」



「お母さん……」



「海外旅行中」





「…………。」






えーっと、




これ以上、もう何も聞かない方が良い……よね?



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