戦闘員投下
「お~~い、皆頑張れよぉ~~~」
その陽気な声にうちのチーム皆が
固まってしまった。
そしてヨイショと立ち上がって
どこに行くのかと思いきや
敵陣の監督の所に向かって歩き出した。
(ええええ???何しに????)
もう先生の言動に釘付けで
試合どころじゃない。
腰掛けたまま立ち上がりも
腕組みさえ崩さない相手監督さん。
先生が一方的に話しているようにも
みえるけど何話してるんだろう。
余計なこと言ってなきゃいいけど。
子供を見守る親のようになんで俺が
ハラハラしてなきゃいけないんだよ。
それにしても、長くないか……?
(あ……)
やっと話し終わったのか
先生はノロノロと戻ってきた。
「何話してきたんですか?」
「おたくの生徒さん達は元気が
有り余っているようですね、大変でしょう
ってくらいかな」
そんな一言をわざわざ?
その割に長くなかった?
「やっぱりな、
そうだと思ったんだよな……クク」
突然クスクス笑い出して気味が悪いったら。
「…………は、はぁ。
向こうは何とお答えに?」
「それがさぁ」
タイミングよく前半終了の笛が鳴って
その続きが聞けなかった。
此処で漸く日野も到着し、
オイ、なんで始まってんだよ?
等と文句をブーブーたれている。
……もうこれで本格的な乱闘で決まりだなと
日野以外の誰もが腹を括った作戦会議の
終了間際、先生が油を注ぐような事を
提案してきた。
「後半戦、メンバーチェンジで
白刀田と日野を投入する。
キャプテン、誰と交代させるか決めて」
「え?で、でも!!」
「いいからいいから、頼むよ」
そう伝えるとさっさと自分の
場所へと戻ってしまった。
え?ここでまさかの戦闘要員投下!?
血気盛んな二人を入れれば血を見るのは
明らかなの、いくらボケてる先生でも
流石に分かるでしょうに信じられない。
それは名前を呼ばれた以外の全員が
同じ思いの様で互の顔を見合わせている。
第一、日野はまだレギュラーで出るような
選手でもないのによりによって
この試合に出すとか……
「おっ!マジ出れんの?
俺、アップ出来ているから
いつでも行けるっスよ」
さっきまでの事情を知らない日野は
皆の動揺に気付いてはおらず
やる気満々で軽い柔軟をしている。
「イイんじゃね?先生が決めたんだろ。
やってやろうじゃないの」
白刀田先輩も別の意味でやる気だ。
「………………」
特殊部隊の二人を除く他のごく普通の
部員一同はその様子を複雑な思いで
見ていたが、恐ろしくて口には出せず、
縋るように譜都先輩がどう決断するのか
固唾を飲んで身構えた。
「仕方がない。
相手につられる事のないように
正々堂々と俺達は戦おう」
「戦い……ラジャー」
「戦う、良い響きッスね、キャプテン」
「あ……」
譜都先輩。
ワードチョイスしくじりましたね。
そこはプレーしようでいけば良かったのに
恐らくは二人の戦闘部員が目の端に
チラついた所為で……
実に惜しい、ドンマイです。
いざ後半戦が始まると懸念された事態は
起きなくて……いや、それで良いんだけど。
前半戦暴れに暴れていた向こうの戦士達は
何故か普通にサッカーをしている。
いやいや、本当に良いんだけどね!
「……………………」
やっぱ、敢えて言おう。
どうした!?君達???
何も知らない日野以外は
きっと狐につままれた気分で
モヤモヤしてる筈だ。
それもこれもこの人が
向こうの監督と話した所為だと踏んでいる。
「先生、さっきの続きなんですけど
あちらさんとどんなお話を?」
「生徒だった」
「へ?」
「お前達と同じ生徒、三年だってさ」
「それ本当ですか?」
マジマジとそちらを見遣るとやはり堂々と
構えててサングラスをしてる姿は
とてもグランドで走ってるヤンキー達と
同じ生徒とは思えない。
「うん。生徒で監督してるってことは
あのヤンキー達を牛耳って
指示できる立場にあるって訳だ」




