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現実を見て下さい!


予ねてより決まっていた近隣高校との

ただいま交流試合真っ只中。


スコアは1-2。



「そこだ!!いけいけ!!」



「もう一点!もう一点!」



盛り上がってるのは

あくまで敵高校の応援団。


折角うちの学校でやっているのに

此方は応援者も少なければ盛り上がりも

イマイチ欠けている。


ボール所持時間もシュート回数も

断然向こうの方が多くって

攻めている時間の長い事長い事。



地区大会で一点差で去年負けて

それ以来と聞いたけど今となっては

実力自体、俺の目から見てもあちらさんが

断然上に見えてしまう。



大体、試合前にちゃんと作戦とか

監督として立てないで譜都先輩に

丸投げしてるからこんな事に……


チラリと横を見ると、先生は神妙な面持ちで

グランドを見つめてる―――が、

その視線はボールも選手も追っていない。


しかも何だかブツブツと

独り言まで言っている。




「場を荒らす為に

もっと深く打ち込まないと」



(……ん?敵陣への切り込みのこと?)



「此処で手詰まり、クソッ、死活問題か」



(は?ゴールの……かな)



「あとはヨセで……」



「………………」



ダメだ!!……もう……先生も自分も

フォロー出来なくなってきた!!!


もはや囲碁だろ!!!ソレ!!!!




何事かと耳を傾けてみれば

クッソくっだらない!!!!


大事な交流試合中になんだって 

目を開けたままエア囲碁しますかね???



「王手!」



隣のイラつく大人の額を

ペシッと平手打ち。



「イテっ」



「そろそろ正気に戻って下さいよ、

現実逃避は帰ってから存分にどうぞ。

てか、何か指示しろ!負けてるだろ!!」



「……囲碁に王手ないし」



「どっちでも良いです。

ていうか、この試合終わるまで

囲碁の“い”の字も口にしないで下さい。

じゃないと二発目が来ますよ」



「ヤレヤレ手厳しいな」



それをマトモっていうんですよ、

世間一般ではねっっ!!!



“ピィィィィィィ~~~~~~”



丁度ここで前半終了のホイッスルが

鳴り響いた。




先生は徐に立ち上がって、てくてく

歩いていく姿を見て戻ってくる皆を

激励に行くと思いきや、



「譜都~~作戦通りにやんないの?」



とか言い出した。



え?作戦立ててたっけ?

俺は全然聞いてなかったんだけど。



そう思ったのは俺だけじゃないらしく

皆、え?っていう感じで

周囲にお前知ってたか?と

口々に聞いている。



その中、当の譜都先輩だけは

申し訳なさそうに一歩前に出て

先生に頭を下げた。



「――あの……先、いえ監督、

アレはやっぱり無理です」



「何で?」



「なんというかアクロバティック

過ぎるというか、非現実的というか……

そもそもうちにオーバーヘッドで

シュートできる人間がいません」



って、どんな作戦立ててんだよ!


この皆の異様なザワザワを

収めきれるんでしょうね?



「マジで?」



アンタがマジか!?ですよ。

なにメチャクチャビックリしてる顔

してるのか……

その表情にこっちがポカーンです!


大体何のマンガ?テレビ?を観て作戦に

取り込もうとしたんだ?



ザワザワが一気に大きくなって

ほら見て下さいよ、相手チームが

何事かと身を乗り出して見てんでしょーが。




―――この人、多分碁以外バカだ。



「せめて俺だけでもと

一応、練習はしてみたんですが……

期待に添えず申し訳ありません」




して……みたんだ?



可哀想に巻き込まれて。


真面目な譜都先輩の事だきっと

遅くまで自己練していたんじゃないかと

思うと涙が出てきそうになった。



それに引き換え、このテキトー男は、

あ、そう。んじゃ仕方ないな、の一言で

片付けちゃったよ、オイ!コラ!先輩に謝れ。




「じゃさ~プラン15でも行っちゃう?

あんま気乗りしないけど。


向こうさ、20番のMFが補欠の選手なのかどうか

知らないけど司令塔として機能してないなぁ。

折角足が早い9.11,15番がいるのに

生かしきれていから無駄走りが多いだろ、

あれじゃ後半途中から持たないだろうな~」



確かに資料を見たところ、20番の選手は

一度として試合に出たことがないみたいだ。

もしかしたら今回が初めての起用かも

しれない。


視線を上げると譜都先輩と目が合って

俺が頷くと先輩もまた頷いた。



でさ、と紺里先生の話は続き

俺達は円陣の中の先生へと視線を戻す。



「相手さん攻めに重点を置いてるから

DFの動きがイマイチだと思わない?


俺的に9,11番にマークをつけて

右サイドからのコーナーキックを狙えば

面白い展開になると思う。

あ、その際DFの7番の動きは注意な。


付け加えて言うとGK左上が苦手そうかも。

そっちに打った時に限って反応が遅い、

怪我でもして庇ってるとしか

思えないくらいにはさ」


題して“GOGO!相手の弱みを突こう作戦”

口に出すのも恥ずかしいプラン15と

名付けられた作戦を元に誰がマークに

つくか早急に議論した後、具体的な

フォーメンションと役割を早口で告げた時、

後半開始合図が鳴った。



作戦が功を奏したかどうか明言を

避けるとしても無いよりは断然マシだった

とはマーネージャー視点からの感想。



一応、事前資料見てたんだな……当然だけど。



だったら長考してないで、さっさと

アドバイスすれば良かったのに。





これは余談だけど、

多分プラン1~14は無かったと思う。


さり気なく15といのはきっと“囲碁”と

言う意味だとは今回だけこの勝利に免じて

不問にしておきますよ。


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