僕の愛で貴女を絡め捕らえることが出来たなら・・・
感想ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。
やぁ
どうしたの、暗い顔で…
まるで僕みたいじゃないか
そんなに真実は受け入れがたかった?
どうして居るのか?
ここは閉ざされた島の最奥部
火の灯らず、水も流れ込まず、大地とは切り離され、光も届かない。
でも、見ても分かるんだろ?
僕で満たされているじゃないか?
僕は闇。
他が何も存在できない、彼女の領域に唯一入り込むことができるんだ。
彼女の中に、僕がいる。
ふ、ふふふふふふふふふふふふ
ここは、僕と彼女のユートピア。
ずっと、ずっと、
彼女を見ていることができると思ったのに、君たちときたら騒がしい奴らを島に住まわせて、最近なんて自分たちが居ついて・・・
邪魔でしょうがないったら・・・
ここは、静かで、穏やかで、彼女の香りに包まれた最高の場所だったのに。
僕はただ、静かに彼女の寝顔を見ているだけで、傍に寄り添っているだけで、何にも勝る頂に上れたのに・・・・
あぁ、そうだよ。
僕は彼女を愛していた。
自由を愛し、誰よりも人を愛し、誇り高く、美しい、風の精霊王
僕を消し去ろうとする光
僕を切り裂こうとする火
僕を嫌って無視する水
僕を理解し暴こうとする、君
彼女は違う
気の向くままに、通り過ぎるように。僕に会いに来てくれた。
気が向いたら話しかけてもくれた。
光の奴が騒いだ時には、夜の安らぎは大切なものだと僕なんかに頭まで下げてくれた。
そうだね。
そういえば見られていたね。
僕と彼女の・・・
仕方ないよ。
彼女は自由に世界を巡って人々の生活を見るのが何よりも好きだった。
そんな彼女の前に立ちはだかって、彼女の時間を無駄に拘束しようとしたのだから。
蹴り飛ばされるのも、殴られるのも、
あれは、彼女から僕への愛の仕置きなのさ。
痛みなんて感じなかった。
だって、あれは愛だから。
むしろ、あれは・・・・
あぁ、今思い出しただけで喜びが身体の奥から溢れていくよ
どうしたんだい?
なんだか顔が引きつっているよ?
先ほどの衝撃をまだ引きずっているのかい?
えっ?
あの後に、他の衝撃なんてあったかな?
まぁ、君にしか分からないものもあるだろうね。
なんたって、島が崩れ始めたんだものね。
今は何とか留めているみたいだけど、無知なガキと甘ったれなガキがいるだけで何が出来るっていうんだか。
高位精霊だけじゃない、上位精霊も去っていったね。
そうだね。
高位に次ぐ上位たちは確固とした個を確立しているから、彼女の元に去ろうと考えてもしょうがない。
個を持たないもの、近くにいすぎてガキに捕まってしまっているもの、
そして愚か者。
そんな弱いのだけでは、この島を支えるなんて到底無理だ。
君には聞こえないだろうね。
闇の中に蠢く、声。
人間たちは僕が死を司っているなんていうけど、僕に出来るのは強い思いのせいで世界に還ることができない魂を見守ることくらい。
今、溢れているよ。
悔しさ、恐ろしさ、怒り、
あまたの負の感情によって還ることが出来ない魂たちがね。
強すぎる死者たちは、時には生者を動かすよ。
この荒波に、確固とした形をもたない下位精霊や意志が脆弱な中位精霊は耐えられるかな?
風だけの問題じゃないよ?
僕たちも、だ。
人としての形を得ている彼女は大丈夫だろうね。
そして、彼女の元へ許しを乞いに参じるものたちも大丈夫。
だって彼女はとても優しいからね。
全てを投げ打って許しを乞う、しかも自分に忠誠を誓うかつての部下ならなおのこと。
あの、柔らかな腕の中で抱きしめて守るよ。
あぁ、ねたましい・・・
僕も、彼女の前で跪いて許しを乞えば抱きしめてもらえるだろうか
それとも・・・近づくなと蹴り飛ばされるんだろうか
それとも・・・ないものとして目も向けられないのか
あぁ、選べない。
僕には選べない。
どれもが、彼女の愛にあふれているから。
どうしよう
どうしようか
どうしたらいい?
なんだ。
知識の王と言われる君が答えを与えてくれないのか?
そうだね。
これは愛故の迷いだ。
堅物の君が答えを持っていなくてもしょうがないね。
でも、確か君も恋をしたことがあったじゃないか。
それとこれとは違う?
そんなことはないよ。
君のも、僕のも、同じ愛だよ。
だから、この胸の高鳴りを君が忘れているだけさ。
あぁ呼んでいるね。
あんなに大きな声を出さなくてもいいのに。
彼女が僕らに話しかける時は、囁くように、さえずるように、していたのに。
本当に子供だね。
喚けばいいと思っている。
知っている?
あの子供はね、僕に言ったんだ。初めて会いに来た時に。
『自分から関わろうとしないなんて駄目だ』
『貴方が関わろうとすれば皆が手を差し伸ばしてくれる』
『堂々としていれば皆が愛してくれる』
僕にそれを言うんだよ。
そんな程度で人間が受け入れてくれるなんて本当に考えたのかな?
僕は闇。
道だけでなく、己自身さえも見る事が出来なくなる程の漆黒の闇。
月も星も、足元を照らす灯火もない夜を誰が無邪気に歩いて笑うというのか。
悲しみや愛おしさで心を残す死者なんかより、怒りや憎しみ、狂おしさで心を残す死者が多いってことを知らないのかな?
馬鹿とガキって怒りを通り越して、呆れるよね本当。
さぁ、行こう。
泣き喚いているのを、水と火が宥めているみたいだ。
『君は悪くない』
『これは、あいつが残した呪いだ』
だって。
笑えるよ。
彼女がそんなことするわけないじゃないか。
・・・そんなことをするんなら、それは全て僕が受けたいくらいだ。
だから、なんでそんな変な顔をするんだい?
・・・光は来ていないね。
よかった。
もう、島の最奥にくることもないね。
彼女と二人きりだった、大切な場所だけど・・・
彼女がいないなら意味もない。
例え、残り香だけでも幸せだったけど
彼女本人がいるなら、香りだけなんて我慢できない。
まして、それを取るに足らないのが纏っているなんて・・・
・・・イラつく・・・
あのまま、彼女と二人っきりだったなら・・・
世界の終わるその時まで、ここにいられたのに・・・
でも、きっと途中で駄目になっていたかもしれないね。
僕が愛しているのは、人形じゃないから
しゃべってくれる。
笑ってくれる。
手や足がすぐに出る、ちょっとお転婆な彼女だから。
ねぇ、地
君は
後悔しているの?
懺悔しようとしているの?
それとも
断罪したいの?
誰を?
『地の精霊王』
エザフォスって名前です。ギリシャ語で大地です。
人間が、呼びつらいって名前をくれました。
人と交流が多いと名前がもらえます。
気に入れば、ずっと使います。
『闇の精霊王』
こんなんにしちゃいました。
基本、引きこもっていたのと、出てきても猫をかぶっていたので、元風の精霊王以外これを知りませんでした。
配下の精霊たちは、似たような性質4割、ドン引き2割、生暖かい目で見守っている3割、指差して笑っている1割な感じです。
そのうち、配下の精霊たちも書いてみたい(笑)