狼少年<ルカ>
「見返してやる」
神様なんて信じていないが、幸運には感謝している。
俺は狼男でルカという名前を死んだ両親からもらった。まだ、子どもだが、早く一人前になって、立派な人物になりたい。俺をバカにしていた魔法使いのやつらや、教会にいたやつら、町であったやつら。あいつらを見返して、「狼男だから」なんて言わせない。
最近、俺は住処を冷えた地べたから暖かなベッドに移すことができた。
孤児院の施設から逃げてきたロクデナシで、しかも狼男と知っても俺と住みたいなんていう奴かいるなんて思わなかった。普通は、子どもであっても、こんな得たいなしれない危険な人間を引き取るなんて、正気の沙汰じゃない。
世間は「魔族と人間は平等」だと謳うけど、実際は「得体の知れない」魔族より「人間のほうがいい」に決まっていた。魔族の中でも、狼男なんて危険極まりないと思われている。俺は、狼になったことはあったけど、誰も噛もうとしたことも噛みたいと思ったこともない。誤解されているのだ。魔法使いと違って。
魔法使いは、魔族の中で見た目も中身もまんま人間で、唯一の人間との違いは「魔力が使える」ことだけだ。そして、魔力で魔法が使える。狼男や吸血鬼も魔力はあるけど、魔法が使えるやつもいれば、使えない奴もいる。使えるやつは優秀なやつだけで、ほとんどは使えない。俺も、その一人だ。それに、魔族の中でも一番数が多いのが魔法使いだ。だから、魔族社会は主に魔法使いが動かしているといっても過言じゃない。施設もそうだった。ほとんどが魔法使いで、他の魔族や獣人はいたが、狼男の俺は一人だけだった。
それに、施設の規則かなんかで、俺は危ないから、魔法使いからも他の魔族からも遠ざけられた。アイツらは俺のことを怖がったし、嫌っていた。年上の奴らなんて特にムカついた。長く施設にいるからって偉そうにしてくるし、押し付けがましい。俺は、友達なんか欲しくない。早くこいつらを見返してやりたかった。そして、俺は決意した。ここでは俺はダメになる。そう思って施設を出た。
それから半年は町や教会を転々とした。結局、何も変わらなかった。むしろ、ひどくなった。まだ人を噛んだことはないが、俺は狼男のはしくれ。いろんな奴に追いかけられる羽目になった。最後に、ダウンタウンで追い詰められ、戦って地べたで死ぬ覚悟した時だった。
エイベルさんに出会った。あいつは吸血鬼のくせに変なやつだった。だけど、いやな奴じゃなかった。悪い奴だったが。そして、色々あって俺はエイベルさんに引き取られることになってた。
「ビスケット買ってきたぞ」