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花と飴  作者: ふかとも
20/20

19場面 舞踏会(後編)

この場面から新しい場面に変わります。第2幕の幕開けです。

さて、後5分で舞踏会が始まる。

「遠志?大丈夫?」


可視さんが心配そうに僕に声をかけてくれた。僕はいつの間にか不安な表情をしていたようだ。


「大丈夫です。なんとか…」


僕は深呼吸をしながら気持ちを落ち着かす。実際僕はあまり大勢の前で何かをやるという事をした事が無いので物凄く緊張している。


「ちゃんとリードしてよ。男でしょ?」


可視さんがおどけた感じで言う。

ここは

「はい!」と言いたい所だが、今の僕には言えそうにない。

何か会場からブザーが聞こえてくる。

僕は緊張もピークを迎え、自分の心臓の音が聞こえてくる。その代わり他の音が何も聞こえない。何も見えない。


『遠志は目の前が真っ暗になった』


『遠志にアイテム(可視さんの拳)』


「へぶっ!」


可視さんの拳が僕の腹部にヒット。

あ、今腹部がボキッ!っていったような…。


「シャキっと!」


可視さんの強烈な一撃が視覚と聴覚を回復させた。


「ほら!スタート!」


可視さんが僕の体に手を回す。こういう言い方すると何か…。


「わわっ!」


僕は可視さんに引っ張られ、心の準備が出来る前に会場に出された。

音楽が流れ始める。僕も慌てて可視さんに手を回す。そして僕達は踊り出す。

まるで蝶のように舞い、ハチのように……じゃなくて……まぁとにかく滑らかに踊る。

可視さんはやはり上手い。きっと小さい頃から教え込まれてきたのだろう。

僕は…さっき田牧さんと練習した甲斐があり中々形になっていると思う。


踊りも終わりに近づいた頃見ていた観客の一人の男が立ち上がった。

あぁ、きっともう終わるから帰るんだろうなぁ。

何て思って見ていたら何やら段々僕達の踊っている場所に近づいてくる。そして懐に手を入れ、黒い物体を……銃?

男は銃を僕達に向ける。

ちょっと待て!何だいきなり?

気がつくと僕は可視さんを僕の後ろに隠していた。


男が引き金を引く。何やら僕には全てがスローに見える。

他の観客は皆会場から逃げ出している。

僕、こんな短期間に二回も死ぬのか?

そして、銃弾は僕の肩辺りに命中した。


「うわっ!」


強烈な痛みが僕を襲う。そして男がもう一度引き金を引こうとする。

僕は肩を射たれただけだかどうやら可視さんが腰が抜けているらしく立ち上がる事が出来ないらしい。という事は僕もここから動く訳にはいかない。僕は目を閉じた。


「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」


銃を持っている男と僕が声のするに目を向ける。

そこには啓が居た。啓は男に飛び蹴りを喰らわした。男はバランスをくずし、銃を落としてしまい、僕の方に倒れてきた。


「遠志!」


僕は啓の声である事を思い出す。僕は眼鏡を外し、可視さんに眼鏡を渡す。


「ちょっと持っててくれ」


一言そう言って僕は男に向かっていく。可視さんはまだ驚いているらしく頷く事しか出来なかった。


「おい!何で俺達を狙った!?」


僕は立ち上がろうとしている男に質問する。


「瀬倉グループの娘。瀬倉可視。そいつは俺が入っている組織から殺せと任務が下った」


「何?」


「俺の組織は殺し屋でね。俺は下の方の人間だから何を依頼されたかよく知らないが、瀬倉グループをよく思わない会社があるんだろうな」


「会社?可視さんは関係ないだろ!」


「いや、そのお嬢さんを殺せば瀬倉グループの社長は悲しみのあまり破滅の道を歩むだろう」


「会社同士の争いに可視さんを巻き込むなよ!」


男は立ち上がり構えた。


「とりあえずお前には死んでもらおう」


「やってみろよ!」


僕も戦闘態勢に入る。


「ちょっと待て!(本日二度目)」


啓が僕と男の間に入る。


「俺の存在を忘れんなよ!そうじゃなくても最近扱い酷いんだから!」


啓はちょっと涙ぐんでいる。啓と僕は二人横に並んだ。


「二対一だぜ?おっさん」


啓がおちょくった感じで言う。


「ふん!餓鬼が増えた所で何も変わらん!」


「やってから後悔すんなよ!遠志」


啓は僕を見て頷く。僕も同じように頷く。そしてちらっと可視さんを見た。


「「いくぞ!」」


僕と啓は同時に叫んだ。そして同時に走り出す。


「オラオラオラッ!」


啓が連続パンチを繰り出す。男はそれを全て防御。僕は男の足を蹴り飛ばす。男はジャンプしてかわした。


「何だあいつ?本当に人間か?」


啓が呟く。


「多分…」


僕が言う。

男は僕に蹴りを啓にはパンチを喰らわした。


「のわっ!」


「くっ!」


啓と僕は少し飛ばされる。


「まだまだ!」


啓が叫んで突っ込んでいく。その後に僕も続く。

僕と啓の見事な連繋プレイ。徐々に男に攻撃が当たっていく。


「これで終りだ!」


啓が叫び、僕と啓は男を挟みうちにして渾身のパンチ喰らわした。


「ぐふっ!」


男は少し血を吐き、その場に倒れた。


「ハァ…ハァ…。なんなんだこいつ?」


啓が息をきらしながら言う。


「分からない。だけど可視さんが危ないみたいだ」


さっきの男の話ではどうやら会社同士の抗争に可視さんが巻き込まれたようだ。


「そういえば可視さんは大丈夫か?」


啓が僕に諭すように言う。僕はその言葉を聞き慌てて可視さんの居た方を見る。


「居ない…」


「何!?」


さっきまで可視さんが居た所にはもう可視さんの姿が無かった。


「可視さん!何処だ!可視さん!」


「くっ!俺達がこのおっさんとの闘いに熱中している間に連れ去られか!?」


啓が少しうつむく。


「可視さんを探そう!」


僕が言う。


「探すったって何処に居るか見当もつかないのに探せるかよ!」


「あ…そうか…」


僕は少し気が動転していたようだ。冷静に考えろ。

その時田牧さんが現れた。


「お嬢様を拐った奴等に心当たりがあります」


「本当ですか?」


僕と啓は田牧さんに近づいた。


「今、瀬倉グループと一番強く争っているグループがあります。名前は『桐生グループ』」


「龍が〇くかよ…」


啓が呟く。


「桐生グループは度々瀬倉グループと対立していましたが、最近今までに無い程の争いが起こったと聞いています」


「という事は可視さんは、その桐生グループに拐われた可能性が高いと?」


僕が質問する。


「はい。そういう事です」


「じゃあそいつらの所だな!行こうぜ!」


啓が何の考えも無しに言う。


「お前…。相手は企業だぞ?たかだか家計という経済の単位で表される僕達が立ち向かうには少数では無理だ」


わざと難しく言ってみる。


「は?家計?企業?何だそりゃ?」


案の定だ。少し前にテスト勉強を可視さん達に教えてもらった時に中学の時の公民も結構教えてもらっていたから使ってみたくなりました!


「とにかく!仲間を集めよう!」


「おっし!じゃあ片っ端から知り合いにあたってみるか!」


啓が走って行ってしまった。あいつ…まだどうするかも決まって無いのに…。

まぁ最近あいつの扱い酷かったからなぁ…。その反動だろうな。



「田牧さん。その桐生グループがある場所を教えて頂けませんか?」


「はい。桐生グループの場所は少し前に遠志様と可視様が行かれました遊園地の隣です」


「はい!?本当ですか?」


「はい。本当です」


驚いた…。まさかあの遊園地の隣とは…。しかし、桐生グループという名前の会社が遊園地の隣にあるとは…。何か合わないなぁ…。


まぁそんな事は放っておいて…。仲間探しか…。後、知ってる人…愛理さん、紗香、馬鹿副校長…。さすがに女の子には頼めない。という事はあの馬鹿…。僕って友達少ないなぁ…。


とりあえず学校に行ってみるか…。

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