9場面 遊園地で大はしゃぎ!?(後編)
今回はちょっと長めです。
電車にゆらりゆられて30分。まぁまぁ長い時間可視さんの隣に居た。
緊張したが可視さんから話しかけてきてくれたのでなんとかやり過ごす事が出来た。
さぁ次の駅が降りる駅だ。
「えぇ〜、次はぁ〜」
とあの電車のアナウンスが流れる。
「えぇっと…う〜んと…ゴホン!…にとまりま〜す!」
えぇ!?駅名忘れたの!?なんとかごまかそうとしてるけど…。
しかも最後は何か自信満々に言ってるし…。
まぁ誰も気にしてる人が居ないのが凄い。
それは可視さんも同じだ。
「次が…駅だって!」
可視さんも駅名覚えてないんだ…。
「#**&&駅ですよ」
「わっ…分かってるわよ!そんな事!」
僕に指摘されちょっと拗ねる可視さん。拗ねた表情も可愛いなぁ…。
「遠志!何ぼぉ〜っとしてんの!」
「え?」
もう電車の外に可視さんは居た。しかも…扉が閉まりかけてる!?
マズイ!!僕は猛ダッシュで電車から降りようとした。
(ガッチャン)
扉に挟まれた…。しかも顔しか外に出ていない。しかし、電車はちょっとずつ動き始めた。
「ちょっ…ちょっと待って!」
遠くの方から駅員の声。
「あ…挟まってたんですか?もっと早く言って下さいよ」
「言えるか!気付けよ!」
挟まったまま突っ込みを入れる僕。なんとも情けない…。
(ガッチャン)
扉が開いた。僕は勢いよく外に出る。
「大丈夫?遠志?」
可視さんの優しい一言。電車の中の人達は笑ってる。くすくすと…。
でも!可視さんが心配してくれたからへっちゃらだ!
「じゃあ行きましょうか!」
そう言って歩きだす。
「帰りの電車では挟まれないでね」
「はい…。すいませんでした…」
やっぱり落ち込む僕。
下を向きながら歩く僕。可視さんはルンルン気分で歩いている。すれ違う人達が口々に、
「あの人可愛くない?」
「おぉ!可愛い!」
etc…。
可視さんは何処へ行っても人気者だ。
お目当ての遊園地に到着。僕はまだ少し落ち込んでいる。
「ねぇ!何乗る?」
無邪気な少女がそこには居た。普段よりはしゃいでいて、目がキラキラと眩しいくらい輝いている。
「う〜ん…じゃあ早速怖いと有名なお化け屋敷に行ってみます?」
「そうね!行こ行こ!」
あっさりと同意した彼女。いつの間にか僕の手を引っ張っていた。
って事は今てをつないでる?…。
そう思った瞬間顔が真っ赤になり急に緊張しはじめた。
落ち着け!落ち着け僕!
必死に自分に言い聞かせる。今まで付き合った事も無い男子が初めて女子と手を繋ぎ歩いている。
緊張しない訳がない。
そんな事を思っているうちにお化け屋敷に着いていた。いかにもな感じのお化け屋敷。
「怖そうだね…大丈夫かな?」
さっきまで威勢が良かった彼女が急に怯えている。
ここで僕は良いことを思いついた。それは後々に話そう。
「大丈夫ですよ。僕が憑いてますから」
「漢字が違うのよ!漢字が!余計怖いじゃない」
実は僕はお化け屋敷は案外平気な方だ。だから、今回の遊園地もお化け屋敷目的だというような事を言っていたのであっさり了承した訳です。
さぁ。次が僕達の番、さっき思いついた事は巧くいくかな?
「それでは行ってらっしゃい!」
係の人に元気よく見送られた僕達。
入口に一歩入った。
ここでさっきの計画を実行する。
「お化け屋敷って本当のお化けは出ないんですかね?こういう事すると呼ぶって言うし…」
「ちょっ…ちょっと遠志!止めてよ!」
少し泣き目になっている彼女をよそに僕は続けた。
「実際本物がいても分からないですよね。だって何処にどんな仕掛けがあるのか知らないのに…」
少し微笑みながら僕は言う。僕は典型的なSだ、と自分でも思う。
「……」
彼女はもう無言だ。ちょっと怖がらせ過ぎたか?
彼女は今にも泣きそうだ。
「じょっ…冗談ですよ!ごめんなさい!」
「ばかっ…」
ちょっといじけたように言う彼女の声が可愛いかった。その時、
(ガッシャーン!)
「キャッ!」
「へ?へぶっ!」
何が起こったかというと、お化け屋敷恒例の急に飛び出してくる仕掛けが飛び出してきた所に可視さんが僕を盾にしてその仕掛けに衝突したのであった。
「あ…大丈夫?」
「大丈夫じゃ…ない…です…」
イタズラはするものではない。必ず何か仕返しがくるものだ。
そんなこんなで怖がらせてあわよくば彼女が僕に抱きついてくるとちょっと期待してた僕は逆に仕掛けに抱きつかれたようなものである。
僕の作戦は失敗に終わった。
その後、ジェットコースターに乗り、可視さんがジェットコースターにはまり、20回位付き合わされた。
最後の5回位は店員がもう僕達と目を合わせようとしなかった。
15回耐えてくれただけでも凄い店員だ。
ジェットコースターに時間を費やし、もうお昼の時間。
「お腹減ったねぇ〜。遠志!ご飯食べようよ」
「そうですね…。僕も…もうペコペコですよ」
ちなみにジェットコースターに乗りすぎたせいか視界が回っている。
「あ!あそこなんかいいんじゃない?」
可視さんが指を指した先は中々洒落た感じのレストランだ。
「バイキングみたいですね。ここにしますか?」
「うん!そうしよう!」
二人で中に入る。
「二名様ですか?」
「はい」
僕が答える。
「当店はバイキング形式となっております。制限時間は2時間。お客様には料理を見つけて頂いて…」
ん?何か変だな…あ!
「ちょっ…ちょっと待って下さい!」
「はい?何ですか?」
「今料理を見つけてっていいませんでした?」
「はい。当店は迷路のようになっていて料理は店内の何処かにあります。料理を探しだし、見つかったら料理を持ってゴールを目指して下さい」
「料理が見つかったとしてもゴールに行くまでに冷めちゃうじゃないですか!?」
「ご心配なく!冷めてしまったらゴールで電子レンジでチン!とできますから!」
「いや…対して問題の解決になっていないような…」
「まぁ、面白そうだからいいじゃない。行きましょう遠志」
可視さんが店内に入って行く。
「あ!ちょっと待って下さいよ」
「では、ごゆっくり!」
店員の笑顔が益々僕を不安にさせる。
店内は迷路というだけあり、広い。と言っても真っ正面にいきなり壁があり詳しい事は解らないが…。
可視さんがキョロキョロと辺りを見回している。
「よし!こっちに行こう!」
「え?そんな簡単に決めちゃっていいんですか?」
「大丈夫!あたしの感はよく当たるんだ!任せて!」
「はぁ…。」
でもまぁ、制限時間もあるからここに立ち止まっているよりはましか…。
可視さんがここ右!だとか左!だとか、その指示に従って歩いている。
もう帰り道すら判らない。僕はちょっと不安になった。
その時ちょっといい匂いがした。
「この匂いは…まさか!」
「そのまさかだよ!」
可視さんが僕のギャグに乗って来てくれた。たまにはボケもいいな…。
その匂いがする方へ行ってみる。すると、炒飯が置いてあった。
「いきなりメインディッシュ!?」
「あ!美味しそう!」
炒飯の横にはおぼんがあった。
「これで運んで行けって事か…。」
「う〜ん。あたし的にはカレーがいいな…。」
「でも、カレーがあるっていう保証はないですよ。さっき看板に『食事の種類は日替わりです!エヘッ!』っていう物凄くふざけた事が書いてありましたから…。」
「大丈夫!あたしの鼻がカレーの匂いに反応してる!こっち!」
「あ!ちょっと…。」
可視さんが走って行ってしまったので僕もおぼんに炒飯を載せて着いて行く。
「そこ!」
可視さんが指を指した場所には…なんとカレーが!
「ニュー〇イプですか?可視さん…。」
「いや、コーディ〇ーターだ」
対して違わないと思うんですが…。
それにしても可視さんの感はよく当たる。信じられない程に…。
カレーを見つけてから30分後、ほとんど食事は揃っている。デザートやら飲み物やら…。そして出口発見!可視さんの感だけで来たが30分でこの迷路を脱け出せるとは…。
「お疲れさまでした〜!凄いですねぇ〜!ほとんどの食品が揃う人なんてあなた方が初めてですよ!」
それはそうだろう。
「では、残りの制限時間の1時間30分の間お食事をお楽しみ下さいませ!」
「はい。そうさせて頂きます」
迷路から出ると、そこはもう普通のレストランだ。お客さんが少ないが…。
さて、食事を済ませた後他のアトラクションを色々堪能してもう夜になっています。
「可視さん。そろそろ帰りますか?」
「そうだね。帰ろうか!」
また電車に揺られて家まで帰る。今度は積極的に話しかけてみる。遊園地の話題があるから意外と楽だった。こんな時間が何時までも続くといいと思った。
『遠志くん?これ一応コメディーですよ?そんなに黄昏ちゃ駄目でしょ?』
一々作者出てくんなよ!
全く…このままジャンルを恋愛に持って行こうと思っていたのに…。
『勝手にジャンル変えるなよ!』
分かりましたよ。変えません変えません。
『もし変えたらお前の愛しの可視さんに新しい彼氏作っちゃうぞ♪』
う…嬉しそうに言うな!止めてそれだけは止めて!
『じゃあジャンル変えるなよ?』
はい…。分かりました…。
『宜しい!じゃあね♪』
まぁ…話を元に戻そうか…。
今度は扉に挟まれる事なく駅をでれました。家までの帰り道。
「家まで送りましょうか?」
「いいの?」
「はい。もう遅いですし…ね」
「じゃあ頼みます!」
これで可視さんの家が分かるぞ!嬉しい!
というのは冗談で本当に心配だから送るだけです。
まぁちょっとは嬉しいけど…。
可視さんの家はどうやら僕の家より少し学校から離れた場所にあるようだ。
まぁ僕の家は学校に近い方だから可視さんはちょうどいい距離だろう。
「お!そこに居る可愛い彼女!俺たちと一緒に遊ばない?」
お約束の不良登場!しかもいきなり!
彼女の家まで後少しらしいのに…。
「止めてよ!あんた達みたいな気持ち悪い人とは歩きたくないわ!」
「あぁ!何だと!」
あぁ…。可視さん…そんなに刺激したら…。
「てめぇ!女だからって手加減しねぇぞ!」
と言ってこっちに近寄って来ました。ここで僕が守らなきゃ!せっかく送って行ってる意味がない!
「お前止めろよ!彼女嫌がってるんだから!」
そう言って不良と可視さんの間に割って入る。
「うるせぇ!てめぇこの女の男か!じゃあてめぇからぶっ殺してやる!」
と言って顔面に右フックをくらいました。その拍子に眼鏡が外れました。
「てめぇ…。何しやがる!」
来ちゃった!僕の裏人格!どうやら可視さんの前で眼鏡が外れると性格が変わるみたい…。
でも引き続き表人格の僕の視点で行きます!
「何だこいつ?急に態度が変わりやがった」
「不良共…覚悟しろ!」
そう言って僕…いや、裏遠志は不良共に殴りかかる。一番前に居た不良の顔面に強烈な右ストレート!
「へぶっ!」
不良A撃沈。
「このやろっ!」
他の二人の不良が殴りかかってくる。
一人の拳を止め、もう一人の拳を避けつつ回し蹴り。
不良Bの大事な所にヒット!
「そこっ…反則っ…」
不良B泡を吹き気絶。
そして拳を止められていた不良がもう一方の拳で殴りかかる。
拳が届く前に不良Cの顔面に頭突き!
「はがっ!」
不良Cあっけなく気絶!僕って意外と強いんだなぁ。
「凄い…。」
可視さん絶句!
「ふぅ〜。弱いくせにでしゃばりやがって…。」
裏遠志は自分で眼鏡をかけた。
「可視さん!大丈夫ですか?」
「あたしは大丈夫だけど…。遠志は大丈夫?」
「はい。もう一人の僕は想像以上に強いみたいですね」
「人格変わっても意識はあるんだ…。」
「はい。はっきりと!そこの不良を倒した順番言えますよ」
「いや、いいわ。それより早く帰りたい」
「それもそうですね。じゃあ行きましょう」
それから直ぐに可視さんの家に着いた。
それにしても…でかっ!僕の家も中々でかい方だが、彼女の家はそれの3倍位ある。例えるなら小学校の半分位?
例えが悪くてすいません。
「可視さんの家って大きいんですね」
「うん。お父さんが会社の社長なの!」
「へぇ〜」
「じゃあ今日はありがとね!楽しかったよ!」
「いやいや、こっちこそ楽しかったです」
「じゃあこれは…」
(チュッ)
「お別れのチュウね!」
「あっ…!」
「じゃあね!」
彼女は家の中に入って行った。頬にキスされるの2回目だな…。
今日はいい夢みれそうだ!