中級モンスター戦
若返りの泉で身体を整えたリオは、
小屋の前で深呼吸した。
右手には、
自分で鍛えた赤い刃――紅牙。
(今日こそ……この剣を使って戦うんだ)
エルミナが静かに近づく。
「リオ。
今日は“中級モンスター”と戦ってもらいます」
リオは息を呑んだ。
「中級……!」
「ええ。
あなたが作った紅牙は、
初級モンスターでは力を持て余します」
エルミナは重力調整ドアに手をかざした。
《重力設定:5倍》
「今日の戦闘は、重力5倍のまま行います」
リオは頷いた。
(怖い……でも……逃げたくない)
ドアを開く。
ズシッ――!
重力が身体を押しつぶす。
だが、リオはもう慣れていた。
(いける……!)
白い砂の大地に出ると、
空気が違った。
重い。
冷たい。
魔素が濃く、ざわついている。
エルミナが言う。
「リオ。
中級モンスターは“知性”を持ちます。
初級ウルフのように単純な突進はしてきません」
「知性……」
「ええ。
あなたの動きを読み、
罠を張り、
弱点を突いてきます」
リオは紅牙を握りしめた。
(僕……勝てるかな……)
エルミナは微笑む。
「大丈夫。
あなたなら、必ず乗り越えられます」
そのとき――
ザッ……ザッ……
砂を踏む音がした。
リオは振り返る。
そこにいたのは――
黒い毛並み。
赤い瞳。
初級ウルフより一回り大きく、
筋肉が盛り上がっている。
魔素体ダークウルフ(中級)
「グルルル……!」
リオの背筋が凍る。
(初級ウルフとは……全然違う……!)
エルミナが言う。
「リオ。
ダークウルフは“影魔素”を操ります。
影に潜り、影から攻撃してきます」
「影に……潜る……?」
「ええ。
あなたの魔力感知が試されます」
リオは深呼吸した。
(僕は……逃げない)
ダークウルフが低く唸る。
グルルル……!
次の瞬間――
影が揺れた。
「っ……!」
リオは横へ飛ぶ。
ズシッ!
重力が身体を引きずる。
だが、避けた。
影からダークウルフが飛び出す。
ガッ!
爪が地面を裂く。
(危なかった……!)
エルミナが言う。
「リオ、影を見て!
影が揺れたら、そこから来ます!」
リオは影に意識を集中させた。
(影……影……)
影が揺れる。
「右……!」
リオは右へ飛んだ。
ズシッ!
ダークウルフの爪が空を切る。
(読めた……!)
リオは紅牙を構えた。
(僕の剣……僕の力……!)
ダークウルフが突進してくる。
リオは魔力を剣に流した。
紅牙が赤く輝く。
「はぁぁぁっ!!」
リオは剣を振り下ろした。
ガキィィン!!
火花が散る。
ダークウルフの爪と剣がぶつかり合う。
(硬い……!)
ダークウルフは後退し、
影に溶けた。
「また影……!」
エルミナが言う。
「リオ、落ち着いて。
影の“魔素の流れ”を感じなさい!」
リオは目を閉じた。
(魔素……流れろ……)
影の中で、
魔素が渦巻く。
(そこだ……!)
影が揺れる。
リオは剣を構えた。
「来い……!」
影からダークウルフが飛び出す。
リオは剣を横に振った。
ズバァッ!!
ダークウルフの肩に浅い傷が入る。
「グアァァッ!!」
リオは息を呑んだ。
(当たった……!
紅牙が……通じた……!)
だが――
エルミナが叫ぶ。
「リオ、下がって!!」
「えっ――」
ダークウルフの影が膨らむ。
影分身。
影から二体目のダークウルフが飛び出した。
「うわっ!!」
リオは避けきれず、
爪が肩を裂いた。
ザシュッ!!
「っ……痛っ……!」
血が流れる。
エルミナが叫ぶ。
「リオ、集中して!
影分身は“本体より魔素が薄い”!」
リオは歯を食いしばった。
(魔素……魔素……!)
影分身の魔素は薄い。
本体は濃い。
(見える……!)
リオは紅牙を握りしめた。
(僕は……負けない!)
魔力を剣に流す。
紅牙が赤く輝く。
「はぁぁぁぁっ!!」
リオは影分身に突進した。
ズバァッ!!
影分身が霧散する。
(次は……本体!)
影が揺れる。
リオは剣を構えた。
「来い……!」
ダークウルフが飛び出す。
リオは剣を振り下ろした。
ガキィィン!!
爪と剣がぶつかり合う。
だが――
リオは魔力を拳に集めた。
(魔力……拳に……!)
拳が光る。
「うおおおおっ!!」
リオは拳をダークウルフの腹に叩き込んだ。
ドゴォォッ!!
ダークウルフが吹き飛ぶ。
「グアァァァッ!!」
エルミナは息を呑んだ。
(魔力武技……!
この子……もう使えるの……!?)
ダークウルフは立ち上がる。
だが、足が震えている。
リオは紅牙を構えた。
(これで……終わらせる!)
影が揺れる。
リオは魔力を剣に流した。
紅牙が赤く輝く。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
リオは地面を蹴った。
ズシッ!!
重力5倍の世界で、
リオは初めて“加速”した。
ダークウルフが影に潜ろうとする。
だが――遅い。
リオの剣が閃いた。
ズバァァァッ!!
ダークウルフの身体が光に包まれ、
霧散した。
リオはその場に膝をついた。
「はぁ……はぁ……!」
エルミナが駆け寄る。
「リオ……よくやりました!」
リオは震える声で言った。
「僕……勝った……?」
「ええ。
あなたは初めての中級モンスターに勝利しました」
リオは紅牙を見つめた。
(ありがとう……紅牙……)
小屋に戻り、
リオは若返りの泉に浸かった。
――光が身体を包む。
痛みが消え、
疲労が溶け、
魔力が満ちていく。
泉から上がると、
魔素文字が浮かび上がった。
《ステータス更新》
■ 新スキル
・影読み(新規習得)
・魔力武技(萌芽)
・剣術(E → D)
・体術(D → C)
・魔力操作(D → C)
■ ステータス
能力前後
STR1014
VIT1013
AGI710
SPD710
MP3542
INT1314
WIS1113
エルミナは言う。
「リオ。
あなたは今日、
“戦士としての第一歩”を踏み出しました」
リオは紅牙を握りしめた。
「次は……もっと強い敵と戦いたい!」
エルミナは微笑む。
「ええ。
あなたなら、どこまでも強くなれます」




