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初めてのモンスター戦

重力調整ドアを抜け、再び重力5倍の世界へ踏み出したリオは、

前回よりも確かに軽く感じる身体に驚いていた。


「……本当に、軽い」


若返りの泉の効果は絶大だった。

筋肉の疲労は完全に消え、魔力回路も活性化している。


エルミナが小屋の入口から声をかける。


「リオ。今日は“歩行訓練”だけではありません。

 あなたには、初めての“戦闘”を経験してもらいます」


リオの心臓が跳ねた。


「戦闘……?」


「ええ。

 この修行エリアには、あなたの成長に合わせて

 “魔素体モンスター”が自然生成されます」


エルミナは指を鳴らした。


空気が震え、魔素が集まり、

白い砂の地面から黒い影が立ち上がる。


――ウルフ。


灰色の毛並み。

鋭い牙。

黄色い瞳がリオを射抜く。


「……っ!」


リオは思わず後ずさった。


エルミナは静かに言う。


「安心してください。

 魔素体モンスターは倒しても死にません。

 あなたの修行のために生成される存在です」


「でも……怖い……」


「怖くて当然です。

 あなたはまだ十歳。

 しかし――“恐怖を越える経験”こそ、成長の第一歩です」


リオは拳を握った。


(僕……逃げたくない)



ウルフが低く唸った。


グルルル……


その瞬間、リオの背筋が凍りつく。


(怖い……!)


重力5倍の世界では、恐怖すら重く感じる。

心臓が早鐘を打ち、呼吸が浅くなる。


エルミナが言う。


「リオ。

 まずは“避ける”ことだけを考えなさい。

 攻撃はしなくていい」


「……はい!」


ウルフが地面を蹴った。


ドッ!


砂が舞い、ウルフの姿が消える。


「――っ!」


リオは反射的に横へ飛んだ。


ズシッ!


重力が身体を引きずり、転がるように倒れ込む。


(重い……! でも……避けられた!)


ウルフはリオがいた場所を鋭い爪で切り裂いた。


砂が舞い、地面に深い溝が刻まれる。


「ひっ……!」


エルミナが声をかける。


「リオ、立って!」


「う、うん!」


リオは震える足で立ち上がる。


ウルフが再び突進してくる。


(次は……右!)


リオは右へ飛んだ。


ズシッ!


重力が身体を押しつぶすようにのしかかる。

しかし――避けた。


「よし……!」


エルミナが微笑む。


「素晴らしい反応です。

 あなたの“魔力感知”が働き始めていますね」


リオは気づいた。


(ウルフが動く前に……魔素が揺れる……!)


魔素の流れが、ウルフの動きを予告している。



エルミナが言う。


「リオ。

 次は“攻撃”してみましょう」


「攻撃……?」


「ええ。

 あなたの拳はまだ弱い。

 でも、魔素体モンスターには“魔力を乗せた打撃”が有効です」


リオは拳を握った。


(魔力……どうやって……?)


エルミナが指示する。


「胸の奥にある“熱”を感じて。

 それを腕に流すイメージです」


リオは深呼吸した。


(熱……魔力……流れろ……!)


胸の奥が熱くなる。

その熱が腕へ、拳へと流れていく。


拳が淡く光った。


「……できた!」


エルミナが頷く。


「そのまま――打ちなさい!」


ウルフが突進してくる。


リオは恐怖を押し殺し、拳を突き出した。


バッ!


拳がウルフの顎に命中する。


ドンッ!


衝撃が走り、ウルフの身体が弾き飛ばされた。


「やった……!」


だが――


ウルフはすぐに立ち上がった。


「グルルル……!」


リオの背筋が震える。


(まだ……倒せてない……!)


エルミナが言う。


「リオ。

 あなたの拳は“当たった”。

 それだけで十分です」


「でも……!」


「焦らないで。

 戦いは“積み重ね”です」



ウルフが再び突進してくる。


リオは避ける。

避ける。

避ける。


しかし――


ズシャッ!


爪がリオの腕をかすめた。


「っ……痛っ!」


血が滲む。


エルミナが叫ぶ。


「リオ、下がって!」


リオは後退しようとしたが――


重力が足を引きずる。


(逃げられない……!)


ウルフが飛びかかる。


リオは咄嗟に腕を上げた。


ガッ!


爪が腕に食い込む。


「うああああっ!」


痛みが走る。

視界が揺れる。


(怖い……怖い……!

 でも……逃げたくない……!)


リオは叫んだ。


「僕は……強くなりたいんだあああああっ!!」


拳を振り上げる。


魔力が爆発するように拳へ集まる。


ゴッ!!


拳がウルフの顔面に直撃した。


ウルフの身体が宙を舞い、

砂の上を転がる。


ドサッ……!


ウルフは動かなくなった。



リオはその場に膝をついた。


「はぁ……はぁ……!」


腕から血が流れる。

身体は震えている。


エルミナが駆け寄った。


「リオ……よくやりました!」


リオは震える声で言った。


「僕……勝った……?」


「ええ。

 あなたは初めての戦闘で、

 “恐怖”に勝ったのです」


ウルフの身体は光となって消えた。


魔素体モンスターは倒されると、

魔素へ還元される。


エルミナはリオの腕に手を当て、

治癒魔法をかけた。


「痛かったでしょう」


「……うん。でも……」


リオは笑った。


「僕……強くなれる気がする」


エルミナは優しく微笑む。


「ええ。

 あなたは、必ず強くなれます」



小屋に戻り、

リオは若返りの泉に浸かった。


――光が身体を包む。


痛みが消える。

疲労が溶ける。

魔力が満ちていく。


リオは目を閉じた。


(僕……本当に……強くなりたい)


泉から上がると、

魔素文字が浮かび上がった。


《ステータス更新》

■ リオ・アークライト(10歳)

スキル

・努力(E)

異世界転移ユニーク

・魔力感知(F → E)

・体術(F → E)

・精神耐性(F → E)


■ ステータス

能力数値(前)数値(後)

HP2731

MP1318

STR35

VIT46

AGI56

SPD56

INT78

WIS67

LUK1313

エルミナが言う。


「リオ。

 あなたは“初めての戦闘”で、

 確かに強くなりました」


リオは拳を握った。


「次は……もっと強い敵と戦いたい」


エルミナは微笑む。


「ええ。

 あなたの道は、まだ始まったばかりです」

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