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村の事件

異世界から戻って三日。

リオは久しぶりの現実世界に、

まだ完全には馴染めていなかった。


(なんか……軽いな……

 重力も、空気も、魔素も……

 全部“薄い”)


学校へ向かう道。

見慣れた家々。

聞き慣れた鳥の声。


だが、リオの身体は異世界仕様になっていた。


(走るのも……歩くのも……

 全部が“簡単すぎる”)


そんな違和感を抱えながら、

リオは村の入り口に差し掛かった。


そのとき――


「リオくん!」


村の人が駆け寄ってきた。


「大変なんだ!

 村の外れで“何か”が出たらしい!」


リオは息を呑んだ。


(何か……?)



村の外れには、

人だかりができていた。


リオは人々をかき分けて前に出た。


(これは……)


地面に、

大きな爪痕のような跡が残っていた。


深く、鋭く、

まるで“獣”が引っ掻いたような跡。


村の男が言う。


「夜中に、変な声が聞こえたんだ。

 ガァァァ……って……」


別の人が言う。


「家畜が一頭いなくなっててよ……

 血の跡もあった……」


リオは跡を見つめた。


(この爪痕……

 異世界の魔物に似てる……

 でも……ここは現実世界……)


胸がざわつく。


(まさか……

 異世界の“何か”が……こっちに……?)


紅牙の声が頭に響いた。


――リオ。

 この気配……覚えがある。


リオは息を呑んだ。


(紅牙……!?

 どうして……?)


――これは“魔素の残滓”。

 異世界の魔物が残す痕跡だよ。


リオの背筋が凍った。


(魔素……!?

 現実世界に……魔素が……!?)



村長がリオに近づいてきた。


「リオ……

 お前、最近強くなったって聞いた。

 頼む……この事件、調べてくれないか」


リオは戸惑った。


(僕は……ただの学生なのに……

 でも……)


紅牙が言う。


――リオ。

 これは“君にしかできない”。


リオは拳を握った。


「……わかりました。

 僕が調べます」


村長は深く頭を下げた。


「すまん……

 村の皆を守ってくれ……!」


リオは頷き、

爪痕の先へと歩き出した。



森に入ると、

空気が変わった。


(……重い)


異世界ほどではないが、

確かに“魔素”の気配がある。


紅牙が言う。


――リオ。

 気をつけて。

 これは“上級魔物”の残滓だよ。


リオは息を呑んだ。


(上級……!?

 なんで……現実世界に……)


森の奥へ進むと、

木々が裂けた跡があった。


(これは……

 ヘルハウンドの爪痕に似てる……)


紅牙が震える。


――違う。

 これは“魔素体ウルフ”。

 中級上位の魔物だよ。


リオは拳を握った。


(中級上位……

 初期修業の頃なら……危なかった……

 でも今なら……!)


そのとき――


ガァァァァッ!!


森の奥から、

獣の咆哮が響いた。


リオは紅牙を抜いた。


「来る……!」



黒い霧が揺れ、

狼のような影が姿を現した。


赤い瞳。

黒い毛並み。

魔素が渦巻いている。


魔素体ウルフ(中級上位)


「グルルルル……!」


リオは息を呑んだ。


(本当に……異世界の魔物……!

 どうして……!?)


紅牙が言う。


――リオ。

 迷ってる暇はないよ。

 村を守るんでしょ?


リオは頷いた。


「行くよ、紅牙!」



ウルフが突進してくる。


ドッ!!


リオは横へ飛ぶ。


(重力が軽い……!

 動きやすい……!)


ウルフの爪が地面を裂く。


ズバァッ!!


リオは紅牙を構えた。


(魔力……流れろ……!)


紅牙が赤黒く輝く。


リオは踏み込んだ。


ズシッ!!


剣を“抜く”ように振る。


ズバァァッ!!


ウルフの肩に傷が入る。


「グアァァッ!!」


紅牙が言う。


――リオ、魔素が薄いから、

 魔物の再生が遅いよ。

 今がチャンス。


リオは頷いた。


「わかってる!」



ウルフが黒炎を吐く。


リオは叫んだ。


「フレイム・ブレイカー!!」


無詠唱。


ドォォォォン!!


爆裂球が黒炎を相殺する。


(魔法……使える……!

 現実世界でも……!)


紅牙が言う。


――魔素が薄いから、

 威力は少し落ちるけどね。


リオは踏み込んだ。


「アクア・テンペスト!!」


シュバァァァッ!!


水風土の竜巻がウルフを切り裂く。


ウルフが怯む。


(今だ……!)



リオは紅牙を構えた。


(村を守る……

 僕が……!)


魔力が身体を巡る。


芯が消える。

重力が消える。

紅牙が消える。


リオは踏み込んだ。


スッ……!


距離が消える。


「奥義――

 零閃・真!!」


ズバァァァァッ!!


ウルフが光に包まれ、

霧散した。


リオは息を荒げた。


「はぁ……はぁ……!」


紅牙が震える。


――やったね、リオ。



ウルフが消えた場所に、

奇妙な“裂け目”が残っていた。


空間が歪み、

黒い霧が漏れている。


リオは息を呑んだ。


(これ……

 異世界と繋がる“裂け目”……!?)


紅牙が言う。


――リオ。

 これは“世界の境界が揺らいでいる”証拠だよ。


リオは拳を握った。


(世界が……繋がり始めてる……?

 僕が……異世界で強くなったせい……?)


紅牙は静かに言った。


――違うよ。

 これは“もっと大きな力”が動いてる。

 リオは……その中心にいる。


リオは裂け目を見つめた。


(僕は……どうすれば……)


そのとき、

エルミナの声が頭に響いた。


――リオ。

 その裂け目は、

 “中期修業”の始まりです。


リオは息を呑んだ。


(エルミナ……!)


――戻ってきなさい。

 あなたの力が必要です。


リオは拳を握った。


(僕は……また異世界へ……!)

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