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束の間の休息そして元の世界へ

上級地帯奥地での死闘、

そして“自分自身との戦い”を終えた翌朝。


リオは小屋のベッドで目を覚ました。


(……静かだ)


いつもなら、

魔素の揺らぎや、

エルミナの気配、

紅牙の微かな振動が聞こえる。


だが今日は――

世界がやけに穏やかだった。


紅牙・魔導が声をかけてくる。


――おはよう、リオ。

 今日は……なんだか優しい空気だね。


リオは微笑んだ。


「うん。

 なんか……落ち着く」


そのとき、扉がノックされた。


「リオ、起きていますか?」


エルミナだ。


リオはベッドから起き上がり、

扉を開けた。


エルミナは柔らかく微笑んでいた。


「リオ。

 今日は“休息日”です」


リオは目を見開いた。


「休息……日……?」


エルミナは頷いた。


「ええ。

 あなたは初期修業を終えました。

 身体も心も、少し休ませる必要があります」


リオは胸が温かくなった。


(休んでいいんだ……

 あれだけ戦って……

 あれだけ頑張って……

 やっと……)



エルミナに連れられ、

リオは魔素湖へ向かった。


湖面は青く輝き、

魔素がゆっくりと流れている。


「リオ。

 今日は好きなように過ごしていいですよ」


リオは湖のほとりに座り、

足を水に浸した。


(あったかい……

 魔素湖って……こんなに気持ちよかったんだ……)


紅牙が声をかける。


――ねぇリオ。

 今日は僕も休んでいい?


リオは笑った。


「もちろん。

 紅牙も頑張ったもんね」


紅牙が嬉しそうに震える。


――ありがとう。


エルミナは湖の向こうで、

静かに魔素を整えていた。


その姿は、

いつもより柔らかく、

どこか母親のようだった。


リオはふと思った。


(エルミナ……

 僕のこと……ずっと見守ってくれてたんだな……)


胸が温かくなる。



湖のほとりで、

エルミナが隣に座った。


「リオ。

 あなたは本当に……よく頑張りました」


リオは照れくさそうに笑った。


「僕……まだまだだよ。

 もっと強くならなきゃ……」


エルミナは首を振った。


「いいえ。

 あなたは“初期修業”を、

 本来なら数年かかる内容を、

 たった数ヶ月で終えました」


リオは息を呑んだ。


(そんなに……!?)


エルミナは続ける。


「あなたは特別です。

 でも――

 特別だからこそ、

 “休むこと”も大切なのです」


リオは湖面を見つめた。


(休む……

 僕……ずっと走り続けてた……

 怖くて……

 強くなりたくて……

 逃げたくなくて……)


エルミナは優しく言った。


「リオ。

 あなたはもう、

 “弱かった自分”を超えました。

 だから――

 今日はゆっくり休みなさい」


リオは小さく頷いた。


「……うん」



昼になり、

エルミナが作った料理が並んだ。


焼きたてのパン


魔素野菜のスープ


香草焼きの肉


魔素果実のジュース


リオは目を輝かせた。


「すごい……!

 こんな豪華なの、初めて……!」


エルミナは微笑む。


「今日は特別です。

 あなたの“初期修業終了祝い”ですから」


紅牙が震える。


――僕も食べたい。


リオは笑った。


「紅牙は食べられないでしょ」


――気持ちだけでいいから。


エルミナも笑った。


「紅牙にも、魔素を少し分けてあげましょう」


紅牙が嬉しそうに震える。


――やった!


リオは胸が温かくなった。


(こんな時間……

 ずっと欲しかった……

 ずっと……)



食事が終わった後、

エルミナは真剣な表情になった。


「リオ。

 あなたに伝えたいことがあります」


リオは姿勢を正した。


「なに……?」


エルミナは静かに言った。


「あなたは今日、

 “元の世界へ戻りなさい”」


リオは息を呑んだ。


(元の……世界……!?)


エルミナは続ける。


「あなたは長い間、

 こちらの世界で修業を続けてきました。

 しかし――

 あなたの身体は“現実世界”にあります」


リオは拳を握った。


(そうだ……

 僕は……元の世界から来たんだ……)


エルミナは優しく言った。


「リオ。

 あなたは強くなりました。

 だからこそ――

 元の世界で、

 あなた自身の人生を歩む時間も必要です」


リオは胸が締めつけられた。


(エルミナと離れるの……?

 紅牙とも……?)


エルミナは微笑んだ。


「大丈夫。

 あなたが望めば、

 いつでもこちらに戻って来られます」


紅牙が震える。


――僕も、リオが呼べばすぐ行くよ。


リオの目に涙が浮かんだ。


「……うん……

 ありがとう……」



エルミナは小屋の中央に魔法陣を描いた。


「リオ。

 この魔法陣に立てば、

 あなたは元の世界へ戻れます」


リオは紅牙を握りしめた。


「エルミナ……

 僕……また来てもいい……?」


エルミナは微笑んだ。


「もちろんです。

 あなたは私の大切な弟子。

 いつでも歓迎します」


紅牙が震える。


――リオ。

 僕たちはずっと一緒だよ。


リオは涙を拭いた。


「うん……!

 絶対に……また来る……!」


エルミナは静かに頷いた。


「行きなさい、リオ。

 あなたの世界へ」


リオは魔法陣に足を踏み入れた。


光が身体を包む。


(エルミナ……

 紅牙……

 ありがとう……)


光が強くなる。


世界が揺れる。


そして――



リオは目を開けた。


そこは――

見慣れた自分の部屋だった。


(戻ってきた……

 本当に……元の世界に……)


胸が熱くなる。


(でも……

 僕はもう……あの頃の僕じゃない……)


リオは拳を握った。


(強くなった……

 エルミナと……紅牙と……

 あの世界で……)


窓から差し込む朝日が、

リオの顔を照らした。


(ここから……

 僕の“現実の人生”が始まる……)


リオは静かに呟いた。


「また行くよ、エルミナ……

 待っててね……紅牙……」

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