上級モンスターとの初遭遇
重力5倍の世界。
白い砂の大地を越え、
森エリアを抜け、
火山エリアの縁を回り――
リオは、
これまで足を踏み入れたことのない場所へ向かっていた。
エルミナが前を歩く。
その表情はいつもと違う。
静かで、
冷たくて、
どこか張り詰めている。
(エルミナ……緊張してる……?)
リオは不安になった。
「エルミナ……今日の修行って……?」
エルミナは振り返らずに答えた。
「リオ。
あなたは中級モンスターを倒し、
連戦も乗り越えました」
「うん……」
「だから今日は――
“上級地帯の境界”まで行きます」
リオの心臓が跳ねた。
(上級……!)
エルミナは続ける。
「戦うとは言っていません。
ただ、“見る”だけです」
その声は、
どこか震えていた。
森エリアの奥。
木々が黒く変色し、
魔素が濃く、
空気が重い。
リオは息を呑んだ。
(空気が……重い……?
重力とは違う……
魔素が……圧力になってる……!)
エルミナが言う。
「ここから先は、
“上級地帯の境界”です」
リオは紅牙を握りしめた。
(怖い……でも……見たい……!)
エルミナは歩みを止めた。
「リオ。
ここから先は、
“あなたの意思”で進みなさい」
リオは深呼吸した。
(僕は……強くなりたい)
一歩、踏み出す。
その瞬間――
世界が変わった。
空気が重い。
視界が揺れる。
魔素が濃すぎて、
呼吸が苦しい。
(これが……上級地帯……!)
エルミナが言う。
「リオ。
ここでは“魔力操作”を常に行いなさい。
魔素に飲まれます」
リオは魔力を巡らせた。
(魔力……流れろ……!)
身体が軽くなる。
(すごい……!
魔力操作で……魔素の圧を抑えられる……!)
エルミナは静かに頷いた。
「あなたは……本当に特別です」
そのとき――
空気が震えた。
リオの背筋が凍る。
(なに……!?)
エルミナが小さく呟いた。
「来ます……」
森の奥。
黒い霧が揺れた。
リオの心臓が跳ねる。
(怖い……!
なんで……こんなに……!)
身体が震える。
膝が勝手に折れそうになる。
(これ……恐怖……?
違う……
“本能”が……逃げろって……叫んでる……!)
エルミナが言う。
「リオ。
上級モンスターは、
“存在そのもの”が脅威です」
黒い霧が形を成す。
四足。
巨大な影。
赤い瞳。
魔素体ヘルハウンド(上級)
「グルルルル……」
リオは息を呑んだ。
(大きい……!
ダークウルフの……三倍……!)
エルミナが言う。
「リオ。
絶対に戦ってはいけません。
今日は“見るだけ”です」
だが――
ヘルハウンドの赤い瞳が、
リオを捉えた。
「……グルルルルル」
エルミナの顔が青ざめる。
「リオ……逃げなさい……!」
ヘルハウンドが地面を蹴った。
ドッ!!
地面が砕ける。
砂が舞う。
(速い……!
中級とは……比べ物にならない……!)
リオは横へ飛ぶ。
ズシッ!!
重力5倍の世界で、
ギリギリ避けた。
だが――
ヘルハウンドはすぐに方向転換した。
「グルァァァ!!」
リオは紅牙を構えた。
(来る……!)
ヘルハウンドの爪が迫る。
リオは紅牙を振る。
ガキィィィン!!
火花が散る。
だが――
紅牙が弾かれた。
「うわっ!!」
リオは吹き飛ばされ、
地面を転がる。
ズザザザッ!!
(紅牙が……通じない……!?)
エルミナが叫ぶ。
「リオ、逃げて!!
上級モンスターは“武器破壊”の能力を持っています!」
リオは紅牙を見た。
刃が……欠けている。
(僕の……紅牙が……!)
ヘルハウンドが再び突進する。
リオは魔法を使った。
「フレイム・スパーク!!」
ボッ!!
火花が散る。
だが――
ヘルハウンドの身体に触れた瞬間、
火が霧散した。
「えっ……!?」
エルミナが叫ぶ。
「リオ、上級モンスターは“魔法耐性”が高い!
初級魔法は通じません!」
ヘルハウンドが口を開く。
黒い炎が集まる。
「グルァァァァ!!」
リオは叫んだ。
「アース・ウォール!!」
ゴゴゴ……!
土壁が生まれる。
だが――
ドゴォォォォン!!
黒炎が土壁を粉砕した。
「うわあああっ!!」
リオは吹き飛ばされる。
(魔法も……通じない……!
どうすれば……!)
ヘルハウンドがゆっくりと歩いてくる。
赤い瞳が、
リオを見下ろす。
「グルルル……」
リオは震えた。
(僕……死ぬ……)
初めて、
本気でそう思った。
エルミナが叫ぶ。
「リオ!!
逃げて!!
お願い……逃げて……!!」
だが、
リオの足は動かない。
(怖い……
怖い……!
でも……逃げたくない……!)
ヘルハウンドが跳ぶ。
リオは紅牙を構えた。
(僕は……強くなりたいんだ!!)
ヘルハウンドの爪が迫る。
その瞬間――
リオの視界が変わった。
世界が“光”で満ちる。
ヘルハウンドの身体の中に、
魔素の流れが見える。
(これ……!
魔素の流れ……!
弱点が……見える……!)
リオは紅牙を握りしめた。
「うおおおおおっ!!」
紅牙が赤く輝く。
リオはヘルハウンドの爪を避け、
魔素の“空白”へ剣を突き刺した。
ズバァァァッ!!
ヘルハウンドが悲鳴を上げる。
「グアァァァァ!!」
エルミナが息を呑む。
(魔素視……!
この子……本当に……!)
ヘルハウンドが黒炎を吐く。
リオは風魔法で加速する。
「ウィンド・ブースト!!」
シュバッ!!
身体が軽くなる。
リオは紅牙に魔力を流す。
(魔力……剣に……!)
紅牙が赤く燃える。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
リオは地面を蹴った。
ズシッ!!
重力5倍の世界で、
リオは“限界突破”した。
ヘルハウンドの首元――
魔素の“空白”へ剣を振り下ろす。
ズバァァァッ!!
ヘルハウンドが光に包まれ、
霧散した。
リオはその場に倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……!」
エルミナが駆け寄る。
「リオ……!
あなた……本当に……!」
エルミナの目に涙が浮かんでいた。
小屋に戻り、
リオは若返りの泉に浸かった。
――光が身体を包む。
痛みが消え、
疲労が溶け、
魔力が満ちていく。
泉から上がると、
魔素文字が浮かび上がった。
《ステータス更新》
■ 新スキル
・魔素視(新規覚醒)
・限界突破(新規覚醒)
・魔力武技(C → B)
・剣術(C → B)
・風魔法(強化)
・火魔法(強化)
■ ステータス
能力前後
STR1823
VIT1722
AGI1419
SPD1419
MP6375
INT1922
WIS1822
エルミナは言う。
「リオ。
あなたは今日、
“上級地帯に足を踏み入れる資格”を得ました」
リオは紅牙を握りしめた。
「僕……もっと強くなる」
エルミナは微笑む。
「ええ。
あなたなら、どこまでも行けます」




