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第1話 異世界小屋と、努力しか持たない少年

ダイガンド王国南東部、ギュースターベの街。

石畳の道と古い木造家屋が並ぶ、どこにでもある地方都市だ。


その街の片隅で、ひとりの少年が歩いていた。


青い髪。金色の瞳。

年齢は十歳。

名は――リオ・アークライト。


今日、街では十歳の子どもたちが受ける「スキル確認の儀」が行われた。


魔石に手を置き、光が走り、スキルが浮かび上がる。

それは人生を左右する瞬間だ。


剣才(A)

魔才(A)

鍛冶才(B)

商才(C)


子どもたちは歓声を上げ、大人たちは未来を語り合う。


そんな中、リオの魔石に浮かんだ文字は――


努力(E)


「……努力? なんだそれ」

「才能じゃないじゃん」

「かわいそうに」


笑い声が刺さる。

大人たちの視線は、同情と落胆で濁っていた。


リオは笑わなかった。

泣きもしなかった。


ただ、胸の奥が少しだけ痛んだ。


(努力って……そんなにダメなのかな)


家に帰る気になれず、リオは街外れの森へ足を向けた。


夕暮れの森は静かだった。

鳥の声も、風の音も、どこか遠くに感じる。


リオは深呼吸した。


「……はぁ。努力、か」


自分に言い聞かせるように呟く。


「努力って、悪いことじゃないよね。

 僕は、僕にできることを――」


そのとき。


森の奥で、淡い光が揺らめいた。


「……え?」


光は、空間が歪むようにゆらゆらと揺れている。

まるで“向こう側”が存在するかのように。


リオは吸い寄せられるように近づいた。


手を伸ばす。


触れた瞬間――


世界が反転した。



視界が戻ったとき、リオは見知らぬ場所に立っていた。


空は淡い紫。

地面は白い砂のような質感。

空気は澄み、魔素が濃い。


そして、目の前には――


質素な木造の小屋。


「……ここ、どこ?」


小屋は森の中にあるような普通の建物だ。

だが周囲には森も街もない。

ただ広大な異世界空間が広がっている。


そのとき、小屋の扉が静かに開いた。


中から現れたのは、銀髪の女性だった。


年齢は二十代ほど。

白いローブをまとい、瞳は深い青。


「ようこそ、リオ。

 あなたを待っていました」


「……え? 僕を?」


女性は微笑んだ。


「私はエルミナ。この異世界空間の管理者です」



エルミナはリオを小屋の中へ招いた。


中は暖炉の火が揺れ、木の香りが心地よい。

ベッド、机、棚――生活に必要なものが揃っている。


「ここは……家?」


「ええ。あなたの拠点になります」


エルミナはリオの前に座り、静かに言った。


「リオ。あなたのスキル“努力(E)”は、表向きのものです」


「……え?」


「本当のスキルは――」


エルミナが指を鳴らすと、リオの前に魔素文字が浮かんだ。


《ユニークスキル:異世界転移》


「あなたは、この小屋に出入りできる唯一の存在。

 そして、この小屋は“無限修行のための拠点”です」


リオは息を呑んだ。



エルミナは小屋の内部を案内した。


● 専門書庫

武技、魔法、鍛冶、錬金――

あらゆるスキルの本が並ぶ巨大書庫。


● 禁書庫

人心掌握術、国運営術、商人の心得……

危険な知識がロックされている。


● 若返りの泉

肉体年齢を初回転移時に戻し、

魔力・体力・精神力を完全回復する泉。


● 管理者専用部屋

エルミナしか入れない最奥の部屋。

世界の情報が集まる場所。


そして――


● 外へ繋がる重力調整ドア

外の修行エリアの重力を

1倍〜10,000倍まで調整できる。


「この小屋の外には、あなたのための修行エリアがあります。

 モンスターは魔素体で無限復活し、あなたの成長に合わせて強くなる」


エルミナはリオの目を見つめた。


「そして――

 ここでは、現実世界の1秒が“1年”です」


リオの心臓が跳ねた。


「……1年?」


「そう。あなたは、誰よりも長く、誰よりも深く、

 誰よりも強くなれる」



エルミナは小屋の出口――重力調整ドアの前に立った。


「さあ、リオ。

 あなたの“努力”が、本当の力に変わる場所へ」


ドアの上部に魔素文字が浮かぶ。


《使用者データ解析中……》

《推奨重力:5倍》


リオは深呼吸した。


(努力しかない僕でも……

 ここなら、強くなれるのかな)


ドアノブを握る。


「僕……強くなりたい」


ドアを開いた瞬間――

重力が一気にのしかかった。


「っ……!」


膝が震える。

呼吸が苦しい。

でも――足は止まらない。


一歩、踏み出す。


その一歩が、

無限修行の第一歩だった。

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