35話
「今だけどさ、あの執事の人は食べないの?料理をめっちゃガン見してる気がするんだけど」
「そういえば爺やは日本食が好きだったな。好きに食べるといい」
「ありがとうございます」
執事服を着た人がレオンとサロメの後ろで大人しくずっと羨ましそうに見てたのが気になってたんだよな。
ていうか日本のご飯が好きなの知ってるならはやく食べさせてやれよ。
「それで、話がしたいっていうのは?」
「単刀直入に言おう。強力なスキルを使いこなすために強力してほしいんだ。頼む」
「強力なスキル…。身体強化系か?」
「あぁ。獣化というスキルでな、自身の身体を獣に変化させ、ステータスを飛躍的に上昇させることができるんだ」
「もしかして、その獣化を使うと理性がぶっ飛んでしまって敵味方関係なく襲うのか?」
「そういうことだ。翔琉、君ならば私が理性を失ってしまっても止めることができるはずだ。協力してくれないか?」
獣化か。
ステータスを上昇させるが理性を失ってしまうと。
そんなスキル、誰かが周りにいたら使えないもんな。
「ちなみにレベルは?」
「16だ」
「中級職業になったのか?」
「あぁ、聖騎士というものになった」
似合う!カッコイイな!
「まぁ俺にできることがあるなら協力してもいいよ」
「本当か!?感謝する!」
「翔琉〜、私もサロメちゃんに付与とか教えることになっちゃった」
「よろしくお願いいたします!」
「あ、はい。とりあえず話も終わったし食べようぜ」
まぁ俺は気にせず色々食べてたけどな。
レオンもサロメも話に夢中であまり食べていなかったんだ。
「む、これは美味いな」
「美味しいです…これはなんという料理なのですか?」
気に入ったみたいだな。
海外の人が日本食を褒めているのを見ると嬉しくなるのはなんなんだろう。
カゲツも美味しそうに食べているしよかった。
「兄ちゃん、ちょっと」
「ん?」
常連の和田さんに呼ばれたので、端の方で大人しくしている和田さん達の席に行ってみる。
「おいおい!なんで王子様とお姫様みたいな人を連れてきてんだ!?」
「ビックリしすぎて酔いが覚めちゃったじゃん!」
「目の保養になるからいいけどさ」
「「わかる〜!」」
仲良しすぎるだろ。
「この店に来る途中で捕まったんだよ。それからなりゆきでな」
「ほぇ〜。救世主様は人気者だな〜」
「話は終わったんだよな?なんの話をしてたんだ?」
「覚醒者関連の話だな。スキルを上手く使うことができない的な」
「わかるわー、俺も覚醒者だけどスキルなんか怖くて使えないもん」
「「覚醒者だったのお前!?」」
知らんかったんかい…。
それから常連の人達と少しだけ話してからレオンの隣に戻った。
「友人か?」
「そ!今日の朝方この店に来たときに仲良くなったんだ」
「なぜそのような時間に?」
「ボスを倒したあとホテルでずっと寝ててさ、起きたら夜中だったんだよ」
「なるほどな、日々の疲れで爆睡。そして酒と飯というわけか」
「そういうこと!身体に染みるわ〜」
日本酒が美味い!
それにたこわさに天ぷら!なんでもあるこの店は最高!
「翔琉よ」
「なんだ?レオンもから揚げ食べるか?」
「から揚げはいただこう。さっそくだが食事の後、付き合ってくれないか?」
「いいぜ〜」
「ちょっと、そんなにお酒飲んでるのに大丈夫なの?」
「無問題!」
「不安しかないんだけど…」
それから食事を終え、レオンに常連の人達の分も含めた代金を払い、車に乗って移動することになった。
車に乗って移動しているとき、爺やさんにローブを直してもらえた。
爺やさんも覚醒者らしく、職業は使用人から昇格し、中級職業の執事になったと聞いた。
もとから執事の仕事をしてることもあってか、スキルを理解するのが早く、応用もしているようでレオンよりも強いらしい。
その執事のスキルの応用で防具を直すことができると言っていたので直してもらった。
片腕が丸出しの状態の服を着るのは嫌だったから助かった。
着いた場所は体育館のような大きさの建物だった。レオン専属の覚醒者の職人達が作ったらしい。
覚醒者になって数日だろうに、もう順応してるのはすごいな…。
中は覚醒者達が暴れても壊れないように作ってるれしい。
「さてと、じゃあやるか?」
「じゃあやるか?じゃなーい!さっきまでお酒飲んでたじゃん!それなのに戦う?バカなの!?」
「模擬戦みたいなもんだって。それに移動してるときに水を飲んだから酔いは覚めたって」
「身体に悪いって言ってんの!」
オカンかよ…。
それか嫁か?
「酒が少し入ってるぐらいがちょうどいいんだよ。飲めるようになったらわかる」
「少しという量ではありませんでしたが…」
「私も心配していたんだが、翔琉は酒が得意なんだな」
「酔いがすぐに覚める体質なだけだ。それで?俺はレオンが暴走したときに止めればいいだけか?」
「いや、まずは君に剣の扱い方を教えさせてくれ。私ばかり得をするのは申し訳ないからな」
剣の使い方?たしかにただ振ってるだけだから教えてくれるのはありがたいけど。
「俺に戦う機会があるのは次で最後だからいいよ」
「日本にはたしか5つの災厄が出現していたな。全ての災厄の主を倒した後、どうなるか知らないのか?」
え、やっぱりなんかあんの?
「また新しい災厄が訪れる、的な?」
「そうだ。私の知り合いに占い師がいるんだが、日本に存在する災厄の主を全て倒すとダンジョンが現れるという未来を見たんだ」
「未来を見るスキルって…信じられるのか?」
「彼女は元々評判の良い占い師でな、覚醒者になったあとスキルも使用することで少し先の未来を見ることができるようになったようなんだ」
未来を見ながら戦えたら強そうだな。
ていうか便利すぎないか!?
爺やさんもそうだけど、本職と覚醒者になったときの職業が被ると今までの経験が活きるんだろうなぁ…。
俺は暗殺者から忍って…。
ただの厨二病じゃん…。
「どうした?」
「いや、なんでも。日本以外にダンジョンは出現しないのか?」
「日本が真っ先に全ての主を倒すことと、その少し先の未来しか見ることができなかったようでな、他国の場合どうなるのかはまだわからん」
「日本は少ない方なんだな」
「そうだな、だいたいの国は10ヶ所以上だぞ」
海外の人達みたいに日本人は戦うことが苦手そうだから少なくて助かった。
「それで俺にはまだまだ戦う機会があるだろうから剣の使い方を教えてくれるってことか」
「ただ、私は剣の扱いは得意だが刀の扱いは知らぬ。だから基礎しか教えることしかできないがいいか?」
「助かるよ。今まで鉄の塊を振り回してるだけだったからさ」
「動画などを見て素人というのがすぐにわかるぐらいだったからな。では、さっそく始めよう」
俺が黒刀を取り出すと、レオンも長剣を取り出した。
それから10分程、剣の振り方や姿勢、身体の筋肉の動かし方や意識することなどなど色々教えてもらった。
「だいたいイメージできるようになったよ、ありがとな」
「う、うむ。君は物覚えが早いな…。ではさっき教えたことも含めて私の訓練に付き合ってくれ」
「了解」
「それでは構えよ。行くぞっ!」
レオンの動きには全く無駄がない。
なにからなにまで全てが綺麗だ。人間ってこんなに効率の良い動きができるんだな。
フェイントもなくただ真っ直ぐに剣を振るう。
単純なことだがこんなにも綺麗だと思えるものなんだな。
やっぱり口で教えてもらうよりも、見て覚えた方が学びがあるし、理解しやすいな。
「なるほど、流石聖騎士様だな!」
「反射神経だけで防いでいる君も凄いさ」
「こうして間近で見ると色々学びがあっていいな」
「余裕だな…。ならば、少しギアをあげるぞ」
「おっ、と」
レオンの動きがたしかに速くなった。
そろそろ俺も反撃してみよう。
これだけ視たんだ、もうできるはずだ。
ガキィィンッ!
胴体を狙った一撃に合わせ、黒刀を振ると鈍い音が鳴り響いた。
「こうして、こう…」
「くっ…!」
レオンの動きを頭の中で再生しながら真似していく。
真似をしていくうちに、今までどれだけ無駄な動きが多かったか自覚することができた。
「こうか?」
「…降参だ」
レオンの首筋に黒刀を当てた。
「なるほどな〜。身体はこうやって動かせばよかったのか」
「君の才能は凄まじいな…。たった数分で私の動きを模倣するとはな。これが真の天才というやつか…」
「2人とも目的忘れてない?」
「もちろん覚えてる。レオンのおかげで俺は強くなれたからな、心配せずにいつでも獣化して大丈夫だぜ」
「わかった」
獣化しても怪我をさせないように、俺の動きを少しでもマシにさせるために丁寧に教えてくれたんだろう。
本当に優しい騎士様だこと。
「獣化、発動…!」




