2話
【アクセス完了 あなたの職業は『暗殺者』です】
(なに?アクセス?暗殺者?意味がわからん…)
目の前にステータスと書かれた青いゲームウィンドウのようなものが見える。
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名前:燈黒 翔琉 レベル:1
職業:暗殺者
HP:150 MP:100
筋力:1 防御力:1
速度:5 知能:2
感覚:3 運:1
スキルポイント:0
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なんなんだよこれ!さっさと閉じろ!
腕を払うとウィンドウが消えたが、新しくメッセージがでてきた。
【短刀を装備しますか? Yes or No】
装備?じゃあまぁ、とりあえずYesで…
真っ黒でシンプルな見た目の短い刃物という印象。
攻撃力は3。高いか?いや、初期装備って感じだな。
「グギャァ!」
そんなことを考えているとゴブリンが体勢を立て直し、襲いかかろうとしていた。
あれ?なんか、さっきよりも遅い気が…
ゴブリンの攻撃にあわせ後ろに飛び、距離をとり短刀をかまえた。
それで?どうすんだよ!こっから!戦ったことなんてねーからわかんねーよ!一番長い刃物でも握ったことがあるのは普通の包丁!ケンカもしたことない!
「燈黒!」
「うわっ」
ゴブリンが俺の短刀よりも短いナイフで切りかかろうとしていたところを慌てて避けた。
「ふぅ」
一度深呼吸をして心を落ち着かせよう。
ケンカすらしたことがないから戦えない?この状況で?バカだな。殺るしかない。覚悟を決めろ。
どこを斬る?
「グア!」
ゴブリンがまた飛びかかってきた。
やはり動きが遅く見える。暗殺者になったからか?
飛びかかってきたところをタイミングよく躱し、短刀をゴブリンの顔に向けて振ってみた。
「グギャアアアアア!」
おぉ、ゴブリンの右目を斬ることができた。
ゴブリンはナイフを落とし、右目を両手で抑えている。
これが隙ってやつか。
焦らず、ゴブリンから目を離さず、ゆっくり近付く。
「グギャァ!」
目を抑えながら吠えるだけ。
近付いているとゴブリンが落としたナイフがあったので拾ってみた。
【ボロボロのナイフを入手しました】
ナイフを拾うとメッセージが出てきた。
攻撃力は1。ボロボロすぎて振ったら壊れそうだな。
ゴブリンの目の前まできたが、コイツは俺のことを睨みながら目を抑えているだけだ。
殺す。殺す?どうやって?短刀で。どこを斬る?首?アニメみたいに斬り飛ばせるわけがない。それなら確実に頭を突き刺してしまおう。
グサッ
「グギャアアアアアアアアア!」
ゴブリンは最後に叫び声をあげ、霧のように散った。
【レベルアップしました】
レベルアップか。本当にゲームみたいだな…
自分の手と短刀を見ると、ゴブリンを斬ったときについたはずの血が無くなっていた。
だが、感覚は残っている。
とても気持ちが悪い。刺した瞬間のあの独特な感覚。
突き刺した瞬間を何度も思い出してしまう。
「…くん!…かけるくん!」
「え…ぁ…は、はい!」
「大丈夫?ケガしてない?」
「僕は大丈夫です」
「じゃあ行くぞ!石上もしんどそうや!店長、代わろか?」
「いえ、大丈夫です!早く行きましょう!」
店長と桜崎さんは冷静だ。
俺も落ち着こう。
とりあえず短刀とゴブリンが持っていたナイフをしまいたいが、しまう方法がわからないのでまだ持っている。
社員用の通路へ出るためのドアを開けると、先に逃げたはずのおばさま方や社員の方達がいた。
「おい、俺らのこと置いて逃げたやつらがこんなとこでなにしとんねん!」
「しょうがないでしょ!?化物が来たら逃げるでしょ!?」
揉めている間にステータスを見てみよう。
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名前:燈黒 翔琉 レベル:2
職業:暗殺者
HP:175 MP:110
筋力:1 防御力:1
速度:5 知能:2
感覚:3 運:1
スキルポイント:5
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HPとMP、あとスキルポイントが増えている。
なにを上げたらいいんだ?
とりあえず速度が一番高いし、筋力でもあげておくか?
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名前:燈黒 翔琉 レベル:2
職業:暗殺者
HP:175 MP:110
筋力:6 防御力:1
速度:5 知能:2
感覚:3 運:1
スキルポイント:0
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HPとMPにはポイントを割り振ることができなかったので筋力を上げることにした。
これでまたゴブリンと戦うとしても楽に勝てるんじゃないか?
もうあの感覚は味わいたくないけどな…
バンッ!
「え!?」
いきなり背中を叩かれた。
「あの化物なら翔琉くんが倒してくれる!」
「え!?」
「だからみんないったん落ち着いて!」
店長が落ち着いて!?
なに言ってんの!?
「燈黒君が倒す?何言ってるんですか?」
川口さんが俺のことを睨むように見てきた。
「さっきの化物は燈黒が一人で倒してくれた。俺と店長が見てたから間違いないぞ」
「はぁ!?倒したって…どうやって!」
桜崎さんがさっきあったことをみんなに説明してくれていると店長が近付いてきた。
「翔琉くん、ごめんな」
「え?」
「さっきの化物を倒したあと、気分悪そうやったやろ? それやのに、翔琉くんが化物を倒してくれるって言ってしまったから…」
「大丈夫です。やれます」
店長が心配そうに見てくる。
店長は優しいのでいつも気にかけてくれる。
俺はみんなが死なずにすむなら、あの気持ち悪い感触も我慢できる。
「それならあそこにおる化物も倒してや!」
川口さんが指をさした先は社員専用通路のドアだ。
「ドアの向こうに化物がいるから倒して!できるんやろ!?」
「わ、わかりました」
ゴブリンより怖い…
「…ほんま頼りないわ」
聞こえてます。せめて聞こえないように言ってください。
桜崎さんが川口さんの方へ近付きなにか話している。
…あぁ、また言い合いが始まった。
はやく帰りたい…
ドアをゆっくり開け、通路を確認するとゴブリンが2体いた。
1体は近いが、もう1体は少し離れた場所にいる。そしてどちらも反対側を見ているのでこちらに気付いていない。
気持ちを切り替えろ。一撃で仕留めていく。
気付かれないように可能な限り足音を鳴らさないように近付き、後ろから短刀とボロボロのナイフをゴブリンの頭に突き刺した。
まずは1体。もう1体にはまだ気付かれていない。
1体目と同じように近付き、ナイフを振り下ろそうとした瞬間に気付かれた。
「遅い」
グサッ
バキィッ
【レベルアップしました】
【ボロボロのナイフが壊れました】
気付かれたが問題なく殺すことができたし、レベルも上がった。
ナイフが壊れたのはしょうがない。
【スキル:隠密を獲得しました】
スキル?隠密?そんなものもあるのか。
本格的に現実がゲームのようになったみたいだな。
念の為、通路の先も確認しておこう。
曲がり角の先を確認したが、ゴブリンはいなかったのでさらに先に進む。
ここから最短距離で外に出るには、この社員専用通路を抜け、一般の客も通る共通通路から外に出るしかない。
その共通通路にゴブリンがめちゃくちゃいそうなんだよなー…
そう思いながらドアを少しだけ開け、周りを確認するとゴブリンが数体いた。
パッと見ただけで10体ぐらいか。
1階の他の場所や2階と3階のことも考えると大量のゴブリンがいそうだ。
このままこの辺りのゴブリンを殺してから戻るか、今すぐに戻るか。
ゴブリンを殺してから戻ると時間がかかって怒られそうだし、今すぐに戻っても川口さんに怒られそうだな…
どうせ怒られるならステータスを上げてゴブリンを殺してから戻るか。
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名前:燈黒 翔琉 レベル:3
職業:暗殺者
HP:200 MP:120
筋力:6 防御力:1
速度:5 知能:2
感覚:3 運:1
スキルポイント:5
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レベルが1上がるごとに毎回スキルポイントが5もらえるんだな。
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名前:燈黒 翔琉 レベル:3
職業:暗殺者
HP:200 MP:120
筋力:11 防御力:1
速度:5 知能:2
感覚:3 運:1
スキルポイント:0
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今回レベルが上がった分のスキルポイントも全てを筋力に割り振った。
「よし、じゃあ殺るか」
ゴブリン狩りを始めよう。
大丈夫、俺ならできる。
覚悟を決め、ドアを開いた。




