18話
「どうして1階から進入したんですか?」
「弱いモンスターが居場所を無くして下の階に行く可能性があるんですよ。それに安全に休める階があったほうが気が楽なんですよ」
「なるほど!」
「大きい声は出さないでくださいね」
「す、すみません。気を付けます」
電気はついている場所とついていない場所があり、棚は倒れたりしてぐちゃぐちゃになっている。
モンスターの気配はもう少し奥からだ。
「あれがモンスターですよ。こちらにはまだ…」
「テレビの前の皆さん!少し先に見える生物が見えますか!」
「ちょっと、あなたね!」
こいつ…死にたいのか?
あーあ、モンスターにバレてしまった。
ウサギのような見た目をしており角が生えている。名前はホーンラビット。
普通のウサギよりかは大きい。子犬ぐらいの大きさか?
3体いるな。
「戦ってみるか?」
「うん。水刃!」
「おぉ、凄いな」
響華がスキルを使うとホーンラビットの首一発で落とした。
残り2体か。
ボロボロのナイフを2本取り出し風を纏わせ投げた。
「ビッ!」
「ピピッ!」
無事に命中。
風を纏わせたナイフはある程度コントロールしやすくていいな。
ナイフはまだたくさんあるし、遠距離から攻撃できると楽でいいな。
「瞬殺です!自衛隊でも歯が立たなかったモンスター達を一瞬で倒してしまいました!」
「あのさ、あんた死にたいわけ?大きい声を出したせいでモンスターに気付かれたんたけど」
「こ、こちらも仕事なのです!世界中の皆さんに希望を届けないといけないんです!」
希望ねぇ…
たしかに効果はあるだろうな。
化物達を倒す手段はある。それだけで希望の光が少し見えるもんな。
「それなら映像だけでいいですよね?実況がいる理由はいりますか?」
「それは…」
「あなたが大きい声を出したせいで、モンスター達が来ますよ。しかもかなり多い」
「え?」
パッと見ただけで20体以上のホーンラビットが走ってきている。
「こんなに…どうするんですか!?」
「とりあえず下がっててください。響華、水刃をぶっぱなせ」
「わかった!」
黒刀を取り出し戦う準備をする。
黒刀は短刀よりも長く、ホブゴブリンの腕も簡単に斬り落とせそうだ。
「火よ、風よ」
ナイフに火と風を纏わせホーンラビットの集団に投げると、かなり数を減らせた。
「風よ」
身体に風を纏わせ突っ込む。
「ビッ!」
こいつら角を飛ばせるのか!?
避けきれないと思ったが、風を纏わせていたおかげで一発も当たらなかった。
驚かされたが問題なく殲滅できた。
「あの、なにもしてないんだけど?」
「俺のことは気にせずスキルを使ってくれていいぞ。当たりそうだったら避けるから」
「そういうことじゃないんだけど…」
響華のレベルが上がったし順調だな。
2人だけなら本当に順調なんだよなぁ。
やっぱ断ればよかった。
リポーターは今もカメラに向けて騒いでいる。
先に進もう。この先を見れば大人しくなるだろ。
「そういえば先程から変な匂いが強くないですか?」
「そうですね」
響華は顔色が悪くなってきている。
血の匂いだもんな。
角を曲がるとぐちゃぐちゃになった死体があった。ホーンラビットが食べていたんだろう。
「これは…」
「う、うぉぇ…」
リポーターの顔は真っ青になり、カメラマンは吐いている。
「こういうのを撮りたかったんだろ?喜べよ」
「え…?」
「自分で言ってただろ?真実を届けたいってさ。これが真実だよ。災厄の中で死体は珍しいものじゃない」
「めずらしくない?死体が?」
「ほら、あそこを見てみろよ」
俺が指をさした方向をリポーターの人が見ると腰を抜かしてしまった。
「ほらあんたもだ。カメラマンなんだろ?ちゃんと撮らないとさ」
「や、やめてくれ…」
「じゃあ俺が代わりに撮ってやるよ」
「ま、待ってくれ!」
カメラを取り上げ、ホーンラビットがむしゃむしゃと人の死体を食べているところを映した。
かなりグロい映像だな。オヤツを食べているときにこんなシーンが流れたら嫌だな。
「これが現実なんだよ。それをあんたらは遠足気分で来やがって…。さっさと帰るぞ」
「…ま、待ってください!大人しくしますので…一緒に連れて行ってください」
「カメラマンの人は?嫌そうだけど?」
「私がカメラを持ちます。襲われても気にしないでください」
心を折るつもりだったんだけどな。
カメラマンの人も怖がりながらも覚悟を決めたみたいだし、しょうがないか。
「ちょっと、嘘でしょ。連れて行くの?」
「しょうがないだろ?プロ根性ってやつじゃないか?襲われても気にしなくていいって言ってるし、ほっとけばいいよ」
「…どうせほっとけないくせに」
「なんか言ったか?」
「別にー?なーんも言ってませーん」
聞こえてんだよ。
はぁ、本格的に危なくなったら帰らせよう。
「ありがとうございます!」
「自分のことは自分でやれよ?怪我しても知らないからな」
「わかってます!」
覚悟が決まってるんならいいか。
さっきよりも声の大きさが控えめで気をつけてるしな。
死体を食べていたホーンラビットにナイフを投げて倒し、先に進む。
「広いな。やっと1階を回りきれたな」
「わざわざ全部見る必要ある?」
「1階に中ボス級のやつが来たりするんだよ」
「経験談ですか?」
「そうだ。中ボスみたいな存在はあんな雑魚とはレベルが違うから気をつけろよ」
「わかった」
「わかりました」
カメラマンも頷いている。
従順になったな。逆に怖い。
「その中ボスクラスの敵を無視するわけにはいかないの?」
「ボスと戦ってるときにこられたら面倒だろ」
「それもそっか」
「あと中ボスやボスを倒すと特別報酬っていうのがもらえるぞ。こういう服とか」
「えー、厨二病みたいな服いらない」
「別にこれがもらえるわけじゃねーよ!」
こいつ言いやがった!
気にしてるのに!
2階を歩いているがまだモンスターは見えない。
「翔琉って何歳なの?」
「24歳だけど」
「マジで?めっちゃ若く見えるね」
「厨二病患者に見えるからか?バカにしやがって」
「そうじゃなくて!雰囲気っていうの?なんか若く感じる」
「そうかよ。響華はいくつなんだ?」
「女の子に年齢を聞くなんてサイテー」
「ぶっ飛ばしてやろうか」
「きゃーこわーい」
棒読みだし卑怯だし。なんなんだこいつ。
「うそうそ、23歳だよ」
「1個下かよ。そんな歳でタトゥーとか彫ってんのか」
「かっこいいでしょ?」
「あぁ、かっこいいな。似合ってるよ」
「えへへ、褒めんのうまいじゃん」
雑談をしていると強い気配を感じた。
「響華、止まれ」
「え?なに?」
「この先に中ボスがいる。覚悟しとけよ」
「ほんとに?なんでわかんの?」
「感覚を上げてるおかげで強い気配ならわかるんだよ」
先にすすむと大きめの動物型モンスターがいた。
「クマ?」
「クマだな」
「でも普通のクマと全然違くない?剣と盾を持って立ってるよ!?」
「モンスターだからな」
名前はグリズリーナイト。
強敵だったホブゴブリンより強そうだな。
「どうするの?」
「気付かれてないうちに少しでもダメージを与えよう」
「またナイフを投げるの?」
「そうだな。響華は水刃を飛ばせ」
「わかった」
前まで使ってた短刀を取り出し、火と風を纏わせ全力で投げ、グリズリーナイトに命中すると爆発し、煙でよく見えないが響華の水刃も当たったはずだ。
煙がなくなってくると、だんだんグリズリーナイトの姿が見えるようになってきた。
「グォォォ…」
「瀕死だな」
片腕が吹き飛び、全身も血まみれ。
まともに戦えないだろうな。
「終わりだ」
ナイフを投げ爆発させた。
【レベルアップしました】
【強敵を討伐しました】
【特別報酬:魔獣肉×10を入手しました】
【20レベルになりました】
【レベル報酬:スキル石を獲得しました】
え?魔獣肉?特別報酬なのにしょぼくないか?
それにレベル報酬…スキル石?
使用すると、2つの中からスキルを選ぶことができるらしい。




