17話
「お兄ちゃーん!起きて!」
「…痛いんだけど」
「はやくきて!お客さん!」
「お客さん?」
疲れてんだからまだ寝させてくれよ。
ていうか今何時だ?…13時?
あー、これは寝すぎだな…起きるか、寝すぎて身体が重い。
俺にお客さんって誰だ?
友達もいないし、心当たりがなさすぎる。
リビングに行くと知らない人が2人いた。
「あなたが災厄を退いた燈黒翔琉さんですね」
「災厄?それに誰ですか?」
「失礼しました。私は如月 風夏と申します」
「えー!?もしかして本当に化粧品やアクセサリーを出してる会社の社長!?」
「おや、ご存知でしたか」
「有名な人?」
「お兄ちゃんってほんと何も知らないよね…」
妹から残念な目を向けられた。
簡単に言うと、今日本で最も人気で有名なブランドの社長のようだ。
なんで知ってんだ?って思ったらネットやテレビなどで注目されてよく見るからだそうだ。
「てめぇ、ウチの社長に失礼な態度をとりやがって…何様のつもりだ!?」
「やめなさい」
ゴリラみたいな人が怒っている。
「この人は?」
「私のボディガードの斉藤です。失礼な態度をとらせてしまい申し訳ございません」
「社長!こんな奴に頭を下げるなんて…!」
「黙りなさい」
「くっ…」
わぁ迫力あるなぁ…
女の人って怒るとめちゃくちゃ怖いな…
「今回は燈黒 翔琉様にしか頼めないと思い、伺いました」
「俺にしか?」
「時間がありませんので本題を。娘が覚醒者になり災厄から出ることができません。ですので助けだしていただきたいのです」
「災厄?」
「モンスター達が出現したところを今は災厄って呼んでるんだよ」
災厄か。わかりやすいしいいか。
「俺に死にに行けってことですか?」
「危険なのはわかっています…ですが、災厄を退けた貴方なら助け出せるんじゃないですか!?お願いします!私の娘を助けてください。お金ならいくらでもお支払いいたします」
成り行きでならともかく、わざわざ他人のために命を賭けるほど俺は優しくない。
「悪いんですけど無理です」
「今なんて言いやがった!」
「無理です。俺にできることはありません」
「てめぇ…そうだ、どうしても行かねーならお前の妹がどうなってもいいのか?」
「はぁ?」
こいつ、どういうつもりだ?
「ひっ」
「おい、あんたの方こそ何様なんだ?俺の妹をどうするつもりだって?」
「くっ…」
「翔琉、やめなさい。怖がってるじゃない」
さっきまで黙って聞いていた母さんが口を開いた。
「断る理由はなに?」
「行く理由がないだろ」
「目の前で困っている人がいるのに?」
「俺は初対面なのに命を賭けるほどお人好しじゃない」
「ふふ、後で絶対後悔するわよ?」
「…あーもう!わかったよ!」
目の前で困ってる人間は見捨てられず、その場で無視をしたとしても、後々気になって結局戻って声をかけに行かなきゃ気がすまない性格。
あのとき声をかけていればあの人は助かったんじゃ?って思ってしまうのが気持ち悪い。
偽善者とも言われることが多い。
…利用されることも多かったな。
「助けに行く。娘さんの写真は?」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
そんな顔しないでくれ。
一度断ったのが申し訳なくなる。
「急いでんだからさっさと助けに行けよ」
「なんか言ったか?あんたからぶっ飛ばしてもいいんだぞ?」
「ちっ、ガキが…」
「斉藤、あなたは車に戻りなさい。話がややこしくなります」
「社長!なんでこんなやつなんかを…!」
「では貴方が助けに行けるのですか?」
「ぐっ…」
なんなんだ?この茶番。
俺のことを睨みながら部屋を出て行ったぞ。
「ではお金はどれくらいを…」
「お金の話は母さんにしてくれ。俺は家族を守ってくれるならなんでもいい」
「貴方の力があれば守れると思うのですが…」
「色々な守り方があるだろ?できる範囲で守ってほしい。後ろ盾になってくれたりしても助かる」
「そういうことですか。わかりました」
話がはやくて助かる。
「20分ぐらい待ってほしい」
「可能であればすぐに行きたいのですが…」
「寝起きなんだよ。顔を洗ったりさせてほしい。その間に母さんと報酬の額を話しててくれ」
「面倒なこと押しつけないでよ」
「母さんが行けって言ったんだろ?それぐらい頼むよ」
「も〜。じゃあいくらぐらいくれますか?」
はぁ…またモンスターと戦うのか…
ゴブリンなら少しは余裕だけど、確定してるわけじゃないだろうしな。
デカイ虫とか出てきたらどうしよう。嫌だなぁ。
「準備できたぞ」
「おバカ!敬語を使いなさい!」
「いいんですよ。では行きましょうか」
「すみませんねぇ。うちの息子が」
斉藤に怒ってから敬語スイッチが壊れたんだよ。
「遅いぞ」
「すみません」
「しゃ、社長に言ったのではありません!そこのクソガキに…」
「場所は?」
「梅田です」
「梅田かぁ」
車に乗り、行くことになったが問題ぎ起きた。
「やばい、気持ち悪い…」
斉藤の運転が荒すぎて酔ってしまった。
もともと車酔いしやすい体質なのもあって地獄だ。
30分ほどで着いたので助かった。
「大丈夫ですか?」
「だい…じょう…ぶ」
「けっ、こんなガキになにができんだよ」
場所は大阪駅の近くにある1階から7階まである建物だ。
ボスの位置は多分上だな。上から強い気配を感じる。
建物の周辺にいる人も多いな。
警察や警備員の人達が通行止めなどして止まってはいるが、写真を撮ったりしている人がいて溢れている。
「何階にいるかわかるか?」
「5階から動けないと言ってから連絡ができなくなりました」
「5階か…」
「大丈夫、ですよね?」
「覚悟はしておいたほうがいいな」
「そうですよね…」
「気を使ったことも言えねーのか?」
無視だ無視。
警備員のところまで行くと、昨日は見なかったカメラマンがいた。
絡まれたくないな。
「ねぇ、もしかしてあなた、燈黒 翔琉じゃない?」
「…だれ?」
近付いてきているのはわかってたがあまりにも躊躇なく話しかけられたので驚いた。
振り返ると首と鎖骨の間あたりにタトゥーを彫っている女性だった。
「あぁごめんね?テレビで見たからあなたのことを知ってるんだ」
「そうなんだ。それじゃ」
「待って待って!この中に入るんでしょ?私も連れてって!」
「覚醒者なのか?」
「そうよ!私のことは響華って呼んで!」
「職業は?」
「魔法使い!」
龍と同じ魔法使いか。
正直来てくれるとありがたいな。
「ついてきてもいいけど、守れないからな?」
「付与士の子は守ってたくせに」
「守ってねーよ。離れてもらってただけだ」
「じゃあ大丈夫ね」
まぁ魔法使いだし後ろにいるから大丈夫だろう。
できるだけ守ってやろう。
「レベルは?」
「…3なんだけど」
「戦ったことはあるんだな。慣れていけばいいよ」
「わかった」
レベル3なら自分のスキルも把握はできてるだろうし大丈夫だろ。
「パーティ申請をしたんだけどきたか?」
「こうかな?なれた?」
「なれたな。よろしく」
「うん。よろしく!」
レベル3、装備無し。名前は樋口 響華。
まぁなんとかなるだろう。
「準備はできましたか?」
「あぁ。もういける」
「え、知り合いだったんだ。あなたも入るの?」
「この人に頼まれてここに来たんだよ。元々は俺1人で入るつもりだったから、響華が来てくれて心強いよ」
「19レベルで防具もちゃんとしてるくせにどの口が言ってんのよ。まさかここまで強いとは思わなかったわ」
レベルの見方とかも教えずにわかったのか。
女性は要領が良い人が多くていいな。
あれ?周りが騒がしくなってないか?
「あなたは!?世界で初めて災厄を退けた燈黒翔琉さんではないですか!?もしかしてこの場所の災厄も払っていただけるのでしょうか!?」
リポーターの人が目を輝かせながら来た。
響華も如月さんも逃げてるし、アイツら…
「燈黒さん!どうなんですか!」
「あーはい、そうですね。今日はこの中にいる人を助けに来ました」
「やはりそうだったのですね!ネットでは最強の厨二病患者や聖人のオタクなど言われていますがそのあたりはどう思っていますか!?」
「うわぁ…もう、なんでもいいです」
最強の厨二病患者…効くなぁ。
ゴブリンジェネラルの一撃と同じぐらい効く…
俺がネットでの呼び名を聞いてダメージを受けていると、リポーターの人がそれを感じ取りあたふたしている。
「あ、えーと、その…私達もご一緒させていただいてもよろしいでしょうか!」
「はい?」
「私達は内部がどのようになっているかをこの国、いや、世界に発信しなければなりません!昨日放送していたテレビ局は色々と編集していたので真実を届けたいんです!」
編集しながら放送してたのか。
もしかして死体が映らないようにとか血を最小限にしたりしていたのか?
「俺はあなた達を守ることができません。それに死ぬ可能性も高いです。それでもいいならついてきていいですよ」
「わかりました!入るときは教えてくださいね!」
本当にわかってんのか?
遠足気分で来られると怖いんだけど…
「ちょっと!あの人達もくるつもりなの!?」
「さっさと逃げてった奴がうるせーよ」
「ご、ごめん」
響華が文句を言いたくなるのもわかる。
「どうせ死体を見たらすぐ戻りたくなる」
「そ、そうね」
「まだ慣れないか?」
「…慣れる気がしないかな」
「それでいいよ。慣れる方がおかしいからさ」
「ごめんね」
謝んなくていいのにな。
死体になんか慣れない方がいい。
「行くか」
「うん、行こう」
「燈黒さん、本当にありがとうございます」
「礼なら娘が無事に戻ってきてから言ってくれ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:燈黒 翔琉 レベル:19
職業:忍
HP:675 MP:290
筋力:50 防御力:1
速度:29 知能:2
感覚:20 運:1
スキルポイント:0
<スキル>
隠密 煙幕 風 空蝉 まきびし
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステータスも上げたし今回はリュックの中に飲み物と食べ物も入れてきて準備万端だ。
「燈黒さん!もう行くんですね!」
はぁ、まぁいい。
帰りたいって言ったらすぐに帰そう…。




