エピローグ(宅配便ドライバー)
「銀河屋?ああ、最近“ネリマ銀河ステーション”って看板に変わってたよ」
宅配便ドライバーの俺は、毎日この道を通る。
配達先は、向かいの文栄堂書店だったり、近くのマンションだったり。
でも、銀河屋の前を通るときだけは、ちょっと減速する。
なんか、気になるんだよな。
この前なんて、店の前で宇宙服みたいなの着た人が「交信中」とか言っててさ。
冷凍庫の前には「推進エンジン点検中」って札が出てた。
レジでは「銀河通貨、対応可」って書いてあったけど、Suica使えた。
店内放送は、たまに「ネリマ銀河、発進準備完了」とか流れる。
でも、客は普通にキャベツ買ってる。
なんかもう、そういう店なんだよな。
SNSじゃ「#銀河屋なう」がまだトレンド入りしてるし、
高校生が文化祭で銀河屋の映画を上映したって話も聞いた。
テレビのローカル枠で「練馬発・宇宙系スーパー」って特集もやってたっけ。
俺?
俺はただ、荷物を運んでるだけ。
でも、銀河屋の前を通るときだけは、ちょっとだけ宇宙を感じる。
今日も、店の前には誰かが立ってた。
宇宙船の発進を待ってるみたいに、空を見上げてた。
俺はエンジンをかけ直して、ゆっくり走り出す。
銀河屋の前を通り過ぎながら、心の中でつぶやいた。
「練馬って、時々、銀河になるんだよな」




