第4章 銀河連邦規定第42条(小林ユウカ)
レジに立つとき、ユウカはいつも“任務”を思い出す。
この星の文明を観察し、必要があれば介入する。
それが、銀河連邦監視員としての使命だった(という設定だった)。
今日の銀河屋は、明らかに異常だった。
冷凍庫の前で叫ぶ青年。
カメラを回す女子高生。
カートで突撃する警備員。
そして、レタスに倒れるその姿。
ユウカは静かにレジを閉じた。
「通信管制室、封鎖します」
誰に言うでもなく、独り言のように。
だが、彼女の中ではすべてが“銀河規定”に基づいていた。
——銀河連邦規定第42条。
「惑星内の文明が自己崩壊の兆候を示した場合、監視員は一時的に干渉を許可される」
つまり、今がその時だった。
ユウカはレジ横のマイクを手に取った。
「こちら銀河連邦監視員、小林ユウカ。現在、ネリマ銀河にて文明的混乱を確認。
ただちに銀河裁判の準備を開始します」
マイクはもちろん、店内放送にはつながっていない。
だが、彼女の中では“全銀河に向けた緊急通達”だった。
そのとき、老婦人がレジにやってきた。
「これ、ポイントつくかしら?」
ユウカは一瞬考えた。
この星の通貨制度は複雑だ。ポイントカード、クーポン、電子マネー。
だが、銀河連邦の通貨換算表によれば——
「はい、銀河通貨で換算すると、0.8ポイント加算されます」
「まぁ、親切ねぇ」
老婦人は満足げに去っていった。
ユウカはそっと、レジの引き出しを閉じた。
「この星の民度、まだ観察の余地あり」
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SNS投稿まとめ
@nerima_jk2:レジ係が「銀河連邦の監視員」とか言ってた。練馬、今日どうした。 #銀河屋なう
@coupon_mama:銀河通貨でポイントついた。意味わかんないけど得した気がする #レジ係すごい
@super_staff:レジ係が独自ルールで対応中。クレームは店長まで #店内混乱中




