第2章 撮れ高は銀河級(佐々木ミチル)
カメラのレンズ越しに見る世界は、いつだって少しだけドラマチックだ。
佐々木ミチルは、銀河屋の冷凍庫前で両手を広げて叫ぶ青年を見て、確信した。
「これ、撮れる」
彼女はバッグからミラーレス一眼を取り出し、電源を入れた。
レンズを向けると、青年は冷気を浴びながら叫んでいた。
「ネリマ銀河、発進まであと300秒!」
完璧だった。演技じゃない。リアルだ。
いや、演技だったとしても、撮れ高は銀河級。
ミチルはシャッターを切る。動画モードに切り替え、録音もオン。
「タイトルは…『銀河屋、最後の航海』。ジャンルは…SFドキュメンタリー。いや、青春群像劇?」
そのとき、警備員らしき青年がカートを押して走ってきた。
「危険人物発見!冷凍庫前、交戦準備!」
ミチルは即座にカメラを向けた。
「いいねいいね、緊迫感あるよ!そのまま突っ込んで!」
警備員は一瞬止まり、彼女を見た。
「君、共犯か?」
「違う違う、私は監督。これは作品なの。リアルを撮ってるの」
「リアル…?」
警備員は混乱した顔でカートを握り直す。
ミチルはその表情をズームで捉えた。
「その顔、いい。混乱と使命感が混ざってる。まさに“銀河の守護者”」
店内放送が再び鳴る。
「本日限り!銀河屋、閉店セール開催中!」
ミチルはそれをナレーション風に心の中で読み上げた。
「銀河屋——それは、練馬に浮かぶ最後の宇宙船だった」
彼女の脳内では、すでにエンドロールが流れ始めていた。
BGMは壮大なストリングス。
出演者:星野トオル、田中ゴロー、レジ係ユウカ、老婦人マツコ。
監督・撮影・編集:佐々木ミチル。
「…これ、文化祭で上映しようかな」
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SNS投稿まとめ
@nerima_jk2:銀河屋で映画撮ってる女子いた。演技ガチすぎて逆に怖いwww #銀河屋なう
@filmclub_tokyo:練馬銀河屋、撮影中?リアルすぎてドキュメンタリーかと思った #撮れ高
@super_staff:カメラ回してる人いますが、許可は取ってません #店内混乱中




