第1章 発射準備完了(星野トオル)
冷凍庫の前に立った瞬間、星野トオルは確信した。
「ここだ。ここが推進エンジンだ」
スーパー銀河屋の冷凍庫は、彼の目には宇宙船〈ネリマ・フォース号〉の心臓部にしか見えなかった。
店内放送が鳴る。
「本日限り!銀河屋、閉店セール開催中!」
その声は、彼にはこう聞こえた。
「本日限り!ネリマ銀河、発射準備完了!」
星野はポケットからメモ帳を取り出す。そこにはびっしりと“宇宙船の構造図”が描かれていた。
冷凍庫=推進エンジン。
レジ=通信管制室。
野菜コーナー=酸素供給区画。
店長室=艦長室。
そして、トイレ=ワープゲート。
「よし、点火準備だ」
星野は冷凍庫の扉を開け、冷気を顔に浴びながら、両手を広げた。
「ネリマ銀河、発進まであと300秒!」
周囲の客がちらちらと彼を見る。
だが星野は気にしない。彼は今、宇宙の命運を握っているのだ。
その時、背後から声がした。
「あの、すみません。冷凍庫、開けっぱなしだと霜つくんで…」
振り返ると、レジ係の女子が立っていた。制服姿、冷静な目。
星野は彼女を見て、すぐに理解した。
「銀河連邦の監視員か…!」
彼は敬礼した。
「推進エンジン、異常なし。発進準備、完了です」
女子は一瞬だけ沈黙し、そして言った。
「…レジ、閉鎖しますね」
星野は頷いた。
「了解。通信管制室、封鎖。敵の妨害を防ぐためだな」
その瞬間、店内のBGMが切り替わった。
軽快なポップスが流れ始める。
星野はそれを“宇宙交信の開始音”と解釈した。
「交信開始!ネリマ銀河、応答せよ!」
星野は冷凍庫に向かって叫んだ。
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SNS投稿まとめ
@nerima_jk2:銀河屋で冷凍庫に話しかけてる人いたwww #銀河屋なう #ネリマ銀河
@tokyo_trucker:銀河屋前、なんか叫んでる。発進準備って聞こえた。 #謎
@super_staff:冷凍庫、開けっぱなし注意⚠️ #店内混乱中




