創世の暗躍
ハンバーガーを創り、食べる。
今向かってるのはライアス王国の王城。
理由は数十分前に遡る。
「create」
イメージしながら呟く。
すると俺の腕の中に突然現れる黒い猫。
コイツは見た目可愛らしい外見をしているがその実態は神獣、人型と獣型に変身することが出来、重火器限定だが創造魔法を使えるという強い子だ。
ちなみに名前はアイ。
「アイ、あの異世界人の監視を頼む」
そう言うと、アイはコクリと頷き宿屋の窓から飛び出ていった。
そして俺はベッドに寝そべり、視界と聴覚をアイとシンクロさせる。
………………成る程、異世界人の名前はヒロっていうのか。
…………フィッシュバーガーだと!? 邪道だ……シンプルハンバーガーが王者なのに……。
…………王様に許可を……か。
ガバッと飛び起きる。
アイとのシンクロを切り、ある物を創る。
それは超時空エンジン。
とあるゲームで移動速度がほぼワープになり、99マス動けるようになる装備品だ。
そして俺は窓から飛び出し、その場から掻き消えた。
1秒後、この星を5周ほどして王城に付いた。ここからが冒頭の部分。
まだあの水晶玉の電波(?)は王様に届いてない筈だ。
駆ける。
0.1秒くらいで王様の部屋の前に辿り着いた。
いきなり現れた俺に驚いた見張り2人を壁に叩きつけて気絶させる、見た目重厚そうな扉を創り出した朱い刀――双焔――でまるで紙を切るかのように切り裂く。
豪華な装飾が散りばめながらも、質素さを失ってない部屋、広さは相当なものだが物が殆ど置いてなく、机と椅子が数脚あるだけだった
そして、王様――銀髪黒眼の小太りなおっさん――が驚いたように蒼髪碧眼の俺を見る。
バレると動きづらくなるから変えといったんだぜ。
「な、何者だ!」
「俺? 俺は……そうだな、レイトかな」
クリエイトを早口で言うとレイトになるし。
「何用で此処に来た……、もしや魔王の部下か?」
言って、王様が座ってる椅子に立てかけてあった黄金の剣を取り出した。
うげぇ、あの剣神話時代に俺が創ったやつじゃん。
能力は確か……王の選定と防御不可の斬撃だったか……。
あーそうだ、思い出した。『我が剣に斬れぬもの無し』ってやりたくて創ったネタ武器だったなアレ。
「違うよ王様、俺はお願い事があって来たんだ」
「お願い事?」
その時タイミングがいいのか悪いのか、机の上に置いてあった水晶玉が発光した。
「……その水晶玉、通話用水晶玉だろ? 出ろよ、相手はお前の大切なお姫様だから」
「――っ!」
王様はわき目も振らず水晶玉に飛びついた。
そんな王様に俺は背後から忍び寄り、刀を首に突きつけた。
「いいか……今からは俺が言うことを真似するんだ、もし違ったら……」
王様は汗を流しながらコクリと頷いた。
『もしもし……』
水晶玉から声がした。
「何だ」
「何だ」
『父ですか? えっと、実は……』
声の主はメルというらしい、あの双子の片割れか……。
メルはヒロという異世界の勇者と共に旅に出るということを伝えてきた。
「許可する」
「きょ、許可する」
王様は狼狽えてるようだ、そりゃそうだわな。
「身体には気をつけろよ、あと、」
「か、身体には気をつけろよ、あと、」
『あと?』
「そのヒロ君に伝えてくれ」
「その、ヒロ君に伝えてくれ」
『はい?』
「襲ったら殺す」
「襲ったら殺す!」
いや別に叫ばなくても……。
そこで通信は途絶えた。ていうかこちらから切った。
「あんがとな王様」
そう言って刀を離す。
「一体……何が目的で?」
「秘密。でもまあ今日は悪かったよ、お詫びにこれあげる」
create ポケットに手を突っ込み、あたかもそこから取り出したように演出する。
創ったのは一本の剣。
白いフォルムに青い宝石が幾つか散りばめられた大剣。
「これは退魔の剣といって、魔人や魔物などの敵に非常に有用な武器でね、あげる」
そう言って机に立てかけておく。
「お主……何者だ?」
「さっき言ったじゃん、レイトだよ」
わざとらしく溜め息をつく。
「違「じゃあね!」おい!」
王様が何か言おうとしたけど無視。
超時空エンジンを使って走る。
あっという間に俺は宿屋の前についた。
ふわっと欠伸。もう寝ようか。