創世の接触
少し短いデス
俺の勘があってたかどうかは定かではないが、地平線に町が見えた。
とりあえずあそこで情報収集するか。
俺は歩く速度を速めた。
ガヤガヤと人々が入り乱れる町の喧騒。
石畳の道路とレンガの家、馬車や警備の騎士。
そんな明らかに中世ヨーロッパ的な街並みなのに何で服装がジャージとかジーンズとかT‐シャツとか妙に現代風なんだよ。それっぽい面影はローブくらいしかないぞ。
しかも通行人がさっきからチラチラとこっち見てくるんだよなー、そんなに黒髪が珍しいか……て。
黒髪?
サッと路地裏に入って人気が無いところに入り込む。
やべーやべー、この世界黒髪いないんだった。そりゃ注目浴びるわ。
俺特製の即効性のある染髪料とカラーコンタクトを創り出す。
それを使い、髪と瞳の色を変える。
白髪金眼、これもちょっと珍しいがまぁ黒髪よりマシだろう。
再び表通りに出る。
すると突然男が高速で男の前を横切った。
「……は?」
飛んできた男は数m先の噴水に激突していた。
振り返ると、今度は禿げた男が高速で飛んできた。
それもまた噴水に当たり、動かなくなった。
……死んでは、ないな。相当危ないが。
そして俺はその男たちを蹴り飛ばし殴り飛ばした男を見る。
灰色のパーカーに青いジーンズ。パーカーに付いてるフードで顔はよく見えない。
体つきは大の大人を蹴り飛ばせるような体ではなく、むしろ細身だ。
そんな体で大の大人を蹴り飛ばせるとしたらそれは魔法を使ったことになるがあいつには俺と同じく魔力の反応が無い。
つまり――――
「……ビンゴ」
ボソッと呟く。
そして歩き出す。その男に向かって。
男の後ろに付いてた黒いローブの女の子2人が俺に気づく。一拍遅れて男も俺に気づいた。
周りの人間は俺たちを凝視しているようだ。まあこんだけ目立てば当然か。
腰に差してある不可視の剣に手を当てる。
これが最後の確認だ。
突然剣が現れたことにより男と女の子2人と観客に動揺が広がる。
女の子たちはポケットに手を突っ込み武器をいつでも取り出せるように構え、男も拳を前に出し構えた。
そんなに身構えなくても何もしないのにな、と思いながら剣を腰から外す。
そしてそれを男に向かって投げた。
「!」
男は狼狽えながらもしっかりキャッチした。そしてその瞬間に見えなくなるオレンジ色の剣。
確定だ……、コイツは異世界人確定。
俺は笑みを深くする。尤も1000年以上も人と接してなかったからうまく笑えてる自信は無いが。
「見つけた」
思わず呟く。
そして異世界人の横を通り過ぎるときにこう言う。
「明日東の森で待っている、その剣を返しに来い」
こんなとこで重大な話するわけにもいかんしな。
それにコイツの後ろに控えてる女の子のフードから金髪と銀髪がはみ出ている、これは俺が古代から定めた『王族の証』だ、用心しといたほうがいい。
「あ……アンタは……!?」
男が言う。しかし考え事をしていた俺にその声は届かなかった。