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蒼聖の初戦闘

 軽い浮遊感。


 鳥がすぐ横を通り過ぎた。


 あれー? オレってただジャンプしただけなのになぁ。どうして空を飛んでるんだろ。


「勇者様ァ!?」


 遥か後ろからメルの声が聞こえた。てか勇者じゃないっての……あ、名前教えてなかった。


 そんなわけでオレは現在上空50mほどのところにジャンプで辿り着けました。


 やっぱ身体能力強化的なものが発動してんのかなぁ……、異世界補正で。


 数秒後着地。普通に着地したが痛くも何ともない。


 もう目の前が町だ。


「勇者ァ! どんだけ跳んでんのよ!」

「勇者様! ご無事ですか!」


 後ろから双子が息を切らして走ってきた、すまんな、こうなるとは思ってなかった。


「悪いな、オレも驚いてる。ところで言ってなかったがオレの名前は蒼井あおい ひろ、こっち風に言うとヒロ・アオイかな?」


 跳んだときにクシャクシャになった髪を整えながら言う。

 おそらくこの世界では珍しい黒髪を長くも短くもないまぁ……普通の髪型だ。

 一部くせ毛で跳ねてるけどまあ気にするほどじゃないし髪型とかはどうでもいい。


 ちなみに服装はフード付きのパーカーと青いジーンズだ。多分異世界じゃ目立つだろうなぁ……










 ……と、思ってた時期がオレにもありました。


 町に入ってみると、確かにローブとか異世界っぽいのを着てる人もいるけどそれ以外は普通に元の世界と一緒だった。少しホッとして少し残念だった。


「そのフードは常に被っててくださいね? 黒髪は目立ちますので」


 ……っというメルの忠告で今はフードを深く被ってるのだが、視界が狭くて落ち着かないな。


「ところでこれ何処に向かってるんだ?」

 何気なしにに訊いてみる。


「えっとですね……ちょっルリ、1人で行動しないで! アナタ迷子スキル高いんだから! ……っと、まず武器屋に向かおうと思います、素手はアレなので……」

「そっかセンキュ」

「せんきゅ?」

「あ! あのお菓子美味しそう!」

「ああ、オレの世界でのありがとうって意味で……おい! 単独行動するなよルリ! 迷子スキル高いんだろ?」

「お~か~し~! 放しなさいよ馬鹿!」

「ほほ~う、知らないんだなルリ、馬鹿って言ったやつが馬鹿なんだぞ?」

「え!? そうなの!? じゃあ……アホ!」

「残~念、アホって言ったやつがアホなんです~」

「むきー!」


 そんな感じで会話しつつ武器屋の前へ、明らかに叫びすぎて他の人に迷惑だった筈だが治安がいいのか誰かに絡まれるということはなかっ「おい! そこの三人組!」絡まれた。


 振り向くとそこには如何にもチンピラですという感じのガラの悪い四人組、それぞれ棍棒や斧などの思い思いの武器を持っている。


「何すか」

「金寄越せ」

「良い服着てんだからたんまり持ってんだろ?」

「おっと、女が2人もいんじゃねえか、お嬢ちゃん俺たちとイイコトしないか?」

「いや、俺は男がいいな」

「ギャハッハ!」


 次々に話しかけてくる悪漢ABCD、とりあえずアレだな、こんな白昼堂々と絡んでくる何て馬鹿じゃねえのコイツら。


 そして、テンプレだな、やっぱ。こういう世界なのかなぁ……。


「てめぇ……シカトしてんじゃねえぞ!」


 考え事していたオレを男たちは無視してたと判断したのか殴りかかってきた。

 しかも棍棒で。


「ヒロ!」「ヒロさん!」


 メルとルリが叫ぶ。次の瞬間、オレは頭部に衝撃を受けた。



 発泡スチロールで殴られたときくらいのね。


 バコンッと音を立てて壊れる棍棒。根元からポッキリだ。


 呆然とする男たち(と双子)の内の1人に蹴りをお見舞いする。


 比較的軽いものを蹴ったときの感触が脚から伝わり、男は空気を切って50m先までノーバウンドで飛び、着地後も数m転がった後噴水にぶつかって動かなくなった。


 ……やはり、相当強化されてるな。


「な……、何だてめぇ!」


 リーダー格っぽい禿げた男が斧を上段から振ってきた。


 オレはそれを左手一本で止めると右手で思いっきし男の腹を殴った。


 男は錐揉み回転しながらさっき蹴った男の方に飛んでいき、ノーバウンドで噴水に激突した。


「ば、化け物ォ!」

「ひぃ~!」


 残りの2人が脇目も振らず逃げていく。

 おいおい、仲間を見捨てんなよ。


 戦闘が終わってふぅっと一息つくと興奮した様子で双子が話しかけてきた。


「凄いですねヒロさん! そんな細腕であんな剛力……凄いです!」

「べ、別にアンタがやらなくてもアタシだってあれ位できるんだからね! 調子に乗らないでよ! ……でもなかなかやるじゃない……」


 ツンデレ全開だなルリ、それにしてもここまで強化されてるとはオレも予想外だった。


「武器はもう必要無さそうですね……むしろ邪魔になるだけかと思います、その腕力に耐えられる武器はありません」


 メルのその一言で武器屋の前から立ち去ろうとした、



 その時。


「……っ!」


 前方からやってくる男に目を奪われた。


 肩までかかる白髪に、輝く金色の瞳、2枚目な容姿、そして何よりも凄いのは圧倒的な存在感。

 周囲の人が避けるほどの絶対感。私は神ですといわれたら思わず納得しちゃいそうな雰囲気をかもしだしてる。


 メルとルリもその男を凝視している。


 男は此方に真っ直ぐ歩んでくる、着ている真っ赤なローブをはためかせ、一歩一歩進んでくる。


 男の口には微笑が浮かんでいる、目線は明らかにオレ。


 何なんだ……コイツ……!



 男がソッと自分の腰に手を添えた。

 すると突然男の手に橙色の鞘の剣が現れる。


「!」


 急いで臨戦態勢をとる。双子もすぐに武器を取り出せるようにポケットに手を突っ込んだ。


 そして男はその剣を――投げた。


 オレに向かって放物線を描いて落ちてくる剣。思わずそれをキャッチしてしまった。


 すると突如その剣は消えた。いや、姿は見えないが持ってる感触はある、つまり不可視になったということか?


 男を見ると、さらに笑みを深くしていた。


「――見つけた」


 そう呟くのが聞こえた。そして男はオレの横をすり抜けぎわに言った。


「明日東の森で待っている、その剣を返しに来い」


 そして双子の間を抜ける。


「あ……アンタは……?」


 思わず言葉が出た。


 しかし、男はそれに応えず町の喧騒に溶け込んでいった。

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