表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

蒼聖の世界移動

 目が覚める。


 まず目に入って来たのは黒いローブを身にまとった2人の少女。

 そしてロープレの召喚の間っぽい石垣で出来た三畳くらいの部屋、オレの足元には黄色い線で描かれた魔法陣らしきもの。


「「――――出てきた」」


 双子だろうか? 声の質が同じな少女たちが同時にポツリと呟く。


「「召喚成功ーーー! イエーイ!」」


 何やらハイタッチしだした、てか召喚って……やっぱりそういうこと(・・・・・・)なのか?


「あ、そうだルリ、勇者様に挨拶しなくちゃ」「そうだったねメル、まずはフードを取りましょう」


 そう言って双子はフードを脱ぎ出す。


 ――ほう、思わず感嘆の溜め息がでる。


 双子の片方はおっとりとした垂れ目の銀髪ストレート、片方は強気そうな釣り目のちょっとクセのある金髪ツインテイル。


 どちらも美人だ、いや、美少女か?


 類似点が身長と声色だけだからもしかしたら二卵生かただの姉妹って可能性もあるか。


「申し遅れました勇者様、わたくしはライアス王国第一王女兼第一巫女姫であります、メル=フォレス=ライアスと申します」

 銀髪ストレートの方が呆然としてるオレに頭を下げてきた。


「アタシはライアス王国第二王女兼第二巫女姫のルリ=フォレス=ライアスだよ、メルは双子の姉ね、ヨロシク勇者様」

 金髪ツインテイルが両手を組んだ偉そうな姿勢で挨拶してきた。ウザイ。


「成る程、じゃあメルとルリ、早速だがオレを元の世界に返せ」


 礼儀? 知るかそんなもん。


「な! 王女であるアタシに向かって軽々しく呼び捨てで敬語も無しなんて……無礼な!」

「だってオレこの世界の住人じゃ無いんだろ? じゃあ相手が誰だろうとオレが敬意を示す必要はないしその勇者とやらになる義務も無い、分かったら返せ」

「このっ……!」「やめなさいルリ、この方の言うとおりだよ」


 お、姉の方はマトモらしいな。


「妹が失礼しました勇者様、しかし申し訳ないのですが元の世界に帰す方法は無いのです」

「……だよなぁ」


 こういうのはお約束だ。


 腕を組んでこちらを睨んでくる金髪ツインテイルを無視して思考する。さてどうしよう。




「メルぅ」

「はい、何でしょう」

「何で勇者とやらが必要なんだ?」


 まずは情報だ。


「それはですね……」



 メルの話を掻い摘むとこうだ。


 10年ほど前に突如神殿から巨大な生物が出てきて、最初は神様が出てきたのかと思ったら人々を襲い始めたのでそいつらは悪魔とされた。

 そしてその混乱に乗って神話時代に封印されてた魔王が復活してしまったという。

 大陸一領土が大きいライアス王国以外の国は皆魔王軍に呑み込まれたらしい、そして次はライアス王国だということで怯えた国王が娘2人に命じて今回の召喚を行ったという。


 何ソレ面白い。


「じゃあ次は……魔法ってあるよね?」

「? 当然じゃないですか、魔法無しじゃあ貴方を喚ぶことすら出来ませんよ」


 あ、やっぱりあれ召喚魔法かなんかなんだ。


 つまり……オレにも魔法が使えるかもしれない。


 しかもさっきからやけに身体が軽いし、召喚の特典ってやつかね?


「じゃあ召喚魔法使って来た人に身体能力強化とかある?」

「いえ、そんな便利なものは……」


 あれ? じゃあ何だろうこの身体の軽さ。


「まあ質問はこんなもんかな……、結論から言うと、オレは勇者なんかになるつもりは無い」


 そうですか、とシュンとなるメル。


「ちょっと! メルを悲しませたら殺すわよ!」


 物騒ですなルリさん、でも殺気が無いし迫力も無い、五点だな。


「――けど、魔王や悪魔退治は手伝ってやる」

「!」


 途端に明るい顔になるメル、しかしすぐ困惑顔になる。


「それって勇者になるってことじゃないの?」


 ルリが尋ねてきた。


「違うよ、勇者は国の象徴にされちまうだろ? オレはそんなのヤダし王国なんてものに関わるのもヤダ」


 つまり……。


「オレは傭兵か冒険者になるよ、なぁに、召喚魔法は失敗したということにしとけ、そうすればお咎めはないだろ」


 傭兵か冒険者、これなら修行しながら生活費も稼げて一石二鳥だろう。


 驚愕している妹と何か納得したような顔の姉が目の前にいる。

 メルは聡明な奴だな。


「そんなわけで誰にも見つからず街に降りたい、そこまでは手を貸してください」


 最後だけ敬語にしたのは何となくだ。

 双子は数秒思案すると、目を合わせて頷き合った後口を開いた。


「わかりました、着いてきてください」


 メルがお辞儀をしながら言う、ルリは相変わらず腕を組んでいる。


「さ、着いてきて」


 ルリを先頭に一同は歩いていく。

 部屋の外に出ると長い廊下が続いていた。


「ルリ」「わかってる」


 扉の近くの壁にルリは手を当て、呪文のようなものを唱えた。


「風よ、索敵をしろ、“search”」


 つーかこいつらが使ってる言語が普通に日本語なんだが、翻訳魔法とか使ってるのかな?


 しばらく壁に手を当ててたルリが唐突に手を離した。


「大丈夫、この壁の向こうには誰もいない」


ああ、search、サーチか索敵だな? 呪文の最初に風よ、とか言ってたから風魔法かな?


「わかりました、下がっててください2人共、……土よ、その形を崩せ、“collapse”」


 ボロッと石垣で出来た壁が泥になって崩れた。


 collapse、崩壊か、崩壊ってほど派手じゃないな。


「此処を抜ければすぐ街に着けますよ」


 ホントだ、壁に開いた穴から街が見える。


「ありがとな2人共、礼を言う」

「いえいえ」

「べ、別に礼を言われるようなことしてないわよっ!」


 ……………………これは。


「ルリはツンデレか……流石異世界こんなのもいるんだ」

「つんでれ? 何ですかソレ?」


 うん? もしかしたらこういう言葉は通じないのかな。


「何2人でコソコソ話してるのよ! サッサと行くわよ!」

 ルリは穴から出かけてた。


「ああ、……って何でお前も来るの?」

「私も行きますよ?」

「はぁ!?」


 何で!?


「見聞を広めるためです」


 メルは澄ました顔で言う。


「要するに窮屈で格式張った王宮生活に嫌気がさしてきた時にちょうど貴方が冒険者になるなんて言うからどうせならということで一緒に行きましょうということです」

「そりゃまたテンプレな……」

「てんぷれ?」


 これも通じないか。


「……断ったら?」

「衛兵を速攻で呼びます」


 脅しだろこれ。


「はぁ……好きにしろ」

「イエーイ!」


 ハイタッチする双子、ハイタッチ好きだな。


「それで……お前らは準備とかいいのか? その、お金とか着替えとか」


「もーまんだいです、何とこの黒いローブに付いてるポケットは亜空間に繋がってて大量に収納ができるのです、この中に色々と入ってます」


 ローブの裾をひらひらさせるメル、便利だがこの世界テンプレ多すぎないか?


「んじゃあ行くか、ルリ、メル」

「はい」

「遅いのよ、サッサと行こ」


 オレは飛び出した。

眠い……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ