蒼聖のvsアイ
携帯だと長く書けない気がする……
どうやらこの世界は典型的なファンタジーの世界らしく、一歩町を出ると軽く舗装されただけの道と、草原が広がってた。
俺たちは道から適等に離れ、向き合う。
もう鉄甲ははめている。ルリとメルが少し離れたとこからこっちを見てる。
俺は構えると、目の前の相手――アイを見た。
「ルリ、合図頼む」
「え? あ、わかった。始め!」
合図と共に、駆け出す。
アイは構えずに突っ立ってるだけだ。
俺は拳を振るった。
何故こんなことになったのかというと、話は遡る。
「アイ、俺と模擬戦してくれないか?」
事の始まりはその一言だった。
「い、いきなり何言ってんのよアンタ」
「……私は、構わない」
ルリが喚き、アイが静かに了承する。
「あ、そういえばクレットさんが純粋な戦闘力だけならクレットさんよりアイちゃんのほうが上だって言ってたわね」
「ま、マジで!? アイ、そんなに凄かったの!?」
思い出したように言ったメルの言葉に、ルリが驚く。
や、クレットが寄越すやつだからどうせ強いんだろうな~とか思ってたけどあいつより強いのかよ。
「……マスターはその純粋じゃない戦闘力が高すぎるだけどにぇ……」
アイがポツリと呟く。ルリとメルには聞こえなかったようだがオレにはばっちり聞こえてしまった。
純粋じゃない戦闘力……? 暗殺とか口喧嘩とかか? まあわかることじゃない、とにかく今はアイがどれくらい強いのかが重要だ。
「まあそんなわけでアイ、お前の強さが知りたい、模擬戦してくれ」
「……いいよ」
よし、じゃあ広い場所探すか。
回想終了。
オレの拳はアイが後ろに大きく下がることで避けられた。
「にゃー」
くるりと空中で一回転したアイは、猫のようなしなやかさで着地した。
そして一言。
「……死なないよね?」
両腕を前に差し出して確認するように、アイは言った。
――装填。
パアァっと光と共に何かがアイの手に現れた。
その現れたモノを、オレはよく知っていた。
黒いゴツゴツのフォルム、手のひらサイズのやばいもの。
生物を殺すために特化された無骨なデザイン。
「拳……銃……?」
引き金が、引かれた。
「……っ!」
落ち着け! オレ!
対拳銃は何度も経験したことだ、それにここは異世界、拳銃があってもおかしくはない!
銃口と風向きを計算し、避ける。
大丈夫だ、拳銃相手は得意――――
オレの思考は背後から聞こえた爆発音でかき消された。
「……ただの拳銃じゃないよ」
弾丸が着弾したであろう場所付近の草村が焼け焦げていた。
「弾が……爆発すんのかよ」
呟く。
成る程。確かにこれは厄介だ。
パンッパンッパンッっと子気味のいい音が鳴る。
爆発の規模はさっきの焼け焦げてた跡を見て大体予想している。
オレはなんとか避けると、アイに向かって突っ込んだ。
原因は不明だが、この世界でのオレの身体能力は前の2~3倍に増えている。
自分でもびっくりするくらいの超スピードで距離を詰め、回し蹴りでアイの手から拳銃を落とした。
「……!」
さらに追撃。しようと思ったが視界からアイが消えていた。
「な……!」
速い! スピードだけなら間違いなくオレより上!
「何処だ……」
右左後ろと見渡すが、姿が見えない。
「上……」
声がして、上を見る。
落下しながら銃口をこちらに向けるアイの姿があった。
「トーテンクロイツ」
バキュンと音が鳴った。
けど、発射されたのは弾じゃなくて紅蓮の炎。
回避行動は、間に合わなかった。
その日、オレたちがしばらく滞在した町――オルキュという町――の近場の草原で十字架の火柱が天を貫いた。
「……手加減はした」
最後に聴いたのは、そんな言葉で。
オレは意識を落とした。