蒼聖の愛撫
「にゃー」
っと声が聞こえた。
うっすらと目を開けるとそこにはオレの手を持って掌を自分の頭の上に乗せて撫でるように動かしてる黒髪――少し紫が混ざっている――で褐色の肌の少女が一人。
なんか目を細めて頬も赤らめて「にぅー」っと気持ちよさそうな声を出してる。
…………何この可愛い生物、誰?
「に、起きた」
どうやらオレが起きたことに気づいたようである。
すると少女はオレの手を離した。そして頭をオレの手に押さえつけてくる。
……撫でろってことか?
上半身だけ身体を起こす。今気づいたけどここは多分どっかの宿屋かな? 昨日泊まったとこにどことなく雰囲気が似てる。そんでオレが乗ってるのはベッドだ。
撫でてみた。艶のある黒髪は、サラサラと流れて、触るととても気持ちいい。
「にぅー……」
少女から漏れ出る声がとても可愛い、何これ? 持ち帰っていいの?
愛玩動物だなーっと楽しんでると、
「ヒロー起きたー?」
ガチャッとドアが開き、金髪の姫様が入ってきた。
そして少女の頭を撫で続けているオレを見て一言。
「変態ーーーー!」
……いや、この子が撫でてって言ったんですケド……。
そして少し後に入ってきた銀髪の姫様は、
「ヒロさん、ちょっとはルリの頭も撫でてやってください」
「何でよ!」
ルリ、そんなに顔を真っ赤にして怒らなくてもいいと思うんだが、そんなに撫でられるのイヤか。
「てかヒロ! いつまで撫でてんのよ!」
「いや、撫で心地すげー良いし」
「にー」
なんか猫みたいなやつだな、と思い喉を撫でてみる。
くすぐったそうに身を捩る少女だが、逃げる様子は無い。猫はこうすると喜ぶって本に書いてあったんだがホントだったんだな。
や、この子は猫じゃないか。
「あ、そういやこの子誰? メルルリの知り合い?」
「ああその子は……って、誰かわからないまま撫でてたんかい!」
うん。
「その子はアイっていうんですって、ほら、クレットさんの側にいた……」
「あ、あのルリを拉致った黒い少女か!」
思い出した、そういえばそうじゃん。
「……クレットは?」
あの後どうなったかが、知りたい。
「……にゃ?」
おっと撫でる手が止まってたようだ、撫でるのを再開する。
「クレットさんは……ヒロさんが気絶した後その子……アイさんを私たちに預けると言ってどこかへ行ってしまいました」
「……そうか」
あの鉄甲欲しかったなー。
「それと餞別だ、っとあの蒼い鉄甲置いていきましたよ」
「マジで!」
メルがポケットから蒼い鉄甲を取り出す。
でも重いのか、すぐに棚の上に置いた。
木製の棚がバキッて鳴って割れた。床に落ちたが、床もやばそうだったので急いで拾った。
どんだけ重いんだよ。
「……ヒロ」
む、黒い少女――アイが喋った。
「……撫でて」
「…………」
くっ、そんな上目遣い+赤い頬で言われたら体が勝手に動いちゃうじゃないか!
「にゅー……」
ワシャワシャと撫でる。すごく気持ちよさそうに目を細めてる。
ルリは諦めたのか、呆れたのか、額に手をやって溜め息を吐いてる。
メルはマイペースにニコニコしてる。
アイは「にゃふぅー」っととても気持ちよさそうだ。
もしかしたらこの中で一番の常識人はルリかもしれないとオレは思った。
一番好きなキャラはアイです