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蒼聖の戦闘前

 あの後オレたちは適等な宿屋で一泊した。


 宿屋で出た夕食は美味かった、特にメインディッシュのギガメテオビッグバンバーガーはヤバかった。

 半径1mくらいのハンバーガー四段重ね、しかも一段ごとに具が違う。


 結構値段が張るんじゃないか? と訊いてみたらハンバーガー自体が安いからそこまで、とのこと。


 ちなみに6割がルリの腹に納められた。



 そんなこんなで翌日。


 朝食として買ってきたサンドイッチを咬みつつ服を着る。

 昨日と同じ服だ。


 近いウチに服買わないとなぁ……。


「うしっ」


 準備完了。


 部屋のドアを開ける。


 廊下を歩き、リビングへ。


 2人はまだ来てないようだ。


 宿屋のおばちゃんに軽く会釈し、椅子に座る。


 2人が来るまでボーっとしながら待ってると突然膝に重みを感じた。


「ニャー」


 黒猫だった。


 ……猫!?


「猫って……絶滅危惧種じゃないか!」


 どうしてこんな場所に……ッてそうか、此処は異世界だったな。


「ニャー」


 恐る恐る撫でてみる。

 おー、オレ絶滅危惧種に触れてるよ、感激だ。


「ニャー」


 黒猫も気持ちよさそうにオレに擦りよってくる。


 やべー可愛い可愛い、絶滅危惧種な理由が分かる気がする。


 身体の隅々まで舐めるように撫でてると突然後ろから声をかけられた。


「ヒロさんおはようございます」

「……おはよう」


 上がメル、下がルリだ。


「おはよう」


 振り向いて挨拶を返す。


 何かイメージ通りだな、この姉妹。

 メルは朝が強くてルリは朝が弱い、正反対だなマジで。


「違うわよ……」


 そう言ったらルリが否定してきた。


「あたしのほうが寝起きはいいのよ、けどメルが全然起きないというか起こそうとすると魔法放ってくるとか……、それでメルを起こすの疲れるのよ」

「ちょ、ちょっとルリ!」


 ああ成る程、そういうことか。


「!」


 ふと気づくと膝から猫は消えていた。


 いつの間に……。


「ヒロさん?」

「ん、いや何でもないよ、行こう」


 宿屋を出る。


「さてと、ホントに東の森行くの?」

「うーん……まだ迷ってるんだよね……」


 歩きながら話す。


「罠の可能性だって否定出来ませんし」

「誰の?」

「魔王です」


 うーん……。


「行かないほうがいいんじゃない? 何より安全だし、その剣だってとっとと捨てちゃったほうが……」

「にゃー」

「……ひゃっ!?」


 ルリが突然浮いた。いや、抱えられた。


「な!?」


 抱えているのは1人の少女。


 黒みがかかった腰まである紫の髪に黒眼、黒いワンピース、肌は健康的な褐色で、顔は相当な美少女、半目で眠たそうな表情だがそれがまたこの少女らしさを引き出している。


 ……て、呑気に容姿について考えてる暇は無い!


「にゃん」

 少女はルリを抱えながら走り出した。


「待て!」

 オレも走り出す。


「ちょっ! 早いですヒロさん!」


 メルが杖を取り出した。


「火よ、鳥と成り我を運べ、“firebird”!」


 杖の先から炎が生まれ、鳥の形になった。


 炎魔法か。


 メルは鳥に乗って、オレはひたすら走って少女を追う。


 てか早えええええ! 自分の走る速度にもびっくりするが少女ももっと速い。


 全然追いつけないどころか少しずつ離されてく!


「ヒロさん! こっちは方向的に東の森です! と、いうことは……」

「……アイツの刺客か……」


 5分ほど走ると、森が見えた。


 既に少女は森の中、メルは火の鳥を消し、オレは走るのをやめ慎重に歩く。


「やっと来たか」


 聴いたことがある声が聞こえた。


 そいつは森から出てきた。


 黒い少女を侍らせ、こちらに駆けてくるルリと共に。


 ルリがメルに抱きついた。しかしオレはそれすら見ずに、白髪金眼の男を睨む。


「そう怖い顔すんな、異世界の勇者」


 皮肉気味な笑みを浮かべながら男はこっちに近づいてくる。


 オレもそれに対抗するように前にでる。


「そうだな、まずはお互い自己紹介と行こうか」


 お互いに脚を止める。


 距離は5mほど、今のオレなら一瞬で詰められる距離。


 無論、相手も一緒だろうが。


「俺の名前はクレット、職業は新米旅人だ」

「新米?」

「今日決めたからな」


 なかなかユニークなこと言ってるが全く笑えない。

 クレット? だったな、クレットから出る威圧感が凄すぎて全然笑えない。


「オレはヒロ、ヒロ・アオイ、言っとくが勇者じゃないぞ、ただのしがない新米旅人だ」


「奇遇だな」

「ああ」


 軽口を叩いてるが、空気は変わらない。


 冷や汗が、止まらない。


「なあヒロ君」


 クレットが言う。


「勝負しないか? お前がどれほどのものか見たい」


 勝負……ね。

 試合か、死合いか。


「ちなみにお前に拒否権は無いからな」


 言って、クレットはポケットから二振りの刀を取り出す。


 朱い、片刃の刀を2本。


 双剣遣いか――。


「武器はいるか? 貸すくらいなら出来るが」

「あ、じゃあ鉄甲くれ」

「あつかましい奴だな、普通そこは遠慮するだろ」

「刀相手に素手で闘えるはずねーだろ」


 クレットがポケットから取り出した鉄甲を手に填める。


 これは……歴史博物館にあった戦国時代の鎧って奴に似てるな、色は蒼、何かの鱗や甲殻で出来てるようだ。


 相当固い、オレの力じゃとてもじゃないが壊せない。


「いい鉄甲だな」

「だろ? とある巨大龍から剥ぎ取った素材から出来たものだからな」


 へぇ~凄いな。


「けどまあこの刀も同じ素材だから互角だ、さて、そろそろ行くぞ?」

「おう」


 て、いうかコイツ悪いやつじゃねえな、かなりフレンドリーだ。


 何が、目的なんだろうな。

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