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花嵐の夜  作者: 露刃
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悪逆の徒

 他人が苦しむところを見たいと、常に思っている。他人が自己嫌悪に陥るさまを、高みから見学していたいと常に願っている。

 そんな修司は、確かに歪んでいる。彼は決して「善人」の類にはなれないし、なろうとも思わない。

とはいえ、修司は別に悪逆の徒ではない。

 仕事をサボることが無いとは言わないが、無断欠勤したりやるべき仕事を投げ出したり誰かに押し付けたりはしない。適度に不真面目に職務を全うしている。

 彼は相手が誰であろうが犯罪者は取り締まるべきだと思っているし、犯罪者の人権は根こそぎ無くなればいいとも思っている。社会復帰もすべきではないと考えている。罪を償おうが時効が来ようが、傷つけられた側には一切関係が無いからだ。

 犯罪に大小の違いは無い。修司は、警察官としてではなく一人の人間として、犯罪者に対する軽蔑心も嫌悪感も持ちあわせている。

 それでも彼が善人ではないのは、その犯罪を憎む心が自分と妹に関係無い時には一切発揮されないからだ。

 警察官になってからこっち、被害者の無念を晴らすために仕事をしたことは一度も無い。他人に対する嗜虐趣味はあっても、そこに「犯罪者だから」という理由が付けられることもほとんどない。犯罪者であろうとなかろうと、目についた相手をいたぶれそうだったらいたぶる。それだけだ。


 例えば目の前で誰かがつまずいても、修司は決して手は貸さない。ただし、追い打ちをかけることもしない。彼はただ、つまずいた人間を見ているだけだ。どんどんつまずいて、起き上がれなくなるところが見たい。

 歩くことを諦めてしまえばいい。そうすればつまずくことは無くなるよ、そう耳元でささやきたいと、思っている。

 そんな風に、彼は歪んでいる。しかしこれはただの歪みであって、悪逆の徒にはならないと、彼は思っている。


 修司が動くのはいつも自分と妹の為だけであって、そこに他人が介在する隙は無い。介在しようとする者は必ず排除してきたし、これからもそうするつもりだ。


 そうするつもりだった。

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