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第48話 ニュース

 レンの庭に入り込んだ大和は、息を殺し、足音を殺し慎重に、物音のする庭の奥へ向かう。


 家の外壁に張り付いて、その奥を覗き込む。そこには、見知らぬ男が3人……頭を下に、つま先から口元までツルでぐるぐる巻きにされて、木からぶら下げられている。

 時折体を動かし脱出を試みているようだが、全く成果は出ていない。


 攻撃を加えられる危険性はないと判断し、大和はそこに歩み出る。人の気配に気づいた男たちは、塞がれた口でンンンンー!、必死に体を揺らし、目で助けを訴えた。


「なに?あんたら誰?なんでこの家にいんの?」


 ンンンンンー!何を言いたいのかちっともわからない。こいつらは敵か?敵じゃないのか?

 

 だが、こいつらを宙づりにしたのは間違いなくレンさんだろう。レンさんはどこだ?家の中か?


 みっともなく騒ぐ宙ぶらりんたちを無視し、大和はカーテンの揺らめく家の中をのぞきこむ。

 

 静かだ。


「レンさん?」


 大和は小声で呼びかけるが、返事はない。誰もいない?


 念のため靴をはいたまま、家に入る。床には土足で上がったような跡がすでにあった。


 小さな、規則的な呼吸の音が聞こえた。見回すと、ソファから人の脚がはみ出ている。動かない。そっと近づいて覗き込むとリナだった。リナがソファで横向きに寝ている。どういう状況?


 呼吸音がもう一つある。耳を澄ますとそれは吹き抜けの上……2階の方から聞こえてくる。 


 慎重に階段を上ると、大きなベッドの上に青木が寝ていた。こちらはちゃんと布団まで掛けられている。


 すやすやと寝ている青木のそばに近づき、肩を叩く。


「青木。青木起きろ」


 大和が何度か呼びかけると、青木はシパシパと目をあけた。


「大和君……?あれ、私なんで寝てるの?」


「どーした。何があった。レンさんは?」


「レンさん……師匠……師匠!そうだ師匠!大変だよ、師匠、ついに決行の時が来た、って言ってた!」


「は?!」 


「毒殺なんてやめましょうって言ってから、そのあと……記憶がない」


「レンさんお得意の催眠薬だな。やばい。急いで探さねーと。レンさんの毒殺のターゲット、駿河じゃなくて自分自身だったんだよ。多分。早くしねーとあの人自殺しちまう。どこへ行くとか、なにか手がかりねーか」


「は?どういうこと?!でも師匠の居場所ならわかる」


「まじか?」


 青木はポケットからスマホを取り出し、見慣れぬアプリを起動した。


「……」


「……この移動スピード。師匠は今、電車に乗っている。行く先は……この路線は東京行きかな?」


「なんでGPS……」


 玄関のチャイムが鳴った。2人は顔を見合わせ、1階におり、玄関のドアを開ける。すっかり暗くなった玄関には安田に聡子、それに真島がいた。


「安田早えーじゃん」


「真島先生のおじいちゃんがタクシーを呼んでくれたんだ。大和君も乗ればよかったね」


「タクシーで移動じゃ絵にならねーだろ。走らねーと。映画の予告でも大体走ってんだろ」


「誰の目線を意識してるの?それよりレンさんは?」


「いない。遅かった。東京に向かっているらしい」


「え?!」


「安田、山本に電話してくれねーか」


「う、うん」


 安田はリビングに入り、山本に電話をかける。

 

 これがレンさんの家!と、興奮気味に部屋の中を見回していた真島は、ソファに寝転ぶリナを見て絶叫した。


「真島先生うるさいです。その人師匠に催眠薬かけられただけですよ」


「いや!驚いた、女の子か……。え、催眠薬??」


 山本に電話がつながった。


『安田君?どうしたの?』


「あ、山本さん!大変なんです」


「おい山本!レンさん、不老不死だろ?ちげーか?」


『……大和君、自分で気づいたの?レンちゃんに聞いたの?』


「やっぱりそうか。俺、レンさんが最強の毒薬を作ってるのは駿河を毒殺するためだと思ってたけど、もう駿河は死んでるんだよな。お前それさっさと言えよ!レンさん、自分を毒殺するために毒薬作ってたんだ」


『は?!レンちゃんそんなこと企んでたの?!』


「今レンさん、東京に向かってる。今から決行するつもりらしい。俺もこれからいくけど、お前東京にいるよな?先にレンさん捕まえろ」


『東京のどこ?』


「青木、わかるか」


「この路線の終点は東京駅だけど……」


『決行は土曜日あたりじゃなかったのか?なんで急に早まったんだ?というか、なんでわざわざ都内に出てくる?やっぱり最後に俺に会いたくて……』


「そういえば師匠、ニュースを見て急に立ち上がってた。なんのニュースだったかは……」


「ニュースといえば、今日は昼前から都内の立てこもり事件をずっとやってるぞ」


 安田がテレビをつける。確かに「都内で立てこもり事件発生中」というテロップと共に、暗闇の中赤いライトがチカチカする中継映像が流れている。


「立てこもり事件。なにか……レンさんと関係あるか?」


「そのニュースじゃないよ」


 皆いっせいにソファを振り返る。寝ていたリナがゆっくりと起き上がった。



「リナ。なんでここにいんの」


「あんたの元カノ、師匠を脅して男に襲わせて、ヤバい動画を撮ろうとしてた」


「は??リナ、いい加減に……」


「キモいやつ。なんかキモいのがテレビに映ってた。それを見ておばさん、急に立ち上がったんだよ」


「……あんた起きてたの?」


「うん。ぼーっとしちゃって、体は動かなかったけど」




『おーい。そっち、どういう状況?』


「あ、山本さん!今ですね、大和君の元カノさん?が起き上がって、テレビにキモいのが映ってたって言ってます!」


『全然わかんないよ聡子ちゃん!』


「キモいの……キモいの?なんのニュースだろう。どんなキモさだろう?」


「キモい形の……なんかこう……キモいの」


「山本さん!都内にキモいニュースはありますか?」


『わからないよ聡子ちゃん!……ん?キモいニュース?……もしかして』


 その時、ニュースが切り替わった。


「次のニュースです。都内の〇〇植物園で、世界最大級の花、ショクダイオオコンニャクが、およそ10年ぶりに開花しました」


 テレビの画面には、巨大でキモめな花……?らしきものが映った。


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