コンカフェと同伴
「よく3年で同好会の許可出たね〜まさか本当に出来るとは思ってなかったよ!」推し活仲間のサキが驚く。
「俺も!顧問やってくれる先生現れても学校が許可しないと思った。」ヒロも驚いてる。
「フフッ、学年主任と家庭科の木村先生2人がかりで校長先生を説得してくれたんだよ〜へへへッ」夏希が怪しげに笑う。
実は六本木でティッシュ配りのバイトを一月してる時に学年主任と木村先生が腕組んでコスプレカフェとは名ばかりのキャバクラに同伴出勤するのを何度も目撃したのだ。
木村先生はコスプレイヤーなのは、ネットで何回か見たので知ってたが、
まさかお酒も出すコンカフェで学年主任と同伴出勤してるとは…
2人とも夏希の提案に快く乗ってくれた。
夏希はスーパー現実主義なので、大人が品行方正で正しいなんて思った事ない。
バイトで汚い大人は山ほど見てるし。
「でも勉強同好会ってのが表向きだから、家庭科控室に参考書置いとかなきゃいけないんだよ。
だから今日は、皆で参考書買いに集まって貰ったんだ。」豊洲の大型ショッピングセンターにサキ、ヒロ、楊世と夏希で集合した。
ゆりかもめが空を旋回している。
船着場には観光船が入り遠くレインボーブリッジには春霞み(はるがすみ)が掛かってる。
「へ〜楊世くんのお母さんと夏希のお父さんが再婚して、2人は兄弟なったんだ。マンガみたいだね〜」サキがニヤニヤし、
「残念ダヨな〜美少女じゃなくて黒いブスとかさ。」ヒロが楊世に同情する。
「そんな面と向かって言わないでよ!
それに世の中を知ればブスの方が色々苦労しないんだよ。
バイト先でも可愛い子はすぐ変な客に絡まれるけど、
私なんか全然問題なかったし♪」
中年男性は、居酒屋とキャバの区別分かってなくて
すぐに若い可愛い女の子の分のお酒をオーダーして奢ろうとする。
断ったら金返せ!と突っ掛かる。
見ててかわいそうだった。その子はすぐ辞めていった。
バイトするのに綺麗な顔はジャマだと夏希は自信を持った。
おかげで面と向かってブスとか言われても全く心にダメージなくなった。
「あ〜何かそれ分かる…とか言ったらアレかな?」
遠慮がちに楊世が話す。
「祖母が亡くなった後、若い可愛いお手伝いさんを父が雇ったけど、お手伝いさんが僕の事ばかり構うから父が怒って辞めさせてた。」
「あ〜っ、分かる〜」3人共納得した。
いくら金持ちでも60過ぎたじーさんと17歳だけど大人びたイケメンでは…そりゃ扱いに差が出るだろ。
この世に綺麗事はない!
それが現実なのだ!
バイト歴だけ長い夏希は、そんな世の中を嫌と言うほど見てきた。
だからこそ、一時の夢のような綺麗事だけのステージとレオンにのめり込んでいたのだ。
が、その夢の世界も音を立てて壊れた。
殺伐とした現実だけが残ってしまった。
何とか1年!青春を取り戻すぞ!
本屋で楊世は調理師試験、ヒロはサッカーが強い〇士館大学、サキはダンスで良く優勝してる立〇大学の赤本を買っていた。
皆がすぐレジに向かうのに夏希だけが、いつまでも決まらない。
「ゴメンね!どこが良いかな?うーんうーん」オカルトが強い大学なんて無い。
他に好きなのはライブを見て動画見てグッズ買う事…
「言い出しっぺがなんで悩んでんだよ〜」ヒロがお腹が空いたらしくイラッてる。
「ねえ、私ってどの大学が良いと思う?」思わずサキに聞いてしまう。
「お父さんみたいに警察とか?」サキが言う。
「絶対やだ!」夏希が即答する。
「え〜っ、じゃ分かんないよ!」サキも投げ出す。
「料理屋の女将とかは?テキパキしてて客あしらい上手そう。」楊世が提案する。
「それ、どこの大学行けば良いの?」夏希がガクッとうなだれる。
「お前はコレ買っとけ!」ヒロが最新刊のムーを持って来て渡した。
結局、ムーだけ買ってフードコートへ行った。